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嵐が夢見た世界進出と「上を向いて歩こう」の歴史的めぐり合わせ──批評家・矢野利裕が選ぶ“今年のジャニーズソング3曲”

J-POPを牽引してきた嵐の矜持

 最後は、大晦日にコンサートを控えた嵐について。この1年の嵐の活動は、サブスクの展開とそれに伴うような英語詞曲のリリース、ブルーノ・マーズの起用など国外のリスナーを意識したものでした。加えて言えば、既存曲をEDM風にアレンジしたRebornシリーズなどもそのような試みとして捉えることができ、それは2020年11月に予定されていたアメリカ公演を意識したものだったということです(『ARASHI’s Diary -Voyage-』#21、Netflix)。

 BTSがビルボードで1位を獲得する現在、東アジアを代表すると言っていい嵐がこのような挑戦をするのは、非常に現代的で真っ当なことだと思います。残念ながらアメリカ進出の挑戦はこれまた新型コロナウイルスの影響で果たされないのですが、「J-POP」という領域を長らく牽引してきた嵐が世界にどのようにアピールするか、という点に関しては、さまざまに夢想してしまいます。

 そもそも、日本のショービズをアメリカに問い返すというのは、なによりジャニー喜多川の夢でもあったわけですから。ということで最後は、そんな2020年の嵐を示す「Turning Up(R3HAB Remix)」を挙げたいと思います。この曲は2019年11月のサブスク解禁リリースの曲のリミックスで、リミックスを手がけたR3HABはEDMのDJ。まさに、嵐の2020年の動きを象徴するような1曲です。

 サビの「Turning up with the J-POP!」は「J-POPで盛り上がろう!」ということですが、これを世界に向かって堂々と言えるのは、「J-POP」を牽引した嵐くらいでしょう! さらに言えば、「turning up」に内包された「上を向く」というニュアンスに目を向けると、今度は、BTS以前、東アジア勢で唯一ビルボードで1位になった「上を向いて歩こう」を連想してしまいますが、これは勝手な妄想ですね。

 でも、かつて「上を向いて歩こう」を作った永六輔(作詞)と中村八大(作曲)の六八コンビこそ、初代ジャニーズのデビュー曲「若い涙」を世に送り出したのだから(しかも、東京オリンピックがおこなわれた1964年に!)、歴史のめぐりあわせを感じます。

1983年、東京都生まれ。批評家、DJ、イラスト。東京学芸大学大学院修士課程修了。2014年「自分ならざる者を精一杯に生きる――町田康論」で第57回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。近著に『SMAPは終わらない 国民的グループが乗り越える「社会のしがらみ」 』(垣内出版)、『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)、共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸編『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)など。

やのとしひろ

最終更新:2020/12/30 13:00
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