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連載「クリティカル・クリティーク VOL.10」

次代を担うフィメールアーティストに光を当てるパーティ〈desktop〉

インターネットと現場が連動してシーンが盛り上がる

次代を担うフィメールアーティストに光を当てるパーティ〈desktop〉の画像4
PARK KING BABIES

――国内アンダーグラウンドで、それらパーティが熱気を帯びていてサンクラとも連動しながらひとつのシーンを作り出していますが、皆さんが今の状況につながる源流として捉えている動きというのはどのあたりになりますか?

B:私はやっぱり断トツで〈TOKIO SHAMAN〉です。EBISU BATICAでやっていた2018年の1回目から行っていますけど、自分はそのときにMinchanbabyを観たくて行ったんですよ。ただ、パーティ自体にはめちゃくちゃハマるわけではなく、とにかく「なんかよくわからないけど今までにない空気だぞ?」というのは強く感じたのは覚えています。でも、気づいたら釈迦坊主とTohjiがあんなことになっていった。自分はそれまで、10代の頃は池袋のBEDとか渋谷HARLEMに行って王道のトラップを聴いていたんですが、〈TOKIO SHAMAN〉はそういったヒップホップの流れも汲みつつ、明らかに新しいイベントだった。ロン毛の細い男性もゴスロリの子も普通にお客さんとして来ていましたよね。でも、それって今〈Demonia〉や〈BEATCHILD〉、〈Y.O.L.O〉では普通じゃないですか。そう考えると、やはり〈TOKIO SHAMAN〉がブレイクスルーだったのかなと思います。(註:〈BEATCHILD〉〈Y.O.L.O〉ともにヒップホップを中心としたイベント。オーセンティックなラッパーからミクスチャー~ハイパーポップ寄りのラッパーまで広く紹介している。

A:そこに別の観点でもうひとつ加えるとしたら、 新宿LOFTを拠点にして起こった東京アンダーグラウンドの動きじゃないですかね。NATURE DANGER GANG、Have a Nice Day!とかあの周辺のバンドが新宿を中心とした小箱とともにシーンを作っていたのが、2012 – 2013年くらいからだと思うんです。あれがあったからこそ、大阪では〈世紀末〉(註:デジタルユニット・VMOが大阪心斎橋CONPASSにて行うパーティ。22年10月には〈desktop〉とのコラボイベントも開催)というパーティが生まれた。

B:そこまでさかのぼるなら、自分は秋葉原ディアステージの存在が大きかった。秋葉原MOGRAもそうですけど(註:ディアステージ、MOGRAともにアニソンやボカロ曲、電波ソングといったオタクカルチャーの音楽を中心に発信するイベントスペース)。クラブシーン然り、2012年~2014年のでんぱ組.incとかのアイドルブームって、オタク層だけではないファッションの人たちも含め一気にアイドルカルチャーになだれ込んでいった。

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ぱちぱちコズミックコンピューター!

――2012年というと、ちょうど10年前ですよね。いわゆる王道のヒップホップだと、例えばAKLOが人気で、いわゆるミクステ時代です。そのときにアイドルカルチャーの流れで今おっしゃったようなシーンが生まれ、一方で恐らくMaltine Recordsとかの流れも踏まえながらいろんな潮流が10年後に出会ってハイパーな文化を生んでいるということになりますね。で、それらのひとつの象徴として〈TOKIO SHAMAN〉があったと。そうしてこれまでさまざまな音楽を楽しんできて、いま国内のクラブカルチャーやパーティカルチャ―に対して思うところはありますか?

C:海外のクラブは飲みに行く場所だったりしますよね。みんなで飲んでて、普通に2軒目でクラブ行こうか、みたいになる。日本だとやっぱりそうはならない。

A:普通に飲み屋に行ってる大人がクラブに行くようになれば面白いのに、とは思います。自分もロンドンやパリに住んでいたときに、パブにいる人たちがその後クラブに行くという流れをたくさん見てきたんですよ。そういう文化が日本にもあったらいいのにって。

――日本は、クラブに対する決まりきった負のイメージがこびりついてしまっているところがありますよね。そういう意味で〈desktop〉は既存のクラブにはないフラットな空気を感じます。

B:クラブが苦手な人が来てたとしても「これだったら次も行きたいね」と思ってもらえるような場にしたいんです。今後人が増えても、今のピースフルな空気をちゃんと守れるようにしたい。

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Minchanbaby

――〈desktop〉は、「パーティシーンに対するジェンダーバランスの偏りへの問題提起」をしつつも、女性だけに限らないブッキングをしている点も興味深いですね。というのも、自分はそこに男女二元論ではない包括的な視点を感じるからです。それこそ、霊臨(TAMARIN)やMinchanbabyはじめ男性も出演されつつ、その人選には強い意思を感じます。

B:男性だったら、自分たちの思想や意図をきちんと汲んでくれる人をブッキングしたい。霊臨(TAMARIN)はそういう発言を意識的にしていますし、Minchanbabyはこれまで若い人を多くフックアップしてきたし女性アーティストともコラボをしてきました。

――今後〈desktop〉をどのように発展させていきたいと考えていますか?

B:今までラップシーンで支持を得てきた女性アーティストって、どうしても特定のイメージに偏っていた。もっといろいろな人がいるんだよということを伝えていきたいです。けど、ジェンダーは男女だけではないし、性別二元論を強める形になってはダメだとは思っていて。いろんな人の意見を聞いて考え、イベントに反映していきたいです。あと、音楽好きな知人がパーティに来てくれたときに「シーンを作ろうとしている気概を感じた」と言ってくれたのがうれしくて。そう思ってもらえたのであれば、ちゃんと意識的に作っていかないといけないなって。

A:だからこそ、似た考えを持つパーティが増えてほしいですね。ロックに近いシーンだとPvriが主催し、Ms.Machineのメンバーも出ていた「ANTHEM」とかもありましたし、いろんな領域でそういう動きがどんどん起こってほしいです。

Photo by Kira

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desktop2023年2月19日(日)
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つやちゃん(文筆家/ライター)

文筆家/ライター。ヒップホップやラップミュージックを中心に、さまざまなカルチャーにまつわる論考を執筆。雑誌やウェブメディアへの寄稿をはじめ、アーティストのインタビューも多数。初の著書『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』(DU BOOKS)が1月28日に発売されたばかり。

Twitter:@shadow0918

つやちゃん

最終更新:2023/01/03 21:00
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