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パンドラ映画館特別編

『千尋』から『鬼滅』へ…国内首位の座を禅譲! 災害とヒット作がリンクする日本映画の20年

文=長野辰次(ながの・たつじ)

『千尋』から『鬼滅』へ…国内首位の座を禅譲! 災害とヒット作がリンクする日本映画の20年の画像1
週刊誌から無駄な直撃を受けてしまった宮崎駿監督(写真/GettyImagesより)

 長年にわたってトップに君臨してきたスタジオジブリの劇場アニメ『千と千尋の神隠し』(01)が、ついにその座を明け渡した。

 2020年12月28日、吾峠呼世晴原作コミックの映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が、公開11週目にして興収324億円を突破したことが発表された。『千と千尋』の今年6~8月に再上映した興収分を上乗せした316.8億円を上回り、19年ぶりに国内の映画興収記録を更新したことになる。『千と千尋』が公開された01年から、『鬼滅』ブームが席巻した20年まで、日本映画界は何が変わったのか? もしくは何も変わっていないのか? この20年間の日本映画界をざっくりと振り返りたい。

 日本全国に「シネコン」というインフラが整備されたゼロ年代は、日本独自のシステム「製作委員会方式」が全盛期を迎えた時代でもあった。テレビ局、電通や博報堂といった大手代理店、大手出版社が手を組むことで、ヒット作が次々と生まれることになった。エンターテイメント性豊かな宮崎駿監督の長編アニメは、このシステムにがっちりとハマった。『千と千尋』の公開が近づくと、日本テレビ系の番組編成は特番ラッシュとなった。CM、新聞広告、コンビニでのキャンペーン展開も凄まじく、『鬼滅の刃』に興味のない人たちからは「キメハラ」とも呼ばれた今年の『鬼滅』ブームどころの騒ぎではなかった。

 制作資金を集めやすい、各メディアと組むことでメディアミックスが展開できるなどのメリットが「製作委員会」にはあるものの、当然ながらデメリットもある。責任者(著作権者)の所在があいまいとなり、またテレビ局が製作委員会に入っている場合は、劇場公開後のテレビ放送が前提となり、テレビ放送で問題視されるような過激なシーンは制作段階で排除される。協議制で作られるため、先鋭的な作品は生まれにくい。

 19年ぶりに興収記録を更新した劇場版『鬼滅の刃』は、2019年にTOKYO MXなどでオンエアされたテレビシリーズと同様に、アニメ化の企画を手掛けた「アニプレックス」、制作会社「ufotable」、原作の出版元である集英社の3社のみでの製作となっている。合同出資ではあるものの、テレビ局や大手代理店は製作に入っていない。主人公の炭治郎が自分の首に刀の刃を立てるシーン、鬼が列車と一体化して炭治郎たちに襲いかかるシーンなど、かなりグロテスクな描写も劇場版にはあるが、原作原理主義を貫くことでファンの信頼を裏切らなかった。原作の世界観を熟知している3社だけでの製作が大きかったように思う。

 コロナ禍のために洋画の話題作の公開延期が相次ぎ、スクリーンがガラ空きだったという追い風もあったが、SNSによる口コミ効果は絶大なものがあった。テレビ局や大手代理店が主導する時代から、新しいフェーズへと日本映画も変わりつつあるのではないだろうか。82.5億円の大ヒットとなった庵野秀明監督の『シン・ゴジラ 』(16)は東宝一社、2021年1月23日(土)公開のやはり庵野監督の『シン・エヴァンゲリオン 劇場版』は「カラー」一社の製作となっている。『鬼滅』の歴史的ヒットがきっかけとなり、ヒット作の収益が制作現場に還元されるような流れが映画界全体に生まれることを期待したい。

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