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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.571

メディアに搾取され続けた女性たちの実録ドラマ『スキャンダル』『ジュディ 虹の彼方に』

全米最大のニュースチャンネルで起きたセクハラ問題を題材にした『スキャンダル』。CEOであるロジャー(ジョン・リスゴー)には、誰も逆らうことができずにいた。

 忠誠心を見せろ。全米最大のニュース専門チャンネル「FOXニュース」のCEOを務めたロジャー・エイルズは、この台詞を繰り返した。組織のために、そして組織を率いる自分のために、身を持って貢献することをロジャーは番組キャストとスタッフに求めた。FOXニュースは2001年に起きた同時多発テロ以降、ブッシュ政権を全面的に支援し、米国の保守層から圧倒的な人気を得るようになった。FOXニュースが視聴率を稼ぐと同時に、ロジャーの独裁ぶりも際立っていく。シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー、ハリウッドを代表する三大女優が競演した『スキャンダル』は、2016年に発覚したFOXニュース社でのパワハラ&セクハラ事件に真っ正面から斬り込んだ問題作となっている。

 メディア王ルパート・マードックに起用され、FOXニュースの初代CEOに就任したロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)がライバル局を引き離すためのやり方は徹底していた。権力者に擦り寄り、より多くの視聴者を獲得する。ニュースショーの顔となる女性キャスターはルックス重視で選んだ。カメラアングルにもこだわり、女性キャスターの脚がより見えるよう指示した。大衆が抱く潜在的欲望を敏感にキャッチしていたロジャーは、自分自身の欲望にも忠実だった。ロジャーの欲望の大きさに比例して、FOXニュースは大きく成長していく。

 ポストオバマを決める大統領選挙が近づき、当初は泡沫候補と思われていたドナルド・トランプが有力視されるようになる。女性蔑視発言の多いトランプ候補だが、ロジャーはトランプの大衆人気を察知し、歩み寄ろうとしていた。大統領選挙の取材で、FOXニュース社全体が浮き足立つ。そんな中、ベテランキャスターのグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)は突然解雇を言い渡される。かつては人気キャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)と看板番組の座をめぐって競い合ったグレッチェンだったが、ロジャーから性的関係を求められたのを断ったことから冷遇されるようになっていた。「更年期の汗だくは醜い」などの暴言も浴びせられていた。弁護士と相談したグレッチェンは、強大な権力を握るロジャーをセクハラで訴える覚悟を決める。

 グレッチェンがロジャーを訴えたことを知り、グレッチェンのライバルだったメーガンは動揺する。ロジャーのセクハラには、メーガンも辟易していた。だが、大統領選挙の取材というニュースキャスターにとって、最大の仕事が控えている。ロジャー体制が崩壊すれば、メーガンも今のポジションを失うかもしれない。それにグレッチェンがひとりで訴えても、マードックの後ろ盾があるロジャー体制は簡単には揺るぎそうになかった。同じ女性として、同業者として、グレッチェンを支持すべきかどうか、メーガンは葛藤することになる。

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