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オズワルド伊藤のツッコミ技術の真髄を見た!元芸人が「M-1 2021」全ネタレビュー

ランジャタイが審査員から評価されなかった理由を考える

2組目 ランジャタイ「風の強い日」

 見た目の奇抜さからどちらがボケなのかわからず、もしかしたら両方ボケなのかと思ってしまったが、いざネタが始まったら奇抜な髪形をしている方がツッコミで、しかも意外とベーシックなツッコミをしていた。

 芸歴14年目ということで紆余曲折あってその髪型になったのだと思うが、奇抜な髪形というのは時としてその人のハードルを上げてしまう。つまりこのランジャタイのつっこみ伊藤さんは、面白い事をする人間だと思われてしまうのだ。

 そう思われているのにベーシックなツッコミをするとマイナスになってしまう。無個性なツッコミを経て個性的になったとは思うが、違う個性の出し方をした方が伊藤さんには合っているように思う。多少奇抜なツッコミをしたとしても、ボケの国崎さんのパワーの前には霞んでしまうのであまり意味はない。

 ネタ自体は最初から最後までファンタジー妄想漫才。話の筋なんてあってないようなもの。ボケの国崎さんがひたすら思い描いた妄想の世界を暴走気味にボケていき、それをツッコミの伊藤さんが客観的につっこんでいくという形。僕はかなり楽しく見れたのだが、審査員の皆さんは「なぜこんなネタを決勝でやる?」ぐらいの感じだった。

 比較的面白いと思った僕と、高評価では無かった審査員の差は何なのかを僕なりに分析してみようと何度かネタを見返してみた。何度も見返して分かったことは、ボケというのは基本的に話の筋があり、お客さんに想像させそれを裏切ることにより笑いを産みだすもの。漫才はそれの最たるものだ。

 しかしこのランジャタイのネタは、国崎さんの動きを頭で映像化するだけで、想像とは違う。つまり裏切る笑いというものは一切入っていないのだ。しかも笑わせる手段はほぼ動き。巧みな言葉のボケや、計算されたボケなど無いと言っても過言ではない。Tシャツの中に腕を入れてぴょん吉のような動きで笑わせるなど小学生でも思いつく。その辺りが厳しく評価されたポイントだったのではないだろうか。

 僕は逆に小学生でもやるようなことを、大の大人がやっているというのが面白かったのだが、これは一周回ってしまった意見かもしれない。

 それでもランジャタイに96点という高得点をつけた志らく師匠といつかお話してみたい。

3組目 ゆにばーす「男女の友情は成立するか」

 登場してすぐ会場を盛り上げ、そしていきなりテンションを下げて本題に入るという掴みはかなり秀逸。本題に入るまでの小ボケが弱かったので、お客さんのテンションを維持できていなかった印象。

 小ボケ自体もただ面白い裏切りをするのではなく、はらさんのキャラをもっと活かしたものだとさらに良かったはず。

 ネタの内容はSNSで絡まれて上手く反撃できなかったら、ディベートの練習をしたいというもの。

「コロナ反対派」「コロナ賛成派」というわかりやすいフリを入れてメインとなるのは「男女の友情はありかなしか」というディベート。これは男女コンビならではのお題で、しかもそこから男女の友情は成立しないといっている川瀬さんに対し、「川瀬は私の事を女としてみてたんですねぇ」と、ゆにばーすのキャラクターを最大限に活かせる展開へと進んでいく。

 掴み、ネタのフリ、流れ、展開、どれもスムーズで良かったように思うが、お客さんの反応がイマイチなところが多々あった。その原因は明確で、一つひとつのボケはイイとしても、そのボケから次のボケにいくまでの間が長く、次のボケにいくまでにテンションが落ちてしまうのだ。

 しかもゆにばーすの特徴として、はらさんがひとつボケると川瀬さんが3つくらいツッコミ、またはらさんがひとつボケるという形が多い。これは丁寧で良い事なのだが、前半でお客さんにキャラ説明とネタの趣旨さえ説明できれば、後半はそこまで丁寧にやらずとも通じるのだ。

 なのでゆにばーすが賞レースで点数を稼ぐためには一定リズムでボケを入れるのではなく、後半は川瀬さんのツッコミとはらさんのボケを1対1、もしくはつっこんでもはらさんがボケをやめないなど、笑いのピークを後半に持っていくようにすることだ。

 それともうひとつ、ネタ中にお客さんは明らかに川瀬さんではなく、はらさんに好感を持つ。なのでツッコミで笑わせるのを重視するのではなく、後半はボケで笑わせるというのを重視すれば、さらに違ったゆにばーすが見れるはずだ。

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