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テレビウォッチャー飲用てれびの「テレビ日記」

オードリー若林を饒舌にさせる『あちこちオードリー』という異色のバラエティ

浅草みどり(伊藤沙莉)「い、いえ。仲間です」

 まず、NHKで放送されているアニメ『映像研には手を出すな!』(NHK 総合)がすこぶる面白い。

 映像研究同好会を結成した女子高校生たちが、自分たちが理想とする「最強の世界」をアニメーションとして制作する、その奮闘ぶりが描かれる物語。主要な登場人物は、独自の世界観の構築に命を懸ける浅草みどり(声:伊藤沙莉)、細部の動きにこだわるアニメーターの水崎ツバメ(声:松岡美里)、その合理的思考と交渉術でプロデュースならびに営業を担う金森さやか(声:田村睦心)である。

 私はアニメには詳しくないし、その制作についてはもっと詳しくないので、彼女たちが話す専門用語らしきものの中にはよくわからないものも多い。彼女たちが取り組んでいる作業がなんなのかも不明だったりする。わかる人にはわかる、という場面も多いのだろう。

 けれど、というか、だからこそ、なのだろうが、この作品にはなぜだか惹きつけられてしまう。“理想”を形にするという初期衝動。その“”理想”にまったく届きそうにない作品の前で打ちひしがれつつ、妥協しつつ、完成形に近づけるプロセス。ときにお金と交換される“”商品”であることを前提に、しかしここぞという場面での自分のこだわりを捨てることもない矜持。そこに、取り組む分野は違えど多くの人の琴線に触れる、普遍的な魅力があるのかもしれない。

 ほかの誰にもわからないかもしれないこだわりを持った、仕事人たちの物語。その魅力を伝えるのに、誰にでもわかる言葉や説明が、そこかしこにあってよいはずがないのだ。

 先週24日の第8話の放送では、3人が試行錯誤の末に作り上げたロボットアニメが、なんとか文化祭で上映される様子が描かれた。生徒会からの妨害をかわした末に、体育館で上映されるアニメ。徐々に引き込まれていく観客たち。映像が終了した途端に鳴り響く喝采。スタンディングオベーション。

 上映会には水崎の両親も来場していた。彼女の両親は共に俳優だ。親は娘も俳優になることを期待し、アニメ制作に関わることを禁じられていた。しかし、スクリーンに映る娘の仕事を見て父親は言う。「ツバメはもう、立派な表現者だ」と。

 ラストシーン。水崎氏の両親と、映像研のメンバーが対面する。「ツバメのお友だち?」と問われた浅草氏が緊張気味に答える。

「い、いえ。仲間です」

 友だちではなく仲間。同じ制作物を前にしたパートナーの関係。誰のためでもなく、ただ創ることそのものに魅せられた彼女たちに、毎週日曜の深夜、魅せられている。

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