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『チコちゃんに叱られる!』東京五輪の番宣? 運動神経を「才能ではない」と説く解説がどうしても信じられない!

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 7月16日放送『チコちゃんに叱られる!』(NHK)のゲストは、どちらも初登場の中山秀征とハリセンボン・近藤春菜の2人だった。

 最近、なぜかプチブームが到来している中山。今回の『チコちゃん』登場は、6月10日放送『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)ゲスト出演からの流れだろうか? ANNでは岡村から「ヒデちゃん」と呼ばれることに拒否反応を示していた(テイの)中山だが(通称“ヒデちゃん論争”)、この日は岡村に「ヒデちゃん」と呼ばれてもOKのようだった。

開会式1週間前にこっそりオリンピック仕様になっていた『チコちゃん』

 この日最初のテーマは、「運動神経がいいってなに?」という疑問で、チコちゃんが発表した正解は「生まれ持った才能よりも繰り返し練習したおかげ」であった。いや、そんなバカな。鉄棒の逆上がりがすぐできるようになる子どもがいれば、何度も練習を重ねてできる子もいる。必要な「繰り返し練習」の回数の差が、即ち運動神経の差なのでは?

 とりあえず、解説を聞こう。詳しく教えてくれるのは、日本女子体育大学の学長・深代千之先生だ。曰く、医学的に「運動神経」とは才能やセンスのことではなく、脳と筋肉を繋ぐ神経そのものを指しているそう。運動する際、脳から筋肉に“どう動けばいいか”の指令を送る神経のことだ。これは誰しもに備わっており、個人差はない。そして、スポーツ科学的には「自分のイメージ通りに体を動かす」ことを指すという。つまり、我々が使う「運動神経がいい、悪い」は俗語なのだ。そして、世間一般で使われる運動神経は練習で誰もが身につけられるという。生まれ持って運動神経がいい人はいないと言い換えられるのだ。

 では、個人差が無いはずなのに運動の出来、不出来で差ができる理由は? 実は、“運動神経がいい”とされる人は脳内に適切な神経回路が作れているという。

「脳の中の神経回路は、例えるなら都内を入り組んで走る地下鉄の路線図なんです。地下鉄で新宿駅から浅草駅に向かうとしましょう。1番早く行くには、新宿駅で都営新宿線に乗り、馬喰横山駅で都営浅草線に乗り換えて浅草駅に向かうルートがあります。このように脳の中で最適なルートを通れる人が、いわゆる“運動神経がいい”とされている人なんです。
 一方、“運動神経が悪い”とされる人は、新宿駅で大江戸線に乗り、六本木駅で日比谷線に乗り換えて茅場町駅へ、さらに東西線で日本橋駅に向かい、そこから銀座線で浅草駅へ……というように、目的地に到着するまでに時間が掛かってしまう人のことを言います」(深代先生)

 この神経回路という名の“地下鉄”を乗りこなす方法は、ズバリ「成功体験」と「反復練習」だ。地下鉄でも乗り換えルートを1度覚えられれば、次からは調べなくても目的地に辿り着けるはず。成功体験とは、言わば適切なルートを知ることである。その適切なルートを何度も使っていれば、体が自然にその道順を覚える。運動も同じで、成功体験を続ければ誰でもできるようになるという考え方である。

 言っていることはわかる。1度自転車に乗れれば、数十年ぶりに自転車に乗っても体が漕ぎ方を覚えているし。まさに、成功体験だ。でも、成功を体験するために重ねるチャレンジの回数に個人差がありすぎると思うのだ。それを、我々は“持って生まれた才能”と呼ぶ。オリンピック級のアスリートは幼少期から“他の子とはモノが違う”と評価されているケースが多い。つまり、才能による差は絶対にあると思うのだ。

 いや、もうちょっと解説を聞こう。初めて取り組む運動が“すぐできる人”と“すぐできない人”、両者の差は一体何なのか?

「初めての運動でもすぐにできてしまう人は、過去の似たような運動の記憶を応用できる人なんです。例えば、野球をやっていた人が初めてバドミントンをやったのにスマッシュが打ててしまう。これは、野球のボールの投げ方の記憶をバドミントンのスマッシュに応用しているからなんです」(深代先生)

 いや、それを「運動神経がいい」と言うのでは!? 映画『ベスト・キッド』でワックス掛けばかりやらされていたら、いつの間にか空手が強くなっていた主人公・ダニエル。あれこそまさに“応用”だが、それも運動神経ありきだ。ここが大事だと言っている。このポイントをないがしろにすると、“すぐバク転ができた人”と“3年かけてバク転をマスターした人”では、運動神経に優劣がないということになってしまう。

 さて、ここからが興味深い。オリンピックを目指す子どもたちのために、深代先生がさらに運動神経を良くする3つのポイントを教えてくれたのだ。

1.うまい人の動きをまねする
うまい人の動きをまねして練習すると脳の中の適切なルートを発見しやすくなり、徐々に適切な動きに近付く。
2.うまくいった動きは繰り返し続ける
うまくいった動きをすぐに繰り返すと、脳の中で適切なルートが固定化される。この結果としてその動きは体に定着する。
3.練習中の自分を客観的に見る
練習の様子をスマホで撮影して客観的に自分を見て、ダメな動作は脳に定着させないで、いい動作だけを脳に残すことが大事。

「何度も言いますが、いわゆる運動神経の良し悪しに才能は関係ありません。努力した人のみに与えられるのです」(深代先生)

 いや、腑に落ちない。繰り返しの練習をしなくても、適切なルートを脳内に即作り上げる天才がいるから我々は驚くのだ。

 筆者のような物分かりの悪い視聴者に向け、努力と運動神経の関係を強調するアスリートインタビューの数々が紹介された。

「オリンピックの連覇という夢に向かって一生懸命練習してきましたので、それを一生懸命発揮しました」(谷亮子)
「いつもの練習では絶対にミスがなかったので、その練習だけを信じていつも通りを心掛けてやりました」(内村航平)
「1個ずつきちんとクリアして『全てやってきた』って思ってその舞台に立てば、もう怖いものは何もないと思った」(北島康介)

 いや、でも、謙虚な国民性の日本人が「才能のおかげでここまで来れました」なんて言うわけがないと思う。そんなの、口にしないはずだ。人類のほぼ全ての人は金メダリストになれないし、死に物狂いで練習してもウサイン・ボルトになれるわけではない。アスリートが到達した偉業を“努力の結晶”と結論付けたい意図はわかる。でも、先生の解説を全て聞いても、やはり持って生まれた才能に依存する部分は大きいと思うのだ。

 というかこのテーマ、密かにオリンピック中継の番宣もちゃっかり兼ねていた気がするな……。

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