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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.600

“男らしさ女らしさ”という生き地獄からの解放! 原一男監督のドキュメンタリー砲『れいわ一揆』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

 

2019年の参議院選挙を賑わせた「れいわ新選組」。取材陣は多かったが、投票日前に報道する媒体は少なかった。

 女装した候補者が、馬を連れて街を練り歩いている。マック赤坂に続く、新しい泡沫候補が現れたんだなと思った。テレビのニュース番組をチラ見するだけでは、それ以上のことは分からなかった。その新しい泡沫候補の名前は安冨歩(やすとみ・あゆみ)。東大の現役教授であり、「女性装」者でもある。2019年7月に行われた参議院選挙で、山本太郎代表率いる「れいわ新選組」から出馬した安冨氏の動向を追ったのが、原一男監督のドキュメンタリー映画『れいわ一揆』だ。

 1963年生まれの安冨氏が「女性装」を始めたのは、50歳のとき。京都大学経済学部を卒業し、住友銀行に就職。2009年からは東京大学東洋文化研究所の教授を務める、という超エリート人生を歩んできた。だが、その「エリート」であることが、安冨氏を苦しめ続けてきた。自殺衝動に囚われていたそうだ。

 妻子と別れた安冨氏は、あるとき女性用の衣服を身に着けたところ、体にとてもフィットし、心も安らぐことを感じたという。女性用の下着をつけ、化粧もするようになった。他人からの視線を気にしなくなり、安冨氏の人生は大きく変わった。乗馬クラブに通うようになったのも、この頃から。馬は安冨氏の肩書きや世間の評判を気にすることなく、真っ直ぐに向き合ってくれた。異性装と馬が、安冨氏をこの世の生き地獄から救い出してくれた。

 安冨氏をずっと苦しめてきたのは、「男はこうあるべき」「常識ある大人はこうすべき」といったラベル貼りだ。目には見えないラベルが、貼られたほうも貼るほうも、どちらの世界も著しく狭くしてしまい、息苦しさを招いている。そんなふうに記号化され、システム化された現代社会に小さな風穴を開けるために、安冨氏は乗馬クラブのある埼玉県東松山市の市長選に2018年に立候補し、見事に落選した。だが、そこから原一男監督との接点が生まれた。

 これまで『ゆきゆきて、神軍』(87)や『全身小説家』(94)などの過激なドキュメンタリー映画を放ってきた原監督は、カメラを使って被写体をたびたび挑発してきた。かつてない、面白いドキュメンタリーにするためだ。今回も市長選に落選した安冨氏に、「もう一度選挙に出ませんか? カメラでその様子をすべて撮りますから」と煽る。原監督の申し出を、安冨氏は快諾。声を掛けられた山本太郎代表の「れいわ新選組」の政策に賛同しての立候補ではなく、原監督にドキュメンタリー映画を撮ってもらうことを前提に、参議院選に出馬することになる。

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