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新型コロナウイルスによる自営業者・フリーランス「休業補償」の具体的中身を検証

イメージ画像/出典:newgin

 3月10日、政府は「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」の第2弾を発表、自営業者やフリーランスを対象とした「休業補償」のための新たな助成金制度の創設を発表した。これにより、いかにも補償制度が充実したように見えるが、それでも“こぼれ落ちる人たち”がいる。

 まずは、政府の新型コロナ緊急対応策における補償制度を見てみよう。

(学校の臨時休業に伴って生じる課題への対応:2,463億円)

「保護者の休暇取得支援等」(予算額1,556億円)

 小学校等に通う子の保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、労働基準法上の年次有給休暇とは別途、有給(賃金全額支給)の休暇を取得させた企業に対する助成金(日額上限8330円)を創設。個人で就業する予定であった方にも、業務委託契約等に基づく業務遂行等に対して報酬が支払われており、発注者から一定の指定を受けているなどの要件を満たす場合に支援を実施することとし、臨時休業した小学校等の子の保護者がこのために就業できなかった日数に応じて定額(1日4,100 円)を支援する。

「個人向け緊急小口資金等の特例」(予算額207億円)

 生活福祉資金貸付に特例を設け、新型コロナウイルス感染症の影響により収入減少があった世帯を対象とし、一時的な資金が必要な方(主に休業された方)には緊急小口資金により10万円以内、特に、休暇取得支援の助成金の対象とならない方を含め、小学校等の休業等の影響を受けた世帯等に対しては20万円以内を貸し付けるとともに、据置期間、償還期限を延長。また、生活の立て直しが必要な方(主に失業された方等)については、総合支援資金により、例えば2人以上の世帯では月20万円以内を貸し付け、据置期間を延長するとともに、保証人がなくても無利子とする。あわせて、今回の特例措置では新たに、償還時において、なお所得の減少が続く住民税非課税世帯の償還を免除する。

「雇用調整助成金の特例措置」(予算額374億円)

「新型コロナウイルス」の影響による客数の減少、生産の減少により事業活動を縮小せざるを得ない場合に、一時的に「休業」の措置をとることで、従業員の雇用維持を図った会社に対して、助成金を受給。

「生活困窮者自立支援制度の利用促進等による包括的支援の強化」

 新型コロナウイルス感染症の影響による離職や収入の減少等により生活が困窮する者等が、家計や仕事、住まい等についての幅広い課題に対し、生活困窮者自立支援制度に基づく相談・支援を受けられるよう、全国の地方公共団体に対して、関係機関等とも連携し、本人に寄り添った包括的な支援を提供するよう促す。あわせて、生きることの包括的支援の観点から、民間団体が実施するSNSを活用した相談体制への支援を拡充する。

 これだけ見ると何が何やら理解できないだろう。

 そこで整理・分類してみよう。まず、一番わかりやすいのは、「政府の要請によって経済的なダメージを受けている」ことが条件になっているということ。具体的には、一斉休校に関連しているか否かという点だ。

「休業補償」はあくまでも、休校した子どもの保護者か否かを条件としている。その上で、雇用者と自営業・フリーランスで補償が分かれる。雇用者は、年次有給休暇とは別に、賃金全額支給の有給を取得させた企業については、日額上限8,330円の補助金が出る。自営業・フリーランスの場合は、就業できなかった日数に応じて1日4,100円が支給される。

 なぜ、雇用者が8,330円で自営業・フリーランスが4,100円なのかという点について、日本共産党の小池晃書記長がツイッターで、東京の最低賃金である時給1013円で4時間働いたと仮定したもので、明確な根拠はないものと指摘している。これを聞いても、安倍政権が働き方改革で「フリーランスは新しい働き方の一つ」として推進している半面、実はフリーランスをまったく理解していないことが明らかだろう。

 さて、新型コロナで経済的なダメージを受けているのは、子どもを持っている親だけではない。一般企業やその従業員、子どもを持たない自営業者・フリーランスもダメージを受けている。では、このゾーンへの補償はどうなっているのか。

 補助金が出るのは、前述の「雇用調整助成金の特例措置」で、「休業」の際に従業員の雇用維持を図った会社に対しては助成金が出される。金額的には日額上限が8,330円となっている。つまり、企業が申請を行うことで「子どもを持たない従業員」も「休業補償」が行われることになる。

 これで明らかになっただろう。つまり、「保護者」の場合には、雇用者、自営業・フリーランスは助成金の差こそあれ、「休業補償」が受けられる。さらに、「休業」した企業の雇用者も「休業補償」が受けられる。だが、「保護者ではなく、自営業・フリーランスは休業補償を受けられない“こぼれ落ちる人たち”」になるわけだ。

 この“こぼれ落ちる人たち”の残された手段が、「個人向け緊急小口資金等の特例」で助成金ではなく、返済義務のある「融資」ということになる。

 筆者のもとには、「会社が休業となったため、大幅な減収が見込まれる」との声が多く寄せられている。世の中の自粛ムードが強まっていることで、その影響を受けて仕事を休まざるを得ない状況に追い込まれている自営業・フリーランスは多いが、この人たちは”借金をすることで生き延びてください“というのが、政府の姿勢なのだ。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2020/03/14 12:12
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