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コロナ「再拡大」中国研究グループ「患者から抗体減少」と発表…懸念される新常態のコロナ予防法

イメージ画像/出典:happyjune

 中国の重慶医科大学などの研究グループが、新型コロナウイルスに感染し体内で作られた抗体が、感染から数カ月後には減り始めたとする研究結果を医学雑誌「ネイチャー・メディシン」に発表した。

 この研究グループは、今年4月上旬までに重慶で新型コロナウイルスに感染して症状が出なかった(無症状)8歳から75歳までの男女の患者37人と症状が出た患者37人について、抗体の量の変化などを比較した。

 この結果、感染後しばらくして作られる「IgG」抗体は80%以上の患者で検出されたが、退院から2カ月後に調べたところ、「IgG」抗体が検出された患者のうち、無症状の患者の93.3%、症状があった患者の96.8%で「IgG」抗体が減少していた。「IgG」抗体が減少した割合は、患者全体の70%を超えているとしている。

 さらに、新型コロナウイルスの働きを抑える「中和抗体」も、無症状の患者の81.1%、症状があった患者の62.2%で減少していることがわかった。また、「無症状の患者のほうが免疫の反応が弱い」としている。https://www.nature.com/articles/s41591-020-0965-6

 筆者は3月10日の「一度陰性でもまた陽性反応が出るケースも…新型コロナウイルスが新たなステージへ」で、中国の武漢市では退院患者に再び陽性反応が出るケースが相次いでいるケースを取り上げ、日本でも同様のケースが出ていることを踏まえ、患者の隔離措置の重要性を指摘した。

 さらに、4月13日の「中国研究チーム『回復しても抗体が少ない患者がいる』、新型コロナの“集団免疫”はどうなる?」で、中国・上海の研究チームが上海公衆衛生クリニックセンターから退院した患者を検査結果、3分の1近くの患者の抗体が予想以上に低いレベルであり、中には抗体がまったく検出されないケースもあったとする報告を取り上げた。

 そして、「もし、新型コロナウイルス感染が完治しても抗体が作られないとなれば、再感染のリスクが高まる上に、ワクチンに効果がないということにもなりかねない」と警鐘を鳴らした。

 また、「一度感染して完治すると免疫ができて、他人を感染させることがなくなるため、多くの人が感染し完治することで、免疫がない人々も感染しにくくなり、感染の流行が止まる“集団免疫”という防止策には効果がない」可能性を指摘した。

 さらに、4月29日の「WHO『コロナ抗体確認必要』と警鐘、緊急事態は長期化の覚悟が必要」で、4月25日にWHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスの抗体が出来ても、再感染する可能性があると警鐘を鳴らしていることを取り上げた。

 また、WHOが欧米などで抗体がある人に「証明書」などを発行して、外出制限措置の解除や職場復帰を認めることは、「さらなる感染のリスクを拡大させることにつながるかもしれない」と指摘していることも付け加えた。

 このように筆者はこれまで度々、新型コロナウイルスの感染拡大に対して、免疫や抗体の有無に頼る危険性を指摘してきた。今回の重慶医科大学などの研究グループの報告でも、「感染を経験した人は再び感染しにくいという考えに基づいた対応を取ることには、リスクがある可能性がある」と指摘しており、「抗体証明書などで活動範囲を広げることは、リスクがある可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

 これまでのさまざまな研究結果を見る限り、新型コロナウイルスは抗体ができにくいウイルスであり、抗体が出来たとしても、時間の経過により抗体が減少する性質を持っている可能性がある。

 今回の重慶医科大学などの研究グループの報告では、抗体の減少は「感染後1カ月程度」から始まると見られ、数カ月を経過するとほとんどの抗体が消える可能性がある。そうなると「集団免疫」という考え方は“完全に無意味”となる。

 さらには、ワクチンについてもその効果がどの程度あるのか、疑問符が付くだろう。新型コロナウイルスも、ワクチンが開発されてもインフルエンザのように毎年、ワクチンを接種する必要があるかもしれない。もしかすると、新型コロナウイルスはより短い期間(例えば半年毎、3カ月毎)にワクチンを接種する必要に迫られるかもしれない。

 現在できることは、とにかく感染者数を減らし、感染する可能性を極力低くし、新型コロナウイルスに感染しないようにすることしかない。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2020/06/29 17:16
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