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高速道路は“上級国民”専用道に? 「ロードプライシング」導入の近未来

高速道路は上級国民専用道に? 「ロードプライシング」導入の近未来の画像1
Getty Imagesより

 五輪開催中の現在、首都高の料金が通常より1000円上乗せされている。狙いどおり渋滞は大幅に減少しているが、国土交通省が、この変動料金制度「ロードプライシング」を他の時期、他の場所でも導入する意向であることが明らかになった。

 ロードプライシングは、混雑が激しくなる場所や時間帯に通行料金を上乗せすることで利用者を分散させ、混雑を減らすもの。東京では、石原慎太郎氏が都知事だった時代から導入が検討されており、今回の実証実験が今後の試金石となる。ただ、首都高の渋滞が減ったのは事実だが、そのしわ寄せは凄まじい。首都圏の道路事情に詳しいフリーライターはいう。

「首都高が空いている分、その周辺や一般道は渋滞が明らかに酷くなっています。値上げ初日には、首都高を避けた車が外環道に殺到して悲劇的な渋滞になりましたし、中央道の八王子、常磐道の三郷、東北道の浦和など、普段から混み合うポイントは、いつも以上に渋滞が酷くなっている。

 首都高が空いているのは、色々な場所で入り口を閉めている影響が大きいでしょうし、首都高に繋がる高速で車線規制を行っているので、空くのは当たり前です。都内を走るベテランドライバーは、『下道の渋滞が酷くて、指定の時間に荷物を届けられない』と、嘆いていました」(フリーライター)

 それでも国土交通省は、ロードプライシングの本格導入の検討に入る見込みだ。7月27日付の朝日新聞よれば、大都市圏の渋滞区間で、時間帯や曜日を区切って料金を変えるとのこと。中央道の小仏トンネル付近や東京湾アクアラインなどが導入場所として挙げられている。「使いたい人が多ければ料金を上げる」という方法は合理的にも思えるが、大きな問題がある。

「高速道路=有料というイメージは染み付いていますが、道路は公共物であり、建設費を償還すれば無料になるというのが本来の考え方。1969年に全線開通した東名高速も、20世紀中には償還を終えて無料になるはずでした。

 しかし、全国の高速道路網を1つとして考え、全体にかかる費用を全体から得る料金収入で賄う『料金プール方式』が採用され、無料となるプランは形骸化。国交省は『無料開放する原則は維持する』と主張していますが、これでロードプライシングが導入されれば、無料化はますます遠のきます。高速道路は民間企業ですし、国交省とはズブズブの関係。結局、ロードプライシングなんてただの値上げで、本音は“無料になったら困る”ということですよ」(交通ジャーナリスト)

 いつか無料になると聞いていたのに、あれこれと理由を付けられ、結局は絵に描いた餅……。実際にロードプライシングが導入されれば、若者の車離れはいよいよ加速するかもしれない。

「そもそも日本の高速料金は世界一高い。現状の首都高1300円でも異常な値段なのに、それがさらに上がるようなら、庶民は気軽に使えません。休日に観光地に出かけようと思ったら、下道で凄まじい渋滞に巻き込まれるか、高い通行料金を払うかの二択。冗談抜きで、ドライブで高速を使うのがステータスになる時代になりますよ」(前出・フリーライター)

 それとも自動運転が全車に導入されて、人間は運転しなくても時が来る方が早いかも?

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2021/08/01 07:00
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