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ふるさと納税8000億円突破!開始から14年間で件数が825倍に

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 21年度のふるさと納税額が大幅に増加した。総務省が7月29日に発表した「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、前年度比で納税額は23.5%、納税件数は27.5%増加した。https://www.soumu.go.jp/main_content/000827748.pdf

 21年度のふるさと納税受入額は前年度比1577.5億円増加し、初めて8000億円を突破、
8302.4億円となった。件数も同958.5万件増加し、初めて4000万件を突破、4447.3万件となった。(表1)

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 08年度にスタートしたふるさと納税制度は、08年度の納税受入額81.4億円、件数5.4万件から14年間で、受入額が約100倍、件数が825倍にまで膨らんだ。背景には、13年度頃から納税に対する返礼品ブームが起き、返戻品目当てでの納税が大幅に増加したことがある。

 ふるさと納税は納税額(寄付金額)から自己負担分の2000円を差し引いた額が控除される仕組みだ。控除は所得税からも行われるが、多くは住民税からとなる。

 22年度のふるさと納税における住民税の控除額は、前年度比1239.5億円(28.0%)増加し、初めて5000億円を突破し、5672.4億円となった。控除を受けた人数も、同176.5万人(31.3%)増加し、初めて700万人を突破し、740.8万人に達した。(表2)

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 21年度のふるさと納税受入額の上位都道府県を見ると、断然トップの1位は北海道で1217億4700万円となっている。北海道は納税受入額全体の約15%を獲得している。これは、受入額が最も少ない徳島県21億1100万円の約58倍になる。

 ふるさと納税には様々な問題点が指摘されてきた。そのひとつが、この受入額に大きな格差が生まれていることだ。

 返礼品により多くの受入額が集まる地方自治体もあれば、特産品などがないためにほとんど受入額がない地方自治体もある。特産品がないため、返礼品を商品券にする地方自治体まで現れた。さらに、受入額を集めるために過度な返礼品競争まで勃発した。大阪府の泉佐野市などは返礼品の基準などを巡り、国との裁判に発展した。

 政府は数度にわたりふるさと納税制度の見直しを行い、過度な返礼品競争に歯止めをかけようとしたが、地方自治体は未だに“手を変え品を変え”返戻品競争を繰り広げている。

 21年度の受入額上位の都道府県を見ると、北海道のほか、宮崎県、福岡県、鹿児島県、山形県などが名を連ねている。(表3)

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 地方自治体では、北海度の紋別市が152億7900万円を集めてトップだ。地方自治体の上位20位までに、北海道は紋別市、根室市、白糠町、弟子屈町の4市町が入っている。同じく2位の宮崎県も都城市、都農町の2市町が上位10位にランクインしている。

 こうした地方自治体は、本来の予算に加え、ふるさと納税の受入金が予算規模を大きく嵩上げしている。

 ふるさと納税は納税額(寄付金額)から自己負担分の2000円を差し引いた額が主に住民税から控除されることは前述した。この結果、住民税が減少する地方自治体が発生していることも、問題点の一つだ。

 22年度の住民税控除額が上位の都道府県を見ると、東京都が1428億7000万円と群を抜いている。東京都は本来納入されるはずだった住民税から1428億7000万円が減少したことになる。東京都の住民税控除額は22年度の住民税控除額全体の約25%を占めている。

 控除額の上位には、東京都のほか、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県などが名を連ねている。(表4)

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 地方自治体別で見ると、トップは神奈川県横浜市の230億900万円、次いで、愛知県名古屋市の143億1500万円、大阪府大阪市の123億5900万円、神奈川県川崎市の102億9100万円までが100億円を超える控除額となっている。

 東京都では世田谷区の83億9600万円を筆頭に、港区、大田区、杉並区、江東区、品川区、練馬区、渋谷区と上位20位までに8区が入っている。

 世田谷区の保坂展人区長は様々なメディアを通じて、ふるさと納税による住民税控除で、「世田谷区の事業計画に大きな影響が出てくる」と危機感を訴えている。

 国際的な人道支援活動や、ボランティア活動に対する寄付金も控除の対象になるが、返礼品などはない。だが、そもそもは、「ふるさとを応援したい」という気持ちから始まった寄付金であるはずが、「ふるさと納税」という形で“特産品の特売会”のような返戻品の過当競争を引き起こした。

 自分たちが居住している自治体の予算が、ふるさと納税によって、他の自治体に付け替わり、居住している自治体の行政サービスが低下する。こんな事態が現実に起こり始めている。

 ふるさと納税は返礼品という仕組みによって、日本人の善意や支援・援助という気持ちのあり方を歪めてしまったのかも知れない。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2022/08/13 06:00
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