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リングス旗揚げ30周年記念 短期集中連載『天涯の標』

【格闘王・前田日明と「リングス」の曳航 Vol.3】群雄割拠の中、“最強の格闘技”を目指して

総合格闘技がもたらした逆進化

「逆進化の好例」コナン・マクレガー(Getty Imagesより)

 〈いや、あの試合結果は想定内です。そのとき言ったことにも特に付け足すものはない。

 その後、アマチュアレスラーとか柔道家だとか、いろんな奴が総合に挑戦して敗退する例がいっぱいあった。みんな同じ敗因でやられてるんです。

 何かというと、総合の中で自分のやってきた競技を生かせなかった。「総合の試合は別もんだ」と思って、今までやってきたことを忘れてしまう。まるで初心者のような総合の技術で闘ってる。それじゃ勝てません。〉

 1998年にはリングス・ジャパンの髙阪剛がUFCに出場。ホイス・グレイシーを追い込んだキモ(米国)と対戦し、圧倒している。

 リングスで培われた技術はバーリトゥードルール、対ブラジリアン柔術でも十分に有効であることが証明された。

 〈意外なことでも何でもない。当たり前です。

 髙阪はラグビー日本代表にタックルの技術を教えて「影の功労者」って言われてるみたいだけど。あれを髙阪に教えたのは俺ですよ(笑)。〉

 バーリトゥードへの対応で大きく変化を遂げた総合格闘技の技術体系。だが、まだ完成しているわけではない。今も変化の只中にある。これは前田の持論だ。

 〈今ある格闘技の各種目はもともと全て総合格闘技だったんです。でも、スポーツ化するために一番やってはいけないことをやった。

 空手は空手の技術であらゆるものに対応していました。これは空手にとって一番捨ててはいけない大事な根本だった。柔道は柔道で、打撃から何から全てに対応する技術があったんです。でも、競技化を目指す進化の過程においてその技術は捨てざるを得なかった。なぜなら、競技スポーツでは柔道家は必ず柔道家と試合し、空手家は空手家と必ず対戦するから。格闘技とは本当はそういうものではありませんでした。

 格闘技や武道とは、「対応する技術」。「対応する」部分にこそ、その流派や種目の一番大事な本質が生きています。にもかかわらず、それを捨ててしまったら、どうなるか。それは競技ですらなく、対応もできない単なる技術になってしまう。現在の格闘技はそうした技術に過ぎない。特徴的な技術に特化する競技化をしてしまったために、駄目になったんです。

「総合格闘技が出てきたときに、逆進化が起こるんじゃないか?」

 俺はそう考えてきました。今、その逆進化が現実に起こりつつある。ハビブ・ヌルマゴメドフ(ロシア、元UFCライト級王者)みたいにアマレスを中心に対応して勝ち上がる。一方、コナー・マクレガー(アイルランド、元UFC世界フェザー級王者)は伝統派の空手の技術で全部対応している。これらは逆進化の好例です。

 空手の型ってよく見ると、総合格闘技の型。古流柔術や古武術に残っているようないろいろな動きを見ると、「総合格闘技」っていう感覚で見ないと理解できないようなものがいっぱいある。それを解明しなきゃいけないんです、本当はね。〉

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