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社会がみえる映画レビュー#11

映画『search/#サーチ2』の「全画面伏線アリ」は言い過ぎじゃなかった…

映画『search/#サーチ2』の「全画面伏線アリ」は言い過ぎじゃなかった…の画像1
C)『search/#サーチ2』

 4月14日より映画『search/#サーチ2』が公開されている。結論を先に申し上げておくと、本作はべらぼうに面白い! 観る人を選ばない抜群のエンターテインメント性に満ち満ちており、自信を持っておすすめできる。

前作を観ていなくても、予備知識ゼロでもOK

映画『search/#サーチ2』の「全画面伏線アリ」は言い過ぎじゃなかった…の画像2
C)『search/#サーチ2』

 邦題に「2」とあるように、本作は2018年公開の『search サーチ』の続編。だが、物語は独立しているので、そちらを観ていなくてもまったく問題なく楽しめる(今回の原題は「Missing」)。

 それでいて、前作を観ている人であれば、「パワーアップした」「二番煎じにならない」続編としての工夫やアイデア、さらに進化した映像表現に舌を巻くだろう。また、PG12指定がされているが、それは20歳未満の者の飲酒の描写のためであり、直接的な残酷描写や性的な表現があるわけではない(ただし恐怖を煽る場面はある)。

 そして、本作はネタバレなしの紹介が難しい。複雑な謎を解き明かすミステリー要素こそが重要なため、結末だけでなく過程を話すだけでもネタバレになりかねないのだ。一方であらすじおよび主人公の目的はシンプルでわかりやすいため、「超面白いので観てください!」だけで終わりにしたいくらいなのだが、そういうわけにもいかないので、核心的な部分に触れずになんとか魅力を紹介してみよう。

主人公はSNSを使いこなすデジタルネイティブ世代

映画『search/#サーチ2』の「全画面伏線アリ」は言い過ぎじゃなかった…の画像3
C)『search/#サーチ2』

 本作の内容は「インターネットおよびSNSを駆使して行方不明の母を探す」と、まさにシンプル。前作は「100%すべてPC画面上の映像で展開していくサスペンススリラー」というキャッチーかつ挑戦的なコンセプト通りでありつつ、極めて正統派な謎解きの面白さが詰まった内容が高い評価を得ており、今回はその魅力を引き継ぎつつ、さらにスピード感が増している。

 その理由の1つが、前作の主人公が「娘を探す中年男性」だったのに対し、今回は「母を探す18歳の女性」になっていること。前作の主人公はSNSをよく知らないため、手探りで娘の足跡を追う「ぎこちなさ」もまたスリリングだったのだが、今回の主人公は打って変わってSNSを器用に使いこなす「デジタルネイティブ世代」の若者へと変わっているというわけだ。

 そのため、複数のSNSやアプリをほぼ同時並行でチェックするなんてことはお手のもの。それに伴って、今回はPCだけでなくスマホの画面が映し出される場面も多くなっている。さらには、スマホの位置情報、監視カメラ、銀行の出入金記録など、ありとあらゆる手段を講じていく。

 「全てが(PCまたはスマホの)画面上で展開する」ことは謎解きに必要な情報をギュッと凝縮することに結実しているし、デジタルネイティブ世代が次々にSNSを駆使する様がリアルかつスピーディな編集の映像にそのままシンクロしている様は、それだけで面白い。

 ちなみに、今回の物語の種となったのは「母を空港で出迎える少女のイメージ」だったという。劇中で主人公は母を出迎えるボードを持つ自分の姿を、離れた場所に置いたスマホで撮っているのだが、これはTikTokに投稿するために考えたイタズラだったそうだ。もちろん母が現れないためこのイタズラは不発に終わるのだが、そうしたところでもデジタルネイティブ世代らしさが表現されているのもまた興味深い。

安楽椅子探偵の女性と、冴えないおじさんがバディを組む

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C)『search/#サーチ2』

 ミステリーによくいるタイプの探偵に、事件現場に赴くことなく、見聞きした情報から謎を推理し解決へと導く「安楽椅子探偵」がある。この『search/#サーチ2』の主人公も、母が異国の地コロンビアで行方不明になったということもあって、自室からほとんど出ず、PCやスマホから情報収集および推理をしているという点で、安楽椅子探偵の一種であるし、今の時代ならではの探偵と言ってもいい。

 そんな安楽椅子探偵には、現場で足を使って捜査をする協力者というか相棒が必要なのだが、本作では「代行サービス業をしていた冴えない中年男性」が相棒というのも面白い。彼は公開されている顧客からの評価は低く、英語もたどたどしく、やる気もあまりなさそうという有様なのだが、それでも2人は次第にお互いを信頼していき、時には仲違いをしてしまったりもする。

 今まで縁もゆかりもなかった、利発な18歳の女性と、何から何までダメそうなおじさんが一蓮托生な関係に、いや奇妙な友情が芽生える様は尊い。「年齢も性別も今いる場所も(!)異なる者同士のバディムービー」という側面も持っており、それはデジタルネイティブ世代の安楽椅子探偵という設定があってこそのものだ。

3つのポイントが見事に結実した衝撃の展開

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C)『search/#サーチ2』

 それ以外のことは何を言ってもネタバレ! というくらい、どんでん返しにつぐどんでん返し、息つく暇もないジェットコースタームービーなのだが、いたずらに観客を振り回すだけでなく、プロットは計算し尽くされているということも重要だ。

 あらゆる場面に、ミステリー好きこそがニヤニヤしながら推理ができるであろう、真相に辿り着ける「ヒント」や、安易な予想を外してくる「ミスリーディング」が仕込まれている。「謎が解けた!気持ちいい!」という快感や、はたまた「騙された!悔しい!」という良い意味での裏切りも含めて楽しめるだろう。「全画面伏線アリ」という、それはいくらなんでも言い過ぎだろうと思ってしまうキャッチコピーも、なるほど伊達ではない作りになっているのだ。

 ギリギリネタバレにならない範囲で、前作の二番煎じにしない工夫およびアイデアを言うのであれば、「母の度を超えた過保護ぶり」「前作のとある要素こそがミスリーディング」「アメリカという国ならではの制度」の3つのポイントが見事に活かされている、ということにもある。

 その3つのポイントが見事に結実した、衝撃的な展開は悲鳴をあげてしまいそうなほど恐ろしく、それからのスリリングな展開も手に汗を握り、そして前作と同様の「家族愛」そのものをストレートに提示したドラマにもまた感動があった。

 あえて不満点を言えば、そのどんでん返し部分に至るまでの、とあるミスリーディングに当たる要素の配分がやや多く、少しバランスに欠いた印象もあることだろうか。だが、実際にある捜査の過程でも「思い込み」から的外れなことばかりに気が向いてしまうこともあるだろうし、そのミスリーディングもまた感動につながっているので、大きな欠点ではないはずだ。

 そして、驚きの展開のつるべうちだと思っていたところに、クライマックスにはまたもう一段上の、「映像」そのもので気持ち良く騙してくれるトリックが仕込まれていた。そこにも、「全てが(PCまたはスマホの)画面上で展開する」コンセプトがしっかりと生きていたのだ。ぜひ、これから観る方は、作り手が用意した凝りに凝ったミステリーを解き明かすかのような「頭脳戦」に挑戦してほしい。

『search/#サーチ2』4月14日(金)全国の映画館で公開
原題: MISSING
監督・脚本:ウィル・メリック&ニック・ジョンソン(前作『search/サーチ』編集)
原案:セヴ・オハニアン(前作『search/サーチ』脚本・製作)&アニーシュ・チャガンティ(前作『search/サーチ』監督・脚本)
製作:ナタリー・カサビアン、セヴ・オハニアン、アニーシュ・チャガンティ
出演:ストーム・リード(ジューン役/ドラマシリーズ「The Last of US」、「ユーフォリア/EUPHORIA」)、ニア・ロング(グレイス役)、ヨアキム・デ・アルメイダ(ハビ役/『ワイルド・スピード MEGA MAX』)、ケン・レオン(ケヴィン役/TVシリーズ「LOST」)、ダニエル・へニー(パーク捜査官役/TVシリーズ「クリミナル・マインド」)
<上映時間:1時間51分>

ヒナタカ(映画ライター)

「ねとらぼ」「cinemas PLUS」「女子SPA!」「All About」などで執筆中の雑食系映画ライター。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』。

Twitter:@HinatakaJeF

ひなたか

最終更新:2023/04/21 10:25
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