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『M-1』敗者復活戦“ネット投票”の不公平感 トレンディエンジェルが明かした裏側

トレンディエンジェル&メイプル超合金が初来店!同じ年のM-1でブレイクしたコンビの葛藤とは? | TVer

『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)当日が近づくと、毎年話題に上がるのが、敗者復活戦の審査システムだ。2015年の『M-1』復活以降、敗者復活戦は視聴者によるネット投票によって勝者が決められている。これにより、ネタのクオリティやウケ量よりも、テレビでの知名度が高いコンビに有利に働いているという批判が絶えないのだ。

 1日に放送された『あちこちオードリー』(テレビ東京系)に、その15年『M-1』で敗者復活から優勝を果たしたトレンディエンジェルが、同年の『M-1』でトップバッターだったメイプル超合金とともに出演。その敗者復活戦の裏側を明かしている。

 トレンディエンジェル・たかしは「正直、敗者復活で上がると思わなかった」と当時を回顧。「イチウケかといわれれば微妙だった」と告白し、ネタ後、決勝に向けてネタ合わせをしていなかったと語った。

 また、相方の斎藤司は敗者復活組にテレビに出ている芸人がナイツくらいしかいなかったことを挙げ、ネタは「8番目くらいのややウケだった」ものの、審査がネット投票であることから「知名度で(決勝に)いくぞ」と思っていたという。

 トレンディエンジェルは、この『M-1』の2年前に『オンバト+』(NHK総合)で3代目チャンピオンを獲得。前年の『THE MANZAI』(フジテレビ系)でも博多華丸・大吉に続く2位となっており、すでにその知名度は全国区。結果、トレンディエンジェルは3万9,753票を獲得して敗者復活を果たした。2位のとろサーモンは2万3,916票であり、倍近くの差をつけている。

 客観的に見て敗者復活戦のトレンディエンジェルが「8番目くらいのややウケ」だったというのは相当の謙遜が入っているが、ここまで票数が開くほどの差があったかといえば、やはり疑問符が付く。また、敗者復活3位だったナイツは、土屋伸之が「俺ら東京さ行ぐだ」を朗々と歌い切り、塙宣之が歌詞にツッコむというネタを披露したが、権利上の問題で配信されたネタの大半がカットされている。大きな不利となる事態だったはずだが、2万3,742票を獲得している。これも「ネタよりも知名度優先」の状況を示す事実といえるだろう。

 その後も、毎年のように視聴者投票の是非が議論される事態は起こっている。

 18年の敗者復活では、プラス・マイナスが大爆発を起こし、勝ち抜けは誰の目にも明らかだと思われた。だが、結果は前年の『M-1』で決勝に進み、ブレークを果たしていたミキとの接戦に敗れ、2位に。プラス・マイナスはこの年、ラストイヤーだった。

 20年には、こちらも前年の『M-1』決勝をきっかけにブレークしていたぺこぱが敗者復活戦に出場。松陰寺太勇いわく「めっちゃスベった」ものの、投票では3位に。後に松陰寺は「知名度だけで3位まで残っちゃって。選ばれてたら絶対炎上してただろうと思って、ホッとした」と明かしている。昨年の敗者復活戦も、通過したオズワルドより2位の令和ロマンのほうがウケていたという声が少なくない。

 実際、知名度のない漫才師にとっては、決勝の9組に残らなかった時点で敗戦ムードが漂っているのが現状だ。

 一方で、『M-1』当日の夕方から生放送される敗者復活戦は本大会を盛り上げる上での重要なコンテンツであることは間違いないだろうし、見ている側としても、夢舞台に気に入った芸人を送り出す投票行為は、それはそれで大変に楽しいものでもある。個人的なことを言えば、去年は確か、令和ロマン、ヤーレンズ、ケビンスに投票したと記憶しているが、「まあオズワルドだろうな」と思っていたことは自白しておきたい。

 結局のところ、『M-1』という大会が大きくなり、一部のお笑いファンだけでなくライトな視聴者が投票に参加すればするほど、不公平感は大きくなっていくしかないだろう。視聴者投票システムを続ける限り、当時のサンドウィッチマンやオードリーのような無名芸人が敗者復活を勝ち上がるドラマは決して生まれない。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2023/11/16 15:13
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