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グラミー賞は政治とカネ、それでも夢がある――ある日本人ソウル・シンガーの挑戦

文=末﨑裕之

インディペンデントのアーティストにも脚光を浴びる機会が与えられる

――投票権を持ってるのがプロの同業者がゆえに、セールスが加味されない傾向にあるわけですね。

山内 そうです。僕が聞いた時は、グラミー会員は3万人くらいいて、そのうち投票権を持ってる人は1.2万人ぐらいしかいないって話で。自分が詳しい分野しか投票できないので、そうするとR&Bの分野に投票する人はけっこう少ないですよね。あとR&Bのカテゴリーだと、エントリーしている作品数も100を切ってたりするんですよ。なので、Naoにもチャンスあるなってちょっと思っちゃうんですよね(笑)。

――商業的なアワードだけれど、可能性は十分にあるわけですか。

山内 グラミーってスポンサービジネスなんですよね。一時期インディのアーティストがめちゃくちゃ獲っちゃったことがあったんですが、その次の期からメジャーのレコード会社が“もうスポンシングしないよ”っていう話になって。カテゴリーとかもやっぱりスポンサーがついてできるんですよね。なので、たとえば6枠あったとして、投票のふるいにかけられた上位のアーティストの中から、まずメジャー6社の6人が聴いて、その最下位の2つをインディと切り替えて、メジャーが4枠、インディが2枠ってもう決まってる……っていう話もあるぐらいで。

 ただこれって、グラミーの仕組みだけじゃなくて、アメリカの場合、テレビのPV枠みたいなのもそうなんですよ。たとえばメジャーが10枠あったときに6~8枠はメジャーのもので、インディは2枠。でも逆に言うと、インディを必ず2枠入れてくれるってのはすごいなって。アメリカはそういうのをしっかり決めてるんですよね。

――インディのアーティストにも脚光を浴びる機会を与える、そういう懐の広さがあると。

山内 エリック・ロバーソンとか、キャロリン・マラカイとか、ベイラー・プロジェクトっていう僕らの周りのインディのアーティストはみんなノミネートされてて。最初はもう「グラミーなんて絶対無理でしょ」みたいな感じもあったんですけど、受賞しているアーティストの中でもソーシャル(SNSでの訴求力)が弱い人もいるし、ヒット曲があるわけでもない人がノミネートされているケースもあるんですよ。それって僕たちにとっては、チャンスがあるな、めちゃくちゃ夢があるなと感じるんです。

グラミー賞は政治とカネ、それでも夢がある――ある日本人ソウル・シンガーの挑戦の画像2
写真/石田寛

――ノミネートされるための営業努力みたいなことは求められるんでしょうか。

山内 グラミーチャプターっていうのが各所にあって、Naoはフィラデルフィアチャプターに入ってるんですけど、会合があったりとかするので、そこにアーティストとかプロデューサーとか集まるんですよ。で、プロデューサーはプロデューサー同士でがっちり固まってて、誰に投票しようとか、みんな話してるんですね。そういうところに政治的なロビイングとかは必要で。あと、ビルボードマガジンとかでグラミー特集があるんですよ。それはみんな見るので、そこには必ず広告を打っておくとか。アーティスト自体の認知度をしっかりそのカテゴリー内で上げていかないといけない。

 自分たちで独自にしたのは、グラミー会員をターゲットしてデジタル広告を打ちました。たしかチャンス・ザ・ラッパー*は広告パワーで獲ったっていう話があったと思うんですけど、僕らも2019年かな、めちゃくちゃ広告打って。今年も打ちましたね。

*……シカゴ出身の人気ラッパー。2017年の第59回グラミー賞で最優秀新人賞など3部門に輝き、CDやダウンロード販売を行わないアーティストによる史上初の受賞となったことで“ストリーミング時代”の象徴的存在にもなった。

 たとえばベイラー・プロジェクトの女性ボーカリストってジャネイ*の元メンバー(ジーン・ベイラー)じゃないですか。業界へのつながりがでかいし、パートナーのマーカス(・ベイラー)もすごい有名なジャズドラマーなんで。人脈なんですよね。彼らも第一回の投票の時って、メールを送ってくるんですよ。For Your Consideration(ご検討よろしくお願いいたします)って。それは別に違反じゃなくて。「俺はお前に投票したからお前は必ず俺に投票しろよ」っていうのは違反ですけど(笑)、For Your Considerationで呼びかけるのはまったく問題ないんです。だからみんなちゃんと営業していて、精度の高いメーリングリスト持っているのは強いですよね。

*……“Hey Mr. D.J.”などのヒットで知られる、90年代に活躍した女性R&Bデュオ。片割れのジーン・ノリスは、イエロージャケッツなどで活動した人気ドラマーのマーカス・ベイラーと結婚し、近年は夫婦デュオ=ベイラー・プロジェクトとして活動中。ベイラー・プロジェクトは2018年の第60回グラミー賞でデビューアルバム『The Journey』やその収録曲ジャズ部門やR&B部門でノミネートされたほか、2021年の第63回、2022年の第64回でもノミネートを受けている。

 以前までは一回目の投票後に、投票上位の楽曲の中から、グラミーの内部の人によって選定された特別審査員によるさらなる投票をして決めるプロセスがあったのですが、今年からその工程がなくなり、グラミー会員(voting member)による票の重みがより増したと言われているので、なおさらなんです。

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