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芸人として天才の域にいるハチミツ二郎、松田大輔と組む前の「東京ダイナマイト」

芸人として天才の域にいるハチミツ二郎、松田大輔と組む前の「東京ダイナマイト」の画像1
所属事務所ウェブサイトより

 皆さんは「若手芸人」というと何歳くらいの芸人を思い浮かべるだろうか? 僕が芸人をしていた15年くらい前は、やはり20代であまり露出していない芸人を「若手芸人」と呼ぶイメージがあったが、年々若手芸人の年齢が上がっており、ここ最近だと年齢ではなく露出度や知名度によって若手芸人と呼ばれる傾向にある。

 つまりある程度の知名度がなければいつまで経っても若手芸人であり、いくつになっても若手芸人扱いなのだ。今は芸人を目指す人達も増加しているので、売れない芸人はとことん売れず、日々若手芸人の平均年齢が爆上がりし続けているのだ。

 平均年齢が上がると、楽屋でのトーク内容も変わってくる。20代がメインだった楽屋の場合、基本的にはお笑いの話、女性の話、お金の話など分かりやすく芸人然とした話をしていたのだが、現在の若手芸人の楽屋では、体調や健康面、保険の話など身体的衰えの話をする割合が増えている。

 現に若手芸人の体調不良や健康状態が悪化しているというニュースやツイートは年々増えており、つい最近もとある芸人が手術をしたというニュースが流れた。そのとある芸人とは「東京ダイナマイト」のハチミツ二郎さんだ。

 二郎さんはTwitterで、自身が都内の病院で腎移植手術を受けたことを発表。なんとドナーは二郎さんの母親だった。「東京ダイナマイト」さんは芸歴16年以上の芸人が競い合う「THE SECOND」に参加を表明していたのだが、体調不良により出場を辞退した。その理由が上記の手術だったのだ。

 Twitterには

「1年前から準備して都内病院で腎移植手術を行いました。ドナーは母親でした。が、手術は上手くいきませんでした。2/22~3/7まで2週間と言われていた入院が退院まで6週間以上掛かってしまい、THE SECONDも欠場となってしまいました。来年もあるなら真っ先にエントリーさせていただきます」

と綴った。

 二郎さんは昔から病気やケガで悩まされているイメージがある。古くは椎間板ヘルニア等で腰を痛めて杖をついていた時代があったり、2018年には急性心不全、呼吸不全で入院したり、2020年末にはコロナウイルス感染症に罹患し、一時危篤状態に陥り、1ヶ月間入院するなど、二郎さんにとっての大きな災いを何度も乗り越えてきた。なので二郎さんはある意味運が悪くて、とても運が良い人なのではないだろうか。

 運といえば、二郎さんが、というより「東京ダイナマイト」がここまでメジャーな芸人になるとは正直思っていなかった。それは最初の出会いの印象的だったからだ。

 二郎さんとの最初の出会いは、テレビ朝日主催で行っていた「東京腸捻転」というライブの前身の「鎌田くすくすお笑いライブ」だった。当時の「東京ダイナマイト」は二郎さんが社長を務めるインディーズ事務所に所属しており、二郎さんの相方も今の松田さんではなく、曽根卍さんという方だった。

 うろ覚えだが、二郎さんは金髪で、曽根卍さんはモヒカンといういで立ちで、ネタもポップなものではなく、少し破天荒なネタだった。なので比較的キワモノ感が強く、日の目を見ることが難しい典型的なインディーズ芸人という印象だった。その後、ライブなどで一緒になる機会があったが、特に仲良くなることもなく、気が付くと曽根卍さんがいなくなり、当時ピン芸人だった松田さんが相方となって新生「東京ダイナマイト」が結成され、そこからあれよあれよという間にメジャー芸人の仲間入りを果たした。

 そして僕たち「ホーム・チーム」と「東京ダイナマイト」は数年の時を経て「完売劇場」(テレビ朝日系)という番組でレギュラーになり、親交を深めていった。まあ親交を深めるといっても、元々人見知りな僕と、独特な雰囲気を纏っている二郎さんとではプライベートで遊ぶような関係にはならず、同じ番組をやっていないよりは仲良くなったという程度の親交の深さであった。

 今思えば、僕が芸人らしい人がとても苦手だったというのも親交を深めきれなかった原因のひとつだろう。この場合の芸人らしいというのは、良い意味で何を考えているかわからない人のことを指す。何年か一緒に番組をやらせてもらったが、話せば話すほど二郎さんが何を考えているかわからないということが多々あった。ものすごく思慮深いような何も考えていないような。その独特な二郎ワールドの全貌が見えないし、にこやかな目の奥にある変人の匂いが恐怖で僕はイマイチ踏み込むことが出来なかったのだ。たぶん二郎さんは芸人として天才の域におり、僕のような一般芸人には理解し難かった。

 松田さんという強力な相方を手に入れポップな「東京ダイナマイト」になったとはいえ、ハチミツ二郎という芸人はやはり一筋縄ではいかず、事務所を転々としたり、IT企業に正社員として入社したり、「二郎貝」というオンラインサロンを開催したり、普通の芸人とは一味違う路線で突き進んでいる。

 昔は奇抜な思考でカルト芸人のような立ち位置だったが、今はその思考が時代にマッチして、最先端の思考を持つ芸人になったといっても過言ではない。果たして次はどのような「東京ダイナマイト」、「ハチミツ二郎」の進化した姿を見せてくれるのか。同世代を駆け抜けた芸人として、とても楽しみである。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/04/20 11:00
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