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国交省、タクシー料金に新制度導入! 複雑すぎる内容に現場も利用者も大混乱必至

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※イメージ写真(GettyImagesより)

 タクシーに「定期券」や「回数券」といった新たな利用方法が導入される。タクシー市場の活性化と利用者利便の向上を狙った新制度だ。11月30日からタクシー事業者の新制度利用の申請を開始した。

 赤羽一嘉国土交通相が11月27日の会見で新制度の導入を発表した。新たに導入されるのは、定期券や回数券のような機能を持った「一括定額運賃」と需要の増減に応じ、迎車料金を変動させる「変動迎車料金」。

「一括定額運賃」はタクシーの複数回の利用分の運賃を一括して支払う制度で、定期券や回数券のように同じ区間を複数回利用できるため、通勤や病院への通院などに継続利用でき、一括清算により割安になることが期待できる。また、国交省では他の交通モードと連携した観光用フリーパス等も推進したい意向だ。

 タクシー運賃には基本として、初乗運賃と加算運賃を定め、旅客の乗車地点から降車地点までの実車走行距離に応じた「距離制運賃」、初乗運賃と加算運賃を定め、旅客の指定した場所に到着したときから旅客の運送を終了するまでの実拘束時間に応じた「時間制運賃」と「定額運賃」がある。

 この「定額運賃」は、空港と鉄道駅などの一定の施設や一定のエリアの間で事前に金額を定めて運送するケースや、イベントの開催期間中に駅や空港などからイベント会場の間を事前に金額を定めて運送するケース、あるいは観光地の名所旧跡などを事前に金額を定めて運送するケースなどがある。

 つまり、「一括定額運賃」は現在の「定額運賃」が1回なのに対して、これを複数回利用できるようにし、タクシー利用を活性化しようというものだ。しかし、現時点では疑問点も多い。

「一括定額運賃」はタクシー事業者が申請することで実施可能となるが、例えば、自宅から鉄道駅までの一括定額運賃は、AタクシーとBタクシーでは同一料金になるのか、あるいは、現在でも「定額運賃」には割引が認められているものもあるが、「一括定額運賃」になった場合の割引率との関係はどうするのか。公共的割引として、「身体障害者割引」や「知的障害者割引」といった福祉政策としての割引があるが、これらとの関係はどうなるのか、などは明らかではない。

 また、「一括定額運賃」を利用しているケースで、例えば、鉄道事故などで行先を変更した場合といったイレギュラーなケースの料金体系がどうなるのか、なども不明だ。

 一方、タクシーの需要の増減に応じ、迎車料金を変動させる「変動迎車料金」は、利用者が少ない時には迎車料金を安く、利用者が多い時には迎車料金を高く設定することができる。ただし、トータルでは、固定迎車料金と変わらないよう変動させること等が条件となっている。

 ただ、現状の迎車では、「迎車回送料金」として1車両1回ごとの定額とする、あるいは発車地点より実車扱いとし、初乗運賃額を上限とする、のいずれかを選択することが決まっている。

 さらに、「サービス指定予約料金」として、時間指定配車料金と車両指定配車料金があり、時間指定配車料金は、予約で指定した時間に車両を配車する場合に適用され、車両指定配車料金は、予約によりワゴン車などを依頼にした場合に適用される。両料金とも1車両1回ごとの定額となっている。

「迎車回送料金」もタクシー事業者が申請することで実施可能となるが、導入する場合にはAタクシーとBタクシーでは同一料金になるのか、あるいは「迎車回送料金」、「サービス指定予約料金」との関係がどのようになるのかは明らかではない。加えて、「一括定額運賃」と「変動迎車料金」との関係も定かではない。

 国交省では今回の新制度と合わせて、検討を進めていた配車アプリを通じて目的地の近い旅客がマッチングし、「相乗りする制度」についても、新型コロナウイルス感染症の感染状況を見極めながら導入時期を検討するとしている。

 この配車アプリを使った制度では、「事前確定運賃」がある。これは、配車アプリの地図機能を使って、乗車地点と降車地点との間の推計走行距離を基に、距離制運賃に準じて乗車前に運賃額を確定するもの。ただ、「相乗りする制度」の場合に、「事前確定運賃」がどのようになるのかは不明だ。

 「一括定額運賃」は地方のタクシー会社で、「変動迎車料金」は大都市部での需要を見込んでいるが、果たして“目論見通り”になるだろうか。国交省では、今回の新制度については、定期的なモニタリングを行い、必要に応じて見直しを行うとしているが、まずは、利用者のわかりやすい仕組みと料金体系にしなければ、需要を呼び起こすのは難しいだろう。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2020/12/02 08:00
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