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[特別対談]石戸諭×辻田真佐憲──つくる会から百田尚樹へ…愛国・保守本市場の変遷

現在と過去の保守論壇の違い…つくる会と百田尚樹の断絶

[特別対談]石戸諭×辻田真佐憲──つくる会から百田尚樹へ…愛国・保守本市場の変遷の画像2
石戸氏の新著『ルポ 百田尚樹現象』は百田尚樹氏だけではなく、西尾幹二氏、藤岡信勝氏、小林よしのり氏らにも取材し、戦後の愛国・保守本の変遷をもまとめたルポルタージュである。

――『国民の歴史』のほかにも、先ほど出ました『教科書が教えない歴史』は120万部、小林よしのり氏の『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』は70万部、ケント・ギルバート氏の『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』は電子書籍版と合わせて52万部、そして百田尚樹氏の『日本国紀』は120万部というように、90年代以降の出版市場では「愛国・右派」本のベストセラーが幾度となく生まれてきました。

辻田 まじめな著作からデタラメなものまで、混在していますね。

石戸 だからこそ、小林さんとケントさんを並べるのはかわいそうなんですよ。小林さんが『ゴーマニズム宣言』に至った背景は知っておくべきだし、そこを理解することで、ケントさんと同列に扱うのは非常に危ないことでもあることがわかります。小林さんが本当に書きたかったのは、「民族の誇り論」とでも言いますか、おそらく最後の何ページかと、おじいちゃんの話(5章「南の島に雪が降る」)だと思うんです。ファクトチェックをすれば杜撰に決まっていますし、右派論壇おなじみの陰謀論も出てきます。中身だけを取り上げればリベラル派の歴史学者から「小林よしのりと百田尚樹は同列だ」という批判の声が上がるのもわかりますが、そこだけを捉えてもいけない。

辻田 ここ20年の間に保守派が強くなったわけですが、これまで話してきたことからもわかる通り、ここには2種類の保守がある。というより、そう考えないといけない。そのうえで、保守的な物語をよりまともな方向にアップデートしていく必要があります。すべて排除することなんてできるはずもないのですから。現代史は資料だけで決まるわけではなく、自分たちでいわば切り開くもの。物語的な想像力もうまく使うべきです。

――ちなみに、石戸さんは「百田現象がつくる会から連綿とつながっていた、という見方は間違い」と著書で書かれていましたが、辻田さんはこの見解については、どのように思われますか?

辻田 どこを切り取るかにもよりますけど、少なくとも百田氏は記号的な愛国なのではないですか。

石戸 百田さんとつくる会的な言説は全部が切れているわけではなく、「反権威主義」という「スタイル」だけは受け継がれています。決定的な違いは百田さんは小林さんや藤岡さんたちのように、言説の責任を引き受けていないことです。彼にとって大事なのは、言いたいことを言うことであり、自分が「感動」したことを正直に語ることです。

辻田 本当に切れているかはさておき、私は、物語として線を引くべきだという考えです。

石戸 僕の今回の書籍はある意味、右派論壇を中心にした「群雄劇」なんです。ちゃんと取材、ファクトに基づいて、きちんと編み込み、ひとつのストーリーにして語る。その取材の過程で、僕の中ではつくる会と、百田さんをはじめとする今の右派論壇は全然違うものだと結論づけたんです。

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