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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.597

京都の山で野生動物を狩る男のドキュメンタリー 銃は使わない、わな猟生活『僕は猟師になった』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

 

2001年から京都で「わな猟」を始めた千松信也さん。週の半分は運送会社に勤め、猟生活を続けている。

「命を奪うことに慣れることはない」

 京都在住のわな猟師・千松信也さんは、そう呟く。ドキュメンタリー映画『僕は猟師になった』は、銃を使わず、昔ながらのわなを森の中に仕掛け、イノシシやシカなどの野生動物を狩る千松さんの暮らしを追っている。NHK番組『ノーナレ けもの道 京都いのちの森』として2018年に放映された映像素材に、さらに300時間におよぶ追加取材を行い、再構成したものだ。デジタル化が加速する現代社会において、千松さんとその家族がどのような生活を送っているのか、とても興味深い。

 映画の冒頭、森を歩く千松さんの耳に獣の鳴き声が届く。千松さんが仕掛けていた「くくりわな」に、一頭のイノシシが掛かっていた。わなを振り切ろうと暴れるイノシシに対し、千松さんは慎重に間合いを詰め、木刀ほどの大きさの木の枝で頭を殴りつける。目をむいて倒れるイノシシ。その後の千松さんの動きは素早い。取り出したナイフで、イノシシの心臓部分を突き刺し、一瞬で絶命させる。獲物を無駄に苦しめたくないという想いからだ。

 血を抜かれたイノシシは、千松さんの自宅に持ち帰られ、手際よく解体され、新鮮な精肉となっていく。胆嚢は胃薬、肝臓は鶏の栄養分、と余すところなく使われる。千松さんの2人の子どもたちも、解体作業を手伝う。その晩は、イノシシの焼肉にイノシシの鍋料理と、イノシシ料理三昧。森のドングリを食べ、山を駆け巡ったイノシシの肉は、野性味たっぷりで、とてもうまそうだ。奥さんも加わり、家族4人で楽しげな晩ご飯となる。

 1974年生まれの千松さんは、『ぼくは猟師になった』(新潮文庫)や『けもの道の歩き方』(リトルモア社)などを執筆し、ちょっとした「狩猟ブーム」を呼んだ。京都大学卒業の千松さんは、なぜ有名企業への就職の道を選ばず、猟師の道へと進んだのか。著書の中でも触れているが、その答えは「自分で食べる肉は、自分で責任を持って調達する」という極めてシンプルなものだ。

 普段、我々が口にしている肉料理の素材は、どのようにして加工されたのか、また加工される前の生きている姿を想像することは少ない。「狩猟ブーム」が起きたのは、日々の生活の中で命のあり方を真摯に見つめる千松さんのライフスタイルに共感する人が少なくないからだろう。

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