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中国・アメリカの足元にも及ばない日本のコロナ予算、第2次補正予算で見えた安倍政権の本気度

文=鷲尾香一(わしお・こういち)

イメージ画像/出典:Hamatti

 政府は5月25日に緊急事態宣言を全面的に解除、経済活動は徐々に再開されている。しかしながら、福岡県北九州市では新型コロナウイルスの第2波と見られる感染拡大が起こり、東京都でも1日の感染者数が30人以上となる日も出ている。感染拡大の第2波と経済活動を両立させていくためには、ワクチン・治療薬の研究開発や医療体制の拡充が急務。しかしながら、第1次補正予算と第2次補正予算での医療対策費は必ずしも十分とは言えない。

 第2次補正予算の新型コロナウイルス感染症対策関係経費は31兆8171億円だが、このうち医療提供体制等の強化は2兆9892億円(9.4%)程度。もちろん第1次補正予算の同経費が25兆5655億円で、このうち感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発に充てられたのは1兆8097億円(7.0%)だったことを考えれば、政府は医療体制の強化に力を入れたことになる。

 だが、それでも予算のわずか9.4%に過ぎない。

 第1次と第2次の補正予算では、医療関係経費の計上項目が同じではないため、より詳細に見ていくと、第1次補正予算の財務省による内訳では「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」の主な施策は以下のようになっている。

・新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(1490億円)

 使途=PCR検査機器整備、病床・軽症者等受入れ施設の確保、人工呼吸器等の医療設備整備、応援医師の派遣への支援等

 ・医療機関等へのマスク等の優先配布(953億円)

 ・人工呼吸器・マスク等の生産支援(117億円)

 ・アビガンの確保(139億円)

 ・産学官連携による治療薬等の研究開発(200億円)

 ・国内におけるワクチン開発の支援(100億円)

 ・国際的なワクチンの研究開発等(216億円)

 だが、財務省内訳では1兆8097億円の予算額だった「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」は、担当省庁の厚生労働省内訳では6695億円となり、その主な施策は以下のようになっている。

 ・新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(1490億円)

 ・人工呼吸器の確保(265億円)

 ・ワクチン・治療法の開発促進等(275億円)

 ・国際連携の強化(161億円)

 ・マスク、消毒用エタノール等の物資の確保(1838億円)

 両補正予算の治療薬・ワクチンに研究開発について注目してみると、財務省内訳では国際的なワクチンの研究開発等を含めて516億円、厚労省内訳では275億円ということになる。そこで、とりあえず第1次補正予算では516億円の治療薬・ワクチンに研究開発費が計上されたとする。

 さて、第2次補正予算の財務省による内訳では「医療提供体制等の強化」の主な施策は以下のようになっている。

・新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(2兆2370億円)

  うち医療(1兆6279億円)、介護等(6091億円)

・医療用マスク等の医療機関等への配布(4379億円)

・ワクチン、治療薬の開発等(2055億円)

 これを第1次と同様に厚労省内訳で見ると、より詳細な予算配分がわかる。厚労省内訳の主な施策は以下のようになっている。

<PCR等の検査体制のさらなる強化>

・地域外来・検査センターの設置とPCR・抗原検査の実施(366億円)

 使途=地域外来・検査センターの業務委託等を支援し、検査体制を強化(92億円)

    行政検査としてPCR・抗原検査を実施(274億円)

・検査試薬・検査キットの確保(179億円)

使途=PCR検査試薬、抗原検査キットの買上げ等

・抗体検査による感染の実態把握(14億円)

使途=ウイルスの抗体保有状況等を把握するための疫学調査を拡大

<新型コロナウイルス感染症に係る情報システムの整備>

・感染拡大防止システムの拡充・運用等(13億円)

使途=感染者等の情報を把握・管理するシステム(HER-SYS)の機能拡充

・新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システムの拡充(29億円)

使途=医療機関から患者の受入れ状況や医療機器の稼働状況等の情報を迅速に収集するシステム(G-MIS)について、調査対象医療機関の拡大、情報収集項目の追加

<ワクチン・治療薬の開発と早期実用化等>

・ワクチン、治療薬の開発等(600億円)

使途=ワクチン・治療薬等の開発資金の補助

・ワクチンの早期実用化のための体制整備(1455億円)

使途=ワクチン開発と並行して生産体制の整備、シリンジ(注射器)・注射針の買上げ・備蓄等

 財務省内訳では2055億円の予算が計上されていた「ワクチン、治療薬の開発等」が、厚労省内訳の「ワクチン、治療薬の開発等」の予算として600億円となっており、残る1455億円は「ワクチンの早期実用化のための体制整備」に使われることがわかる。つまり、「ワクチン、治療薬の開発等」に計上された予算は、両補正予算を合わせても最大で1116億円に過ぎないのだ。

 ワクチン、治療薬の開発に関しては、米国ではトランプ大統領が年末までのワクチン開発を目指して「ワープ・スピード作戦」を推し進めており、100億ドル(約1兆700億円)を投じている。中国では李克強首相が感染症対策として1兆元(約15兆円)の特別国債を発行して、ワクチンや治療薬の研究開発に投じると表明している。

 PCR検査については、厚労省内訳では『検査体制のさらなる強化』として559億円が計上されている。これによりPCR検査センターを現在の110カ所程度から200カ所程度にまで増加させる予定だ。

 だが、OECD(経済協力開発機構)が4月28日に発表した加盟36カ国の人口1000人当たりのPCR検査件数を見ると、日本は1.8人と加盟36カ国中35位で、トップのアイスランド(135人)は日本の75倍、OECD加盟国の平均23.1人でも12.8倍となっている。

 こうした現状を見ると、新型コロナ感染拡大第2波と経済活動を両立させていくための医療体制の拡充、特に検査体制の拡充とワクチン・治療薬の研究開発に対する日本の予算は、あまりにも“陳腐”と言わざるを得ない。

 安倍晋三政権は、今月17日の国会会期末までに第2次補正予算の成立を目指しているが、補正予算の組み換え、あるいは第3次補正予算を組むことで、より強力な医療体制の拡充を目指すべきだ。

鷲尾香一(わしお・こういち)

鷲尾香一(わしお・こういち)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」ほかで執筆中。

Twitter:@tohrusuzuki

最終更新:2020/06/06 22:00

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