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「トイレ崩壊寸前」って大げさすぎでしょ? 怪しげで不快な「ネット広告」はなぜ蔓延するのか

広告プラットフォームの審査に期待

――運用型広告のしくみについては、どう評価されますか。

C氏 いろいろ弊害はあるけど、いまは個人への細かなターゲティングが進んでいるので、あれだけの量の広告をさばくにはこの方法しかないでしょう。ある意味すごい技術ではあるし、うまく使えば読者の利益にもなるはずなんです。

 でも、読者側にもおかしな誘惑に釣られやすい限界があるし、悪い奴らは儲けるためなら隙間を突いて何でもやる。カネのためなら時間も手間も惜しまない(笑)。審査後を見計らってクリエイティブや記事を変えてくるとか、いろんな方法で排除しても、その情報を横で交換し合っているのか、また乗り越えてやってくるようです。

――広告内容は、本来は広告主の責任ですが、広告代理店に責任を押し付ける例もあり、広告を表示する広告プラットフォーム会社の審査が最後の砦となります。そういえば運用型広告会社が集まって「健全化」に向けて共同声明を出したことがありました。

C氏 「フェイク広告とコンプライアンス違反広告の根絶に向け」というやつですね(2019年7月)。あの9社の中には、確かコンプライアンスで注意を受けてクライアントを失った会社も含まれていました。でもその会社も、最近は新しい技術を開発したと発表していて、そういう取り組みが広告の質の向上につながればいいなと。

 あと、ヤフーが昨年秋に「コンプレックスに関する表現の広告審査」を厳しくすると宣言して、ある種の美容健康系の広告主を排除しましたよね。ああいう流れがもっと他社に広がるといいのに、とは思います。とにかく、このままではまずいでしょうね。

――今後のコロナ禍の行方も、広告の質に影響を与えるでしょうか。

C氏 特に先期の前半は大手の広告主が予算を引き上げてしまったので、余計おかしな業者が目立ってしまった側面はあると思います。広告会社も目先の儲けを優先して、審査が甘くなっていたのでしょうか。景気が戻ってきたら、広告会社も審査を厳しくして、あらためて公序良俗に反する広告を一掃してくれるのでは、と期待しています。

<インタビューを終えて>

 気になる噂がある。見るからに怪しげな広告を出している会社の中に、コロナ禍で打撃を受けた反社会勢力が混じっているというのだ。ある広告業界関係者が「ぼったくりバーに客が入らなくなったり、飲食店からみかじめ料が入らなくなった暴力団が、ネット広告の審査の甘さにつけ込んで商売をしているらしい」と耳に入れてくれた。

 広告クリエイティブのひどさも、普通の人ではクリックしないと重々分かっていて、最初から「あんなバナーでもつい踏んでしまうほどの“頭の弱い人”」をターゲットとしており、「踏み絵」のように使っているのだという。

4月27日に内閣官房デジタル市場競争本部が公表した「デジタル広告市場の競争評価」の最終報告でも、「反社会的勢力との関連が疑われるような国内外の悪質事業者」が、不正に広告収入を得るアドフラウドに関わっている可能性が指摘されている。

 このまま自浄作用が働かなければ、いずれ国の指導や規制が入るだろう。目先の収入源を批判することになるので、ネットメディアは積極的にこの問題に手を出したがらないが、ネット広告業界が崩壊したら、真っ先に影響を受けるのはネットメディアだ。

うじいえひでお@hujiie(ライター・編集者)

ライター、編集者。1967年生まれ。出版社、ネットメディアなどを歴任。

Twitter:@hujiie

【合間縫う腑に落ちない音楽】

うじいえひでお

最終更新:2021/05/03 11:47
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