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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.582

感動ポルノではない、バリアフリーな冒険ドラマ  いつか出会う、もう一人の自分『37セカンズ』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

Netflixで配信中のロードムービー『37セカンズ』。主演の佳山明とHIKARI監督は、今年の映画賞レースを席巻しそうだ。

 人生における37秒は、ほんの一瞬に過ぎない。でも、映画『37セカンズ』の主人公・ユマにとっての37秒間は、人生を大きく左右するあまりにも重たい秒数だった。生まれた直後の37秒間、彼女は呼吸をしていなかったため、脳性麻痺を患ってしまった。あと1秒でも早く息をしていれば、障害はもっと軽度だったかもしれない。だが、23歳になったユマは自分の力で、その「37秒」によって失われてしまった人生を取り戻すことに挑む。2020年2月に劇場公開されたばかりの『37セカンズ』が、現在Netflixでも配信中だ。

 車椅子生活を送るユマ(佳山明)は、心配性の母・恭子(神野三鈴)と2人暮らし。ユマには漫画家としての才能があるが、彼女が描いた漫画は親友のSAYAKA(萩原みのり)の作品として発表されていた。人気ユーチューバーで、アイドル並みのルックスを持つSAYAKAの名義にしたほうが出版しやすかったからだ。ゴーストライターに甘んじているユマは、どれだけ苦心して漫画を描いても脚光を浴びることはできない。才能を搾取され続けるユマは、付き合いの長いSAYAKAに不満を口にすることもできずにいた。

 娘の自立心を阻害する恭子も、ユマには疎ましい存在だった。母親の監視をくぐり抜けたユマは、アダルトコミック誌に描き下ろしのエロ漫画を持ち込むことに。だが、編集長の藤本(板谷由夏)からは「作家に経験がないと、いい作品はつくれない。妄想だけで描いたエロ漫画なんて面白くない」と一刀両断されてしまう。編集長のキツイひと言がきっかけとなり、我々の想像を遥かに凌駕するユマの大冒険が始まる。

 出会い系サイトを使って、初対面の男性たちとのデートを重ねるユマ。ガーリーな洋服に着替え、慣れないメイクにも挑戦する。さらには新宿のディープエリアへと足を踏み入れ、女性向けのデリバリーヘルスに勤めるヒデ(奥野瑛太)とラブホテルで過ごす。本作で初めて演技に挑戦した佳山明と、映画『SR サイタマノラッパー』(09)のマイティー役で知られる奥野とのベッドシーンがひどく生々しい。

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