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オズワルド伊藤のツッコミ技術の真髄を見た!元芸人が「M-1 2021」全ネタレビュー

真空ジェシカは決勝進出してもおかしくなかった!

4組目・敗者復活からハライチ「否定し合い」

 見取り図やニューヨーク、アインシュタイン、金属バットなどが参加した、ある意味決勝戦より難しいと言われていた敗者復活戦を勝ち上がって登場。

 芸歴15年目、ラストイヤーということもあり気合が入っているように思えたが、決勝戦のネタを見たところ、気負い過ぎて、気合が空回りしているようにも見えた。

 ネタはお互いがやろうとしていることを否定し合い、同じように否定しているのに岩井さんの方がかなり怒り心頭になるというネタ。岩井さんが我を忘れて爆発的に怒り、子供のように駄々をこねる姿は今までのハライチとも、敗者復活戦のネタとも違う、新たなハライチが見られてかなり面白かった。

 ただ審査員の松本さんが言っていたように、面白い割にはお客さんの反応がイマイチだった。その原因は一体なんだろか?

 僕的にその理由はいくつかあると思っている。

 まずひとつめ、岩井さんの怒るバリエーションが少なかった事。怒り自体は後半になるにつれてスピード感を出して、ひとこと言われただけで怒るなどの展開は作っていたが、怒る演技のバリエーションは全くと言っていいほど無かった。もしかしたら怒るという部分は、その場のアドリブの可能性もある。アドリブを何度もやられては、お客さんは飽きてしまう。怒りの部分もアドリブではなく計算でやるべきだった。例えば無言で睨みつけてみたり、子供のように泣いてみたり、沈黙→大声→沈黙→大声を短いスパンでやってみたり。そういったバリエーションを見せることが出来れば、お客さんが飽きなかったかもしれない。

 そして最大の原因は、ネタが長い事だ。ほかのコンビと同じ時間なのか? と疑ってしまうほど長く感じた。ネタが長く感じた理由は明確で、メインとなる岩井さんが怒るというボケが出てきたのはネタの中盤辺りだ。

 つまりそこまでボケらしいボケが無いとお客さんは「このネタは一体どんなネタなのだろう?」とひたすら探りを入れ続ける時間となる。これが長ければ長いほど、後半どれだけ面白くても空きが来てしまうのだ。賞レースのネタはどれだけ早く大笑いさせるかがポイントになってくる。

 もう少し早く岩井さんが爆発していればラストイヤーを華々しく飾れたかもしれない。残念だ。

5組目 真空ジェシカ「一日市長」

 初見はどちらがボケでどちらがツッコミかわからない最近多いタイプだなといった印象。登場してすぐ掴みのボケがあり、それをつっこんだ時、ツッコミで笑いを取るタイプなのかな? と思ったのだが、ネタが本題に入るとそれが一転した。

 ボケの数もさることながら、一つひとつのボケのクオリティが高い。やっていることはベタな事なのだが、ありきたりではない。なんと説明したらいいのかわからないが「進化したベタ」といったところだ。レビューを書くという目線で見ていたのに、ほぼすべてのボケで笑ってしまった。

 決勝に残ってもおかしくないボケだったのだが、なぜ決勝へは行けなかったか。

 たぶん凄い細かい差で行けなかったように思う。

 まずひとつめ。ボケの川北さんの声量が小さい。決勝へ行った三組を見てもらえばわかるのだが、声量というのはお笑い芸人の武器のひとつだ。しかも大きな声を出すという、意外と簡単に手に入れられるものなのだ。川北さんの雰囲気から声を張るのは違和感になるように思えるが、大声を出すのではなく、普通に出しているように見せて、音量を上げるという技を使うのだ。そうすると普通に喋っている感じだがお客さんの笑い声に負けなくなり、お客さんも気づかないうちに引き込まれていくことになる。これがひとつめ。

 そしてもうひとつは、つっこみのガクさんの引き出しの少なさだ。彼は面白いというボケの時は決まって同じようなつっこみをしてしまう。少しまったりさせてしゃくるように声を出すつっこみ。ここぞというときにこのツッコミがあったら笑いは倍増すると思うが、終始このツッコミを見せてしまうとレア感がなくなってしまうどころか、少ししつこく感じてしまう可能性もある。

 なのでせっかく編み出したその大事なツッコミはここぞというときに出して、ほかの部分はまたべつのツッコミが出来るようにするのだ。少しの変化に思えるが、今のボケのクオリティがあれば、その少しの変化で優勝が狙える。

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