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『新・熱海殺人事件』公開記念インタビュー

能條愛未、つかこうへい作品に挑む! キャリアを深掘りして見えてきた「俳優」としての出発点とこれから【ロング・インタビュー】

能條愛未、つかこうへい作品に挑む! キャリアを深掘りして見えてきた「俳優」としての出発点とこれから【ロング・インタビュー】の画像1
能條愛未(撮影/二瓶彩)

 新宿・紀伊國屋ホールの改修後、演劇公演第一弾となる『新・熱海殺人事件』。これまで紀伊國屋ホールで繰り返し上演されてきた、故つかこうへい氏の名作が新演出で上演されるにあたり、婦人警官・水野朋子役で出演しているのが能條愛未さんだ。

 能條さんが所属していた乃木坂46は、かねてより舞台演劇に注力していることでも知られ、俳優として精力的に舞台出演するメンバー・元メンバーも数多い。その中でも、出演作品の幅広さと演技の安定感が際立つのが能條さんである。伝説的作品の上演にかける思い、そしてフレキシブルに活躍する俳優としてのキャリアについて、深く掘り下げてもらった。

つかこうへいの独特な世界観を楽しみながら

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(撮影/二瓶彩)


――紀伊國屋ホール改修後のこけら落とし公演『新・熱海殺人事件』で水野朋子役を演じておられます。つかこうへい作品のクラシックでもある『熱海~』の復刻に出演が決まったときの気持ちを教えてください。

能條愛未さん(以下、能條) 以前、別の舞台で共演した方から、つかこうへいさんの『熱海殺人事件』をやってみてほしいと言われたことがあったんです。つかさんの世界観の中で、感情を爆発させながら長台詞をしゃべる私の姿を見てみたい、と。それ以来、一度は演じたいなとなんとなく意識していたので、出演が決まった時は一方的に縁を感じました。不安よりも、どういうふうに演じようかという楽しみのほうが大きかったです。

――実際に今回の台本を読んでみて、どのような印象を持ちましたか?

能條 これ、どうやって覚えるんだろうって(笑)。今までは、そんなに意識しなくても自然と台詞が入ってきたので、あまり台本の覚え方について考えたことがなかったんですよ。でも今回は台詞の分量も多いですし、覚えるのにここまで苦戦したのは初めてです。自分の台詞だけを追っていれば覚えることはできるんですけど、相手の台詞をしっかり覚えておかないと、全体像を理解せずにただ自分が覚えた言葉を言っているだけになってしまうので。

――つか作品は台詞のテンポやテンションの高さも独特です。感情の乗せ方などに難しさを感じる部分はありますか?

能條 台本をしっかり読んでいても、正直どういう気持ちでしゃべったらいいのかわからない台詞も結構多くて。プロデューサーの岡村(俊一)さんなど周りの方に解説してもらいながら、理解を深める作業をしている感じですね。今まで出演した舞台では経験したことのないやり方というか。「なんで急にこの話の流れになったんだろう?」という部分も多いんですけど、これがつかさんの世界観なんだなと思いながら楽しんでいます。

――つか作品を多く経験されている岡村氏らスタッフの方にとっても、そうしたシーンを作る上で何が正解なのかを掴むのは難しいものなのでしょうか?

能條 正直、はっきりと「これが正解です」というものはなくて。「おそらく、こういう考え方で合ってると思うよ」という導き方ですね。一つのシーンだけとってみても、過去の上演では本当にいろんな解釈、いろんなレパートリーで行われているくらい、正解がないんですよね。あくまで私のパターン、というか今回のパターンはこうしよう、という感じで作っています。

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(撮影/二瓶彩)


――熱量の大きい作品ですが、日々の稽古の中でどのようにテンションを保っているのでしょうか?

能條 その日によって、どうしても自分のテンションって違いますよね。朝起きたときに、今日はすごく体がだるいなという日もある。でも、稽古が始まっちゃうとそれも吹っ飛ぶんです。やっぱり、お芝居が好きだからというのが大きいと思うんですけど。目の前のお芝居をただ全力でやって、その日のベストを毎回出したい。稽古の段階ではまだお客様が入っているわけではないですけど、スタッフの皆さんや演出家、プロデューサーの方にテンションの低いお芝居を見せるのはすごく嫌なので。

――『新・熱海殺人事件』は登場人物がたった4人とキャストの数も限られていて、舞台装置もシンプル。キャスト一人ひとりにかかる責任も大きくなると思います。

能條 その中でも、台詞の量にしてもダントツで部長(木村伝兵衛部長刑事役の荒井敦史)が一番多いんですけど、流れるように自然に台詞が出てくるので、稽古でも圧倒されますね。ここまで来るのにどれだけ大変だったんだろうって。部長役の荒井さんや、熊田留吉刑事役の多和田(任益)さんは以前にも『熱海』に出てらっしゃるので、もちろん理解度も高いですし、芝居の中での動き出しのタイミングなど、細かいところまで一つひとつヒントをくださって、とても心強いです。

――その中で、能條さんが演じる「婦人警官・水野朋子」という人物について教えてください。

能條 水野は部長のことが大好きなんです。けど、この事件の次の日に彼女は他の人と結婚してしまう。最後の捜査を、どれだけ立派な事件に仕立て上げるかがこの物語の中心になっています。水野はもう本当に部長リスペクトなので、部長の言っていることがちょっとさすがにおかしいんじゃないかという時でも味方になってあげる。自然と水野の動きが部長とシンクロしてしまったりするくらい、部長と一心同体になっている人物だと思います。

――今回、水野朋子役は向井地美音さんとのダブルキャストです。稽古で交互に演じる中で気づくことなどはありますか?

能條 たぶん、役の解釈の仕方にしても、私と美音ちゃんとではまったく違うと思います。それぞれに違う生い立ち、違う人生を歩んでいるので、それは当たり前なんですよね。お芝居って、自分の人生の中で生まれた引き出しや経験で作っていくものだと思うので。だから本当に、ここまで違うんだっていうくらい、私と美音ちゃんの演じ方や解釈は別物になっていると思います。

――水野朋子役同士で、演技について話し合うことはありますか?

能條 お芝居のことについては、一回も話したことがないんです。よく、ライバル意識はあるんですかと訊かれるんですけど、それは全然なくて。稽古でも、本当に別のものという感じで美音ちゃんのお芝居を拝見しているので、ライバルではないんですよね。別物だからこそ、私が偉そうに「ここはこうじゃない?」とか干渉するのも違うと思いますし。

――そう考えると、ダブルキャストってちょっと不思議な距離感ですよね。

能條 そうですね。本当はもう少し、お稽古以外の時間も一緒に過ごして美音ちゃんのことをもっと知れたらいいなと思うんですけど。今はなかなかそれができないから、お稽古のちょっとした空き時間で、お芝居のこと以外の話をしたりして。ダブルキャストだから、いざ本番に入っちゃうとあまり会えなくなるので。

――『新・熱海殺人事件』はダブルキャストを含めてもキャストの数はかなり限られていますが、カンパニー全体の雰囲気はいかがでしょうか?

能條 本当なら親睦会があったりして、お互いのことを知る時間があるはずなんですよね。それが自然とお芝居にも表れるものなので、本来ならその時間ってすごく大切なんですけど、今は新型コロナの影響でそれができない。でも、かといって仲良くなれていないかというと、全然そんなこともなくて。キャストの年齢がみんな近いので、変に気を使わずに話ができている。その意味では、いい雰囲気のカンパニーができてきているのかなと思います。

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