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特別インタビュー

元NMB48 木下百花 × プロレスラー 坂口征夫──それぞれのタトゥーとアイデンティティ

エンタメの世界はタトゥーをどう捉えるのか

(撮影=川合穂波)

──東京2020オリンピック・パラリンピックでは、タトゥーのある外国人選手の活躍が目立ちました。その一方でプロボクシングでは、外国人選手はそのままリングにあがっていいけど、日本人の選手だけは白塗りしてタトゥーを隠さなければならいという矛盾が生じています。

坂口:井岡さんの試合ですね。ラウンドを重ねるごとにファンデーションが落ちて、タトゥー入ってます!隠してます!っていう過程が全て丸見えなので、試合よりもそっちの方が気になっちゃう人が多かったみたいで。オリンピックの柔道では、道着からバッとタトゥーが見えた瞬間ザワザワしてた人たちも、時間が過ぎていくとそんな声も聞こえなくなって。今年80歳になったうちの親父なんかも「今はそういう時代なんだな」って言ってて。タトゥーに対して考えの固い年齢層の人たちが、少しタトゥーを見慣れてきた感じがしますね。

木下:隠されたら、余計に気になりますよね。

***

 プロボクシングの試合における世界的な競技ルールに、タトゥーを禁止する項目はない。これは、日本ボクシングコミッション(JBC)の独自ルールに、日本人に限って「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」は試合に出られないという項目があることで生じている。それにより、世界チャンピオンであり、タトゥーのある井岡一翔選手は、試合のたびに物議を呼んでいる。

 今年7月に開催された、WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチでは、対戦相手であるフィリピン人のドニー・ニエテス選手の胸に立派な日本スタイルの刺青が入っていたことが話題になった。見た目こそ両者同じアジア系の選手だが、今のところ「なぜ日本人だけダメなのか?」との問いに明確な答えはない。

 また、隠せばOKという理由から身体にファンデーションを塗ることで、相手選手のグローブにファンデーションが付くことには問題がないのかも疑問が残る。

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──木下さんはメディアの自主規制が厳しいなって感じることはありますか。

木下:今はネットが主流ですし、私の場合だと特に不自由さを感じることはないです。テレビ番組に出たのも『アウト×デラックス』だし、現場も穏やかでまったく嫌な感じはなかったです。スタッフさんが気に入ってくれて次の出演依頼もあったくらいなので。

坂口:俺の場合、映画に出演すると刺青の絵を描く手間がないって重宝されます(笑)。

***

 ディーン・フジオカが企画・プロデュース・主演を務めたことで話題となった2022年公開の映画『Pure Japanese』は、チャンバラ、忍者、ヤクザ、女子高生、温泉、切腹、刺青などなど、日本映画へのふんだんなオマージュと共に「日本人らしさとは?日本人の定義とは一体何なのか?」という難題を突きつけられる異色のバイオレンス・アクション・ムービーだ。

 主要な登場人物はみな、それぞれの属性や感情による、それぞれの正義を貫いているのだが、見方を変えると全員が大なり小なりちょっとずつ狂っている。清濁併せ呑む社会において勧善懲悪のない、何十層にもおよぶ無限の問いが広がる。

 この映画で坂口はヤクザの組長を演じ、見どころとなるアクションシーンに華を添えるだけではなく、坂口の背中が物語の重要な鍵を握る。舞台挨拶の場でディーン・フジオカは、坂口の出演は映画の勝敗を分ける大きな要素だったと語っており、単にヤクザ=イレズミというだけの抜擢ではないことがわかるだろう。現在Amazon Prime Videoにて絶賛配信中なので、ぜひ確認してみてほしい。

***

──ファンの人から「自分もタトゥー入れたい」って言われたことはありますか。

木下:最近あったけれども、「何も言えん」って答えます。私はノリで入れれたけど、人それぞれやし、環境もわかんないから。私は入れるときに、自分が飽きたら全然消すだろうなとか思いながら入れたので、それのお金も蓄えてある。一応いろんなことを考えて入れた側だからこそ、いろんなことを考えたほうがいいのは? とは言います。会社勤めのお仕事とかしてる人とかは特に考えたほうがいいかもだけど、友達とかとは入れるんだったら水着着て見えるところとかかわいくない? みたいな話はしますね。ま、私は首からだったけれども。

坂口:興味を持って入れるにしても、気軽に入れるのか、重く受け止めて入れるのか、それもまた自分で決められますからね。そういう1つ1つの選択がタトゥーの楽しみ方であり、それぞれの生き方に繋がっていく。結局のところ自分で決めるしかないのだと思います。

──最後に、今後なにか新しいタトゥーを入れる計画はありますか。

坂口:地方に行くことが増えたので、その土地土地の彫師さんに彫ってもらうのが目下の楽しみです。2019年にDDTのニューヨーク公演があったのですが、試合後のオフ時間に買い物に出かけたら、コンビニみたいに沢山タトゥーショップがあったのでフラッと飛び込んで、お土産に記念のタトゥーを入れてきました。それが足の甲にある、ぽっちゃりボクサーです。

木下:かわいいー!

坂口:日本は日本の刺青文化があって、海外にもアジア圏や欧米などそれぞれのタトゥー文化があるので、機会があれば積極的にそういうものに触れてみたい。もし時間があるなら、タトゥーを入れることを目的としたタトゥー旅行もしてみたいかな。タイやインドとか行ってみたいです。

木下:テレビでも言ってない箇所に、実は内緒のタトゥーがあって、1個だけ。今は一応それだけで満足してます。

***

 近年、世界中で爆発的にタトゥーを入れている人口が増加し続けているなか、日本のみならずメディアにおけるタトゥーの扱いは国によってもさまざまに分かれるところである。

 例えば、ニュージーランドでは昨年、ゴールデンタイムのニュース番組のキャスターに、顔や手にタトゥーのあるマオリ族の女性が抜擢されたことが大きな話題となった。聖なる顎のタトゥーは「モコ・カウアエ」と呼ばれ、マオリ族の女性にとってアイデンティティの象徴であり、誇りを表している。外務大臣を務める女性議員にもこの「モコ・カウアエ」があることは有名だ。

 一方、近年ファッションとしてのタトゥーが流行している中国では、2018年に政府の方針として、テレビ番組でのタトゥーを入れた芸能人の起用を禁止した。それにより、タトゥーが入った芸能人は映像にモザイク処理がされるようになった。なお、モザイクは男性のピアスやイヤリングなどにも施されている。さらに、中国代表のサッカー選手にタトゥーを彫ることを禁止するなどの規制も強化され、タトゥーのある選手は隠すよう指示されたことにより包帯を巻いたり、長袖のユニホームを着用するなどして対応している。これらは、中国人らしさの強化が目的だといわれている。

 また、元大阪市長の橋下徹氏がラジオ番組にゲスト出演した際、自身の長女が彫師を目指していると語ったことは記憶に新しい。大阪市長時代に公務員のタトゥーを厳しく取り締まった橋下氏だが、現在は子どもたちから「時代の流れに合っていない」との指摘を受け、考え方を改めたという微笑ましいエピソードを明かした。

 新旧世代によって物議を醸すタトゥーだが、何かと話題になることこそ、入れる入れない、好き嫌いとは関係なく、私たちの生活に身近な存在であることを改めて感じるところである。

(取材・文=川崎美穂/撮影=川合穂波)

<木下百花ライブインフォメーション>
木下百花「とき・めき・秋、弾き語りツアー」
9/23(金)東京・下北沢ニュー風知空知Sold Out)
10/1(土)京都・紫明会館
10/2(日)愛知・名古屋sunset BLUE

各公演
開場17:30 / 開演18:00
料金3,500円(税込、ドリンク代別途必要)

ファンクラブイベント「悪いチェキ会」
9/23(金)東京・下北沢ニュー風知空知Sold Out)
10/1(土)京都・紫明会館
10/2(日)愛知・名古屋sunset BLUE

各公演
開場14:00 / 開演14:30
料金2,000円(税込、ドリンク代、チェキをご希望の方はチェキ代別途必要)
詳細:https://momoka-kinoshita.bitfan.id/

<坂口征夫インフォメーション>

「WRESTLE PETER PAN 2022」
会場:東京・大田区総合体育館
日時:8/20(土) 
開場12:30 / 開始14:00 
詳細:https://www.ddtpro.com/lp/18498

DDT真夏のビッグマッチ「WRESTLE PETER PAN」が今年も開催。坂口征夫は6人タッグマッチ試合に登場。HARASHIMA、岡谷英樹とタッグを組み、吉村直巳&梅田公太&奥田啓介組と対戦する。DDTの歴史が交差する注目の一戦だ!

レッスルユニバースでも独占生中継!<試合リンクはこちら!>

川崎美穂(編集者)

1973年、青森県出身。1996年より雑誌『BURST』の編集に携わり、1999年本邦初のタトゥー専門情報誌『TATTOO BURST』を創刊。雑誌が休刊する2012年まで編集長を務める。現在はフリーランスとして各種メディアのタトゥー企画を担当している。賛否はあれど、タトゥーは〝過去・現在・未来を知る〟貴重な情報媒体であるというのが持論。

Twitter:@koumebooks

かわさきみほ

最終更新:2022/08/19 13:00
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