日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 『カメ止め』監督最新作
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.554

“カメ止め”上田慎一郎監督の才能は本物なのか? 噓と救済をめぐる物語『スペシャルアクターズ』

演技は人を救済することができるのか?

売れない俳優である和人(大澤数人)と弟の宏樹(河野宏紀)は、カルト集団に潜入する。彼らの芝居は、どこまで通用するのか。

 主人公は売れない役者の和人(大澤数人)。子どもの頃に熱中した特撮ヒーロー映画『レスキューマン』に憧れ、俳優の道へと進んだものの、オーディションには落ち続ける。プレッシャーを感じると気を失ってしまうという特異体質のせいだった。アパートの家賃も払えないどん底状態の和人は、久しぶりに弟の宏樹(河野宏紀)と再会。兄の影響を受けた宏樹も俳優となり、芸能プロダクション「スペシャルアクターズ」に所属しているという。「スペシャルアクターズ」は主に映画やドラマにちょい役の俳優たちを派遣する“仕出し”系の小さなプロダクションだった。他にもイベントのサクラ役など“演じる”ことなら何でも引き受ける便利屋でもあった。

 金欠状態の和人は弟に誘われるがままに「スペシャルアクターズ」に登録するが、思いがけない大役が回ってくる。新興宗教「ムスビル」を名乗るカルト集団によって洗脳された旅館の若女将を救ってほしい、という若女将の妹からの依頼だった。和人と宏樹は「ムスビル」に信者として潜入し、熱心な信者となっている若女将の里奈(津上理奈)を救出するという命懸けのミッションに挑むことに。

 上田監督ならではの、売れてはないけど味のある無名俳優たちが織り成すサスペンスコメディとなった本作。主人公の和人は極度に緊張すると気を失ってしまうという、俳優としては致命的な欠陥の持ち主だが、カルト集団によって洗脳された里奈を救いたいという強い想いから、「ムスビル」の信者になりすまし、一世一代の大芝居を打つことになる。演じることを生業(なりわい)とする俳優 vs.うさん臭い教義を説くことで信者たちから金を巻き上げる新興宗教との騙し合いバトルだ。果たして、“演技”は不幸な人間を“救済”することができるのか? そんな壮大なテーマが本作には込められている。

123
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

『24時間テレビ』強行放送の日テレに反省の色ナシ

「愛は地球を救う」のキャッチフレーズで197...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真