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殺人虎を素手で倒す! 低予算&ベタでもケレン味で魅せる中国映画『タイガーハンター 水滸外伝』

「ベタ」な展開だからこそ作り手の力量が試される

殺人虎を素手で倒す! 低予算&ベタでもケレン味で魅せる中国映画『タイガーハンター 水滸外伝』の画像5
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 まぁ結果からいえば武松が勝つんですけど、この勝ち方を是非とも目撃してほしい。というか映画が始まった時点で武松が負ける未来が1mmも見えないが、それでも面白いから本作は凄いのだ。『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』が、絶対に主人公が勝つとわかっていても面白いのと一緒だろう。主人公が勝つ。勧善懲悪。これらはしばしば単純だと揶揄されるが、単純だからこそ作り手の技量が問われる。何十回も数えきれない程の先人たちが作り尽くしたモノを、どうやったら新鮮なモノとして物語れるか? 本作はこの部分を軽やかに乗り切っている。

 そんな「ベタ」の面白さが詰まっている本作だが、もう1点、金がそこまでかかっていない点にも注目したい。近年の中国映画は超大作時代劇が多いが、本作は明らかに金がない。虎のCGも「頑張っている」の範疇で、ただの野原での撮影や、セットもかなり使い回している。しかし、見せ方が巧いのだ。

 こうした通常ならマイナスになる要素(特にアクションの大胆なカット)をプラスに作用させている。このバランス感覚は見事だ。ハッタリの利いた内容に反して、監督の手腕はかなり堅実である。

 ちなみに監督のチャンネル・チョイは、ざわちんが出演している映画を手がけているらしい。しかもその映画は「思ったよりヒットしたから、もっと客が入るように」と、公開中にタイトルを変えたそうだ。公開前にタイトルを巡って現場と会社側が喧嘩をする話は聞いたことがあるが、公開中の映画のタイトルをサクっと変える話は珍しい。この逸話からも、チャンネル監督のザックリ&クレバーな創作マインドがうかがい知れる。

 なお次回作はAIを搭載したゴキブリが暴走するモンスターパニック映画らしく、こちらも期待したい。

 超強い正義の味方が悪をシメる。ただそれだけと言えば、それだけだ。しかし、ここには単純で豪快な物語だけが持つ面白さが確かにある。まさしくシンプル・イズ・ザ・ベスト。暇な休日の昼間、何となく見始めたテレビドラマが面白くて、気がついたら最後まで夢中になって見終わっていた……そんな記憶が蘇ってくるような、ひたすら楽しい1本だ。

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▽作品詳細
映画『タイガーハンター 水滸外伝』
DVD発売中 & Amazonプライム・ビデオほかにてデジタル配信中
監督・脚本:ツイ・イェンロン
キャスト:ユアン・フーフー、ヤン・ジアイン、ジャン・ ヤーチー、リュイ・ユー

▽配信だと、ここで観れますよ!
アマゾンprime videoで509円レンタル
YouTubeムービーで550円レンタル
そのほか、U-NEXTでも配信中!

加藤よしき(ライター)

ライター。1986年生まれ。「Real sound」「tayorini」などで執筆。『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』(洋泉社)に寄稿。

Twitter:@DAITOTETSUGEN

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かとうよしき

最終更新:2021/03/08 13:00
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