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コロナ禍という国難に、天皇陛下からのメッセージは届けられたか?

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 2019年の5月に令和への代替わりが大々的な祝賀ムードで行なわれたとき、そのわずか1年後、世界中がパンデミックで大混乱に陥ることなど、誰が予想していただろうか。令和は2年目にして、日本人は等しく試練の時を過ごすことになったわけだが、その間、日本の象徴とも言えるべき、皇室はどのくらい国民へのメッセージを発信できただろうか。

 国民へのビデオメッセージは行なわれなかったが、天皇皇后両陛下は感染症について専門家のご進講を聞き、それを受けての発言という形で国民にメッセージを発していた。4月10日の尾身茂新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長のご進講を受けて天皇陛下は、「この度の感染症の拡大は,人類にとって大きな試練であり,我が国でも数多くの命が危険にさらされたり,多くの人々が様々な困難に直面したりしていることを深く案じています。今後,私たち皆がなお一層心を一つにして力を合わせながら,この感染症を抑え込み,現在の難しい状況を乗り越えていくことを心から願っています」とご発言。

 また、5月20日の大塚義治日本赤十字社社長・富田博樹同副社長のご進講の時には、ここでも、「これからも,私たち皆が,この感染症の克服に向けて,心を一つにして力を合わせ,困難な状況を乗り越えていくことが大切だと思います」と「心を一つに」という言葉を使っている。ある皇室記者はこのように話す。

「ご進講というのは、天皇が専門家を御所に招いて、経済や国内外の情勢、災害などについての解説をお聞きすることを言うのですが、普通はご進講の内容、それを受けてのお言葉は公表されません。だから今回は珍しいケースですね。その背景としては、これまでの災害なら避難所に天皇皇后両陛下が直接行かれて励ますことができましたが、今回は、密を作っても皇族が感染してもいけないという状況からそれが適わない。だからせめて、ご進講を受けてのお言葉という形で、国民が協力して同じ方向を向いてほしいというメッセージを『心を一つに』という言葉を通して発せられたのだと思いますね」

 もっとも、こういったお言葉は皇室ニュースをよく見ている人には届いたであろうが、日本人全体に広くメッセージが伝わったのかというと、疑問に感じる向きもあるだろう。静岡福祉大学名誉教授で皇室史が専門の小田部雄次氏は、コロナ禍という特殊な事態に直面した皇室の苦しい立場をこう分析する。

「今回の突然のコロナ騒動で、秋篠宮殿下の“立皇嗣の礼”が延期になるなど、即位の儀式が未完のままになっています。コロナ禍のなかで田植えや養蚕などに伝統行事に熱心に取り組む天皇皇后両陛下の姿も報道されていますが、これも逆にそのくらいのことしかできないでいる実態をあらわにしてしまっているとも言える。国民と接することを大事にする象徴天皇が、国民を接する機会を失っているという状況で、かえって天皇皇后がコロナ禍から守られている特権的な存在であることも印象づけてしまったという、皮肉な報道スタイルになってしまいましたね」

 一方、前出の皇室記者は、表には見えなくても、人知れず国民のために祈ることを天皇皇后両陛下はなさっているはず、と話す。

「古来、天皇は疫病を鎮めるために祈ることは続けてきました。今も日々、目に見えないところで国民のことを案じ、祈ることは当然なさっていると思います。現在のように天皇が国民の前に出るようになったのは戦後のことで、特に明治以前は、宮中の奥で国と国民が平安であることへの祈りを中心に置くというのが、天皇のお務めだったのです」

 そんななか、5月26日には、秋篠宮ご一家がポリ袋で医療用ガウン300着を作り、恩賜財団済生会に寄贈したことが報じられたが、これと同じことを天皇皇后両陛下がやればよかったかは微妙なところだと小田部氏は言う。コロナによる自粛で多くの人が休業や倒産、失業に見舞われたなか、皇室の誠意が国民に伝わるかどうかは、コロナ禍のどのタイミングで皇室に何ができるかがポイントになる。両陛下の祈りだけで安心するほど国民は時代錯誤ではないだろうと、小田部氏は話す。

「コロナ禍のさなかにお言葉を出すとして、何をどのように語るのか、自らは感染の危険も生活の苦悩もない位置で、苦悩の渦中にいる人々をどう励ませるのかは難しい問題だと思います。お言葉を出すならば、コロナが終息し、復興への道が見え始めたときに、励ましの言葉を出すのがタイミグ的にはいいのですが、いつ終息するのかわからないのが実情です。可能なら皇室費の一部寄贈や、防護服を着てでも慰問活動をされるなどすれば、国民の心にも響くのではと思うのですが、両陛下や宮内庁がどう判断するかが鍵ですね」

 第二波への懸念を含みながらも、徐々に国民の生活が通常に戻りつつあるいま、皇室からはいつごろ、どのような新しいメッセージは発せられるのだろうか。

里中高志(ジャーナリスト)

フリージャーナリスト。精神保健福祉士。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に『栗本薫と中島梓 世界最長の物語を書いた人』(早川書房)、『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)、『触法精神障害者 医療観察法をめぐって』(中央公論新社)。

最終更新:2020/06/28 01:12
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