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稲田豊史の「さよならシネマ 〜この映画のココだけ言いたい〜」

映画『わたしは最悪。』“奔放”と“正直”を言い訳にする“最悪”な人間性が痛快

ユリヤの“最悪”とは

映画『わたしは最悪。』奔放と正直を言い訳にする最悪な人間性が痛快の画像2
© 2021 OSLO PICTURES – MK PRODUCTIONS – FILM I VÄST –  SNOWGLOBE –  B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA/2021

 奔放すぎる本音、これすなわちユリヤの“最悪”の部分だ。順不同で並べてみよう。

 まず、ユリヤは性格が悪い。子どもが欲しくないばかりに、初対面の子持ち女性に「最新の研究結果では子供に愛情を注ぐとジャンキーになる。母性は大脳辺縁系を乱す。これは医学的見解」などと意地悪な皮肉を吐き、その母親を苛立たせ、してやったりと意地悪い微笑みを浮かべる。また、アイヴィンの元カノ(スピリチュアルに目覚めてヨガ講師になった)を「セクシー路線でフォロワー集め」「こんなのヨガじゃない」などと嫌味ったらしくディスり倒す。

 しかも、ユリヤの不貞は見ていてイラつくほどのびのびと、堂々としている。アイヴィンとの一晩限りの(つもりだった)ビッチな浮気を、「自分の感覚に正直になった結果、抑圧から解放された行動」とでも言わんばかりに美しく知的にラッピングし、ポジティブに陶酔。勤務先の書店でアイヴィンと偶然再会した際など、彼はパートナーと一緒なのに、そのことには一切配慮せず、阿呆みたいに「あなたに再会できて幸せ!」的な笑顔を浮かべ続ける。周りが見えていない。かなりイタい女だ。

映画『わたしは最悪。』奔放と正直を言い訳にする最悪な人間性が痛快の画像3
© 2021 OSLO PICTURES – MK PRODUCTIONS – FILM I VÄST –  SNOWGLOBE –  B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA/2021

 同棲中のアクセルに別れを切り出す場面では、単に飽きたから乗り換えたいだけなのに、「人生のステージが違い、求めるものも違う」「私たちの人生を考えた結果」などともっともらしい言葉を並べ、乗り換え先・アイヴィンの存在は隠す。あたかも、自らの知性と理性でその結論に達したかのような言い草だ。そのくせ「あなたに合うのはこれこれこういう人」などと偉そうに講釈を垂れ、家を出ていく前にアクセルにはしっかりクンニさせる。

 これらを、今を生きる女性の清々しき奔放さと捉えるか、火星田マチ子的な自分本位と捉えるか。

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