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元芸人が「ツギクル芸人グランプリ」全ネタレビュー!

「ツギクル芸人グランプリ」実は漫才師圧倒的不利な中で優勝したストレッチーズ

Cブロック5組目「10億円」

 もともと別のコンビを組んでいたが、鳴かず飛ばずで解散。そして2人が組んでみたところ飄々とした漫才が評価され、結成1年で決勝進出したという。

 ネタは映画館にいる迷惑な客。山内仁平さんのボケのクオリティは高いし、ツッコミの永見諒太さんに関しては間もセリフも表情も先輩芸人に引けを取らないほど基本ベースは高い。

 ならなぜ飄々漫才と言われてしまうのか。それはひとえに永見さんの声だ。たぶん普通の人ならもっと聞こえるであろう音量で喋っているのだが、声質によりどうしても聞き取りづらく、敢えてテンションを抑え目でやっているように見えてしまうのである。

 僕も同じように声が通らないタイプだったので、他の芸人と同じ声量で出したとしてもテンションが低く、やる気すらないように見えてしまう。ただ良く見て欲しい。永見さんは他のツッコミの人より、何倍も楽しそうに突っ込んでいた。しかも他の芸人はほとんどやっていなかったツッコミテクニック『誘い笑い』もきちんと使っていのだ! お客さんにはほとんど聞こえないであろう『ぼそぼそ声』で。彼の声はこの先通るようになることはない。これは仕方のないこと。逆にボケの山内さんがもっと声量を上げて、永見さんの声を消すようなボケがあれば永見さんの声に注目が集まり、それすら笑いに変えられるはず。さらなる進化を期待している。

総評「3分のネタ時間で苦しんでいた」

 この「ツギクル芸人グランプリ」が他の大会と大きく違うのはピン芸人、漫才、コントが入り交じる、何でもありの大会ということと、決勝戦のネタ時間が3分というところだ。

 僕はこういうなんでもありの大会では圧倒的に漫才が強いと思っていた。それは漫才にはアドリブが入れられるからだ。もちろんコントにアドリブを入れるコンビもいるだろう。だが漫才はコントとは比べ物にならないくらい細かく入れられる。ネタに限った事ではなく、会場の空気を感じ、声のトーンを変えたり、間を変えたり、若干キャラクターを変えたり、時にはネタの順番を入れ替えたり。そういう細かなアドリブから大きなアドリブまで漫才なら入れられるのだ。

 しかし今回ファイナルステージへ進んだのは漫才が1組、コントが2組。3分の2をコントが占めている。これがこの大会の肝でもある『ネタ時間3分』がもろに影響してきている部分だ。

 3分という時間は思っているより短い。アドリブを入れようものならあっという間にネタが終わってしまう。アドリブはどのくらい時間がかかるか事前にわからない。

 仮に1分余裕をもったネタを作ったとしよう。そうすると2分のネタということになる。2分で空気作りからオチまで見せられる漫才を作るのは至難の業だ。そうなると3分の漫才でしかもアドリブを入れないという形になる。この大会に出場している漫才師のネタを見てもらうとわかるが、カチっとセリフが決められた漫才やキャラ漫才ばかりで、アドリブが入っている感じは一切ない。

 それなのでコントが勝ち上がりやすくなっているのかもしれない。そんな中、漫才で優勝したストレッチーズは本当に凄い。

 今大会は皆のネタが少し窮屈に見えてしまった。それは少なからずM-1グランプリやキングオブコント決勝のネタ時間の影響があるのだろう。

 今後どうなるかわからないが、この「ツギクル芸人グランプリ」も民放で生放送される大会になった。4分や5分のネタを短くするのではなく、ツギクル芸人グランプリのチャンピオンを目指し究極の3分ネタを作ってこの大会に挑戦し芸能界のスターを目指してほしい。早い者勝ちだぜ!

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2022/05/31 11:00
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