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アニメーター薄給問題の根源がわかる? 高畑勲、宮崎駿も闘った「東映動画」労使対立の真相と正史

アニメ制作現場が下請けだらけになった理由

――劇場用アニメ制作とその輸出を目論んで生まれた東映動画が、1963年に放送開始された虫プロの『鉄腕アトム』の後を追ってテレビシリーズにも進出したものの、テレビアニメの受注の不安定性さと、誰がどのくらいの枚数を描いたが可視化されるために実力主義的評価を求めるアニメーターの心情などが相まって、人員削減と外注化を加速していく――という流れを本書では丁寧に追っています。これは、「なぜ日本のアニメ業界ではフリーランスや下請け・孫請け所属スタッフへ発注しての制作が常態化しているのか?」という疑問に対する歴史的な経緯を語るものになっていますよね。

木村 一次資料を体系的に見られたのは東映動画だけですから、ほかのスタジオに関しては仮説レベルなのですが、ただ、虫プロや東京ムービーも下請けに発注する、独立したスタッフが下請けプロダクションをつくる、という動きは同じ頃に出てきています。どこが最初ということは問題ではなく、テレビアニメの登場が業界全体にそのありようを招いたのだろうと思います。

――『太陽の王子ホルス』は「不入りだった」と長年語られてきましたが、実はそうではなかった、ともありました。

木村 映画年鑑、興行年鑑で東映の直営8館の成績を調べた限りでは、前年、前々年夏公開の児童向け作品と観客動員数的には大差ありません。しかも、直後に大ヒットした東映の任侠映画と同じくらい動員数があった。もちろん、子ども向け映画だから客単価は安い、つまり配収(配給収入)は少ない。でも、それは『太陽の王子』だけではなく、すべての児童向け映画がそうです。では、なぜ関係者が「不入りだった」と主観的に認識していたかといえば、おそらく「赤字だ」と聞かされていたからだと思います。

――当初の予算を大幅超過して作られたわけですから、例年通りの客入りなら赤字になりますよね。

木村 ただし、東映動画は親会社である東映から受注して映画を作っていますから、投じた原価と受注額が見合っていなければ赤字になります。客入りと東映動画の収益は直接リンクしていない。だから当時の長編制作は、東映動画側では総じて赤字です。でも、現場の人はそういう上層の構造を知らない。その乖離から、「不入りだったのか」という理解が生まれたのではないでしょうか。

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