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『ハウス・オブ・グッチ』レディー・ガガの熱演が輝く御家騒動映画の魅力

文=ヒナタカ

『ハウス・オブ・グッチ』レディー・ガガの熱演が輝く御家騒動映画の魅力の画像1
C) 2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 1月14日より映画『ハウス・オブ・グッチ』が公開されている。本作は80歳を超えてもなお『最後の決闘裁判』(21)という傑作を世に送り届けるリドリー・スコット監督の最新作。今回は、誰もが知るファッションブランド・グッチの一族にまつわる実話を元に作り上げたドラマとなっている。

 その中身は、煌びやかで華やかなファッション業界を舞台にしたサクセスストーリー……では全くない。良い意味でドロッドロの人間関係がこれでもかと表れた、スキャンダラスな物語が綴られていることが最大の魅力だったのだ。

 なお、本作について「どういう事件が起こるか」を具体的に記している紹介文もあるが、ここではあえて伏せておく。もちろんそれを知ってから観ても楽しめるが、物語が行き着く先を予想できないままに観るのもまた一興と言える内容だったのだから。さらなる特徴や面白さを記していこう。

夫だけでなく、その権力も愛してしまった女性の物語

 あらすじを簡単に紹介しよう。父が営む運送業で経理を手伝う女性パトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)は、 友人の誘いで行ったパーティーで弁護士を目指す青年マウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)と出会い、2人はお互いに急速に惹かれ結婚へと至る。だが、その後のパトリツィアの行動は、グッチ一族との関係を険悪なものへと変えるきっかけになるのだった…。

 この物語で何よりも切ないのは、主人公の1人であるパトリツィアが、明らかに「自分のやるべきことと信じて」夫のために行動していたことだろう。それは、彼女を演じたレディー・ガガ自身の以下の言葉が見事に表現している。

 「パトリツィアにとってグッチとは、生き延びる術、サバイバルの手段。それまでの人生を通して、自分が重要だったことは一度もなかった彼女が、重要になる機会だったのだと思う。そして自分は、夫の大切な存在となる手段でもあった」

 序盤でパトリツィアは絵画のこともよくわからない自分を卑下するなど、そこかしこに「自分に価値がない」と思い込んでいるような節があった。だからこそ、パトリツィアはグッチの創業者の孫でもある青年と結婚することで、夫自身だけでなく彼が持つ「権力」も愛するようになり、彼のためにその権力を保持させることが自分の務めであり、それでこそ自分の存在価値が生まれるのだと信じているように見えるのだ。

 この複雑な人間の感情を感じ取れることこそ、この『ハウス・オブ・グッチ』の大きな意義だろう。起こる出来事だけを客観的に捉えれば、パトリツィアは「カネと権力目当てのひどい女」にさえ見えるだろうが、映画を観終わって単純にそう思う人はいないはずだ。後述するレディー・ガガの見事な演技も合間って、彼女は自身のアイデンティティと存在価値を確かにするために必死でサバイバルをしていて、そして夫への純粋な愛情も確かにあったのだと、はっきりとわかるのだから。

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