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MACKA-CHIN×矢内絵奈『muon』が奏でた宇田川ラブストーリー

仕事はたった一回だけ、ご飯を食べる間柄でもなかった2人が…

――そもそもお2人の出会いというのは?

MACKA-CHIN Manhattan Recordsの仕事でTOKYO HEALTH CLUBと密に制作をするタイミングがあって、その対談取材の撮影が矢内さんだったんですよ。実は仕事はその一度きりで、普段からご飯を一緒に食べに行くとか、そんな間柄でもない。

――めっちゃファンなんですね。

MACKA-CHIN そう、めっちゃファンなの。

矢内絵奈 そのときマンハッタンに勤務していたんですが、社内仕事で撮影が必要なときは私が撮影することが多かったんですね。ちなみにマンハッタンの前はシスコで勤務していまして、その時代にマッカさんのA&Rの方と一緒に働いていた時期もありました。

 大学は作家か学校の先生になるしかなくて、当時は就職氷河期。不真面目な生徒だったので勉強より音楽に夢中でした。写真ももちろん好きだったのですが、アーティストが作り上げる音楽の世界観が好きで音楽に携わりたく、レコードショップで働いていたんです。

MACKA-CHIN なるほど! だから矢内さんの写真からは音楽を感じるのか。で、レーベルのA&Rが矢内さんともともとつながっていたこともあり、「アルバムのアートワークは矢内さんにお願いしたいんだよね」って話をしたら、「ああ、あの矢内さん?」みたいな感じ。完全に宇田川ラブストーリーでしょ、この流れ。

――それはきゅんきゅんしますね。

MACKA-CHIN でしょ? しかもTOKYO HEALTH CLUBの撮影で会ったのが2016年で、6年ぶりに矢内さんと仕事をする。僕のオリジナルアルバムも6年ぶり。で、バジェット確保のタイミングでDMを送るんだけど……9月30日15時半、「ご相談がありまして連絡先を知りたいのですが」とメッセージを送ったら、「あら?」とリアクションと共に電話番号を聞き、電話して口説きました。

MACKA-CHIN×矢内絵奈『muon』が奏でた宇田川ラブストーリーの画像4

――その時、どのようなオーダーがあったんですか?

矢内絵奈 「どのへんの写真が気になりますか?」と聞いたら、「雪山がいいです」とマッカさんから私が撮影した写真が送られてきたので、ひたすら雪山の写真をピックアップして送りました。

MACKA-CHIN ここで普通だったら「なんでその写真を持ってるの!?」って思うはずなんですけど、これがインスタの写真をダウンロードできるアプリの力です。

矢内絵奈 確かに(笑)。

MACKA-CHIN 矢内さんの撮る写真が、当時僕が制作していたアンビエントやきれいなハウスミュージックに合うかなと感じていたんですよ。なので構想は簡単だったって言ったけど、矢内さんの写真に影響を受けて作り始めたのは間違いない。いざ仕事ができると決まってからはレーベルのA&Rと予算を調整して、CDのブックレットは何ページ作れるか、8ページ作れる!? ならブックレットは矢内さんの写真集にできる! とかいろいろ考えながら。

MACKA-CHIN×矢内絵奈『muon』が奏でた宇田川ラブストーリーの画像5

――ちなみに『muon』というタイトルは?

MACKA-CHIN 矢内さんの言葉です。制作の打ち合わせに同席してもらったとき、「雪山は雪が音を吸収するので、極端な話をすると“無音”なんですよね」って話をされたんですよ。もうそこで決まっちゃったんですよ、タイトル。もはやインスパイアじゃないです、ラブ。

矢内絵奈 私は「本当に無音で行くのですか……!?」と(笑)。急にいろんな責任感じちゃいました(笑)。

MACKA-CHIN 昔から風景写真は大好物なんだけど、山の写真は俺でも撮れると思うんだ。でも、雪山(の内側)の写真は実際に登らないと撮れない。写真家・矢内絵奈しか見ていない世界を、写真というフォーマットで時間を止めて表現している。

矢内絵奈 そんなふうに言ってもらえるなんて……! 恐縮です。

MACKA-CHIN 真面目なことを言っちゃうと、僕はソロでヘンなことばっかりやってきてるけど、音楽に対して嘘はつかずやってきたつもりなんですよ。『muon』がこれまでと何が違うのかと言えば……人の意見を聞くようになったのかもしれない部分。難産とかブレてるとか散々言っちゃったけど、人生で一番世間に寄せた作品だとも思ってるんだよね。

 例えば、3ヴァース目を作らずに分数も短くした曲。ド頭からフックで始めて8秒で判断されるサブスクの時代ですから。でも……本心は「そんなのヤ!」なのよ、僕としては。DJプレイもやるから、いきなりメインじゃなく、ゆっくり体に浸透させていってフロアを高揚させたいじゃない? でも、今の時代はショートカットの瞬発力が求められている。そういうのも必要なんだ。世間を意識した作品にしないと……で、出来上がった作品がこれだよ? 病気だよね、もう。でも、その“世間に寄せちゃった自分”にちょっとドキドキしてんの。聴いた感じ、流行に寄せた感じする?

――正直、寄せていると感じました。時代が味方してくれた、という見方もできるかと思います。

MACKA-CHIN 最近の話でいえばさ、デビューアルバム(『CHIN-ATTACK』/01年)に「適当強盗 a.k.a 春夏秋冬」っていうラップが入るまで2分半くらいのイントロがある曲なんだけど、それがSpotifyで人気曲になってたり、『静かな月と夜』をカセットテープでリリースしたときは「ビートアルバム最高です! これ、ローファイヒップホップですよね?」とか反響があったり。こっちは全然そんなつもりで作ってなかったんだけど、「え、もしかして時代がハマってきたの?」とかさ、自分が過去に好き勝手やってきたことが評価につながるのであれば、それは直接自信につながっちゃうよね。アルバム収録曲の「NOTV」の4つ打ちに関しても「ビヨンセも4つ打ちやってるし」とか、自分とビヨンセを比較するのはどうなんだとも思ったけど、「MACKA-CHIN、何やっちゃってんの?」って思われたい変態さが出ちゃうんだよね。

MACKA-CHIN「適当強盗 a.k.a 春夏秋冬」

MACKA-CHIN「NOTV」

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