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日本では最小でも12万人の死亡者!? 米シンクタンクが算出した新型コロナのトンデモ経済予測

イメージ画像/出典:happyjune

 新型コロナウイルスにより、「最悪の場合、全世界で6,835万人が死亡し、約954兆円のGDP(国内総生産)が失われる」という衝撃の報告書が、米国の著名なシンクタンク「ブルッキングス研究所」から3月3日に発表された。

 報告書は、「COVID-19が世界のマクロ経済へ与えるインパクト:7つのシナリオ」
https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2020/03/20200302_COVID19.pdf)と題された、オーストラリア国立大学のワーウィック・マッキビン教授とローシェン・フェルナンド博士によるものだ。

 まず、内容を取り上げる前に記しておかなければならないのは、マッキビン教授とフェルナンド博士は経済学が専門であり、この報告書が医学的な見地から検討され、書かれたものではないという点だ。

 両氏は中国の状況から仮定して、都市の人口や密度、国民一人当たりの医療費などにより病気や死亡のため各国で減少する労働者数などを計算。新型コロナがパンデミック(世界的大流行)した際に、適切な経済的判断が行われない場合に起こりうる7つのシナリオを推測している。

 それによると、世界のGDPは最悪のシナリオ場合には約954兆円、最善のシナリオでも約254兆円が失われるとしている。新型コロナによる死亡者数は、全世界で最大6,835万人、最小1,519万人と予測しており、国別の予測では、日本は最大で57万人、最小で12万7,000人、致死率では最大で0.45%、最小で0.10%と予測されている。

 新型コロナの発生源である中国は最大で1,257万3,000人、最小で279万4,000人、致死率は最大で0.90%、最小で0.20%、中国に次いで感染者数が多い韓国は最大で27万2,000人、最小で6万1,000人、致死率は最大で0.54%、最小で0.12%となっている。また、欧州で最も感染者の多いイタリアは最大で5万9,000人、最小26万5,000人、致死率は最大で0.45%、最小で0.10%だ。

 参考までに死亡者数の各国の推測は以下のようになっている。

        死亡者数(万人)   死亡率(%)
       最大   最小    最大  最小
全世界    6835   1519     -   -
インド    1662   369    1.27  0.28
中国     1257   279    0.90  0.20
インドネシア  291    65    1.13  0.25
ブラジル    115    26    0.56  0.12
米国      106    24    0.33  0.07
ロシア     84    19    0.58  0.13
メキシコ    83    18    0.66  0.15
日本      57    13    0.45  0.10
トルコ     52    12    0.67  0.15
ドイツ     35    8    0.44  0.10

 これを見ると、明らかに“突拍子もない”推測となっていることがおわかりだろう。

 だが、当のマッキビン教授は、「この報告書の執筆時点では、これらのシナリオが起きる確率は非常に不確かだが、パンデミックが発生した場合、損失が急速に増大することを分析結果は示唆している」と述べている。

 この報告書が発表された3日、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が記者会見を行い、「現時点で新型コロナウイルスの致死率は約3.4%」と発表した。季節性インフルエンザの致死率は1%以下だから、季節性インフルエンザの3倍以上の致死率となる。

 となれば、例えばマッキビン教授の推測では、日本の致死率は最大で0.45%だから、WHOが発表したように致死率は約3.4%になるとすれば、死亡者数は7倍以上増加して、最大で420万人を超えることになる。

 確かに新型コロナの経済的影響を推測することは重要かも知れない。しかしながら、医学の専門家ではない者が、権威あるシンクタンクから不安を煽るような報告書を発表するのはいかがなものだろうか。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2020/03/08 21:30
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