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『TOKYO TRIBE』公開記念インタビュー

園子温監督の“青の時代”はすでに終わった!?「僕には憎悪のエネルギーはもうありませんよ」

tokyotribesono01.jpg「今年は3本、来年は5本の映画を撮る!」と豪語する園子温監督。さらに作家、タレント、ミュージシャン……と多彩な活躍を見せている。

 4時間の超大作『愛のむきだし』(09)、実在の連続殺人事件を題材にした『冷たい熱帯魚』(11)、染谷将太と二階堂ふみにベネチア映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞をもたらした『ヒミズ』(12)等など、問題作・話題作を次々とヒットさせている園子温監督。今や世界でもっとも忙しい映画監督といっていいだろう。園監督の大ブレイクは長年のファンにとってうれしい反面、ここ数年の作風の変化に戸惑いも感じているのではないだろうか。黒い帽子にボーダーシャツというおなじみのファッションも見なくなってしまった。はたして園監督はどこに向かっているのか? 『TOKYO TRIBE』の劇場公開を控え、多忙さを極める園監督にそのへんのことを含めて、ぶっちゃけて聞いてみた。

 『TOKYO TRIBE』は1990年代に発表された井上三太原作の伝説的コミック『TOKYO TRIBE2』の実写化。近未来のトーキョーを舞台に、池袋を牛耳るブクロWU-RONZのボス・メラ(鈴木亮平)、ムサシノSARUのメンバーである海(YOUNG DAIS)らがストリートファイトを繰り広げるアクションエンターテイメントだ。『アナと雪の女王』の感動を上回る“バトル・ラップ・ミュージカル”を謳っている。NHK連続テレビ小説『花子とアン』で注目度が急上昇中の鈴木亮平と北海道を拠点にした現役ラッパーYOUNG DAISのダブル主演作で、ヒロインの清野菜名はキレのあるアクションとパンチラも披露している。園監督らしいカオティックな世界が広がる作品だ。

──園監督は以前は『愛のむきだし』をはじめとするオリジナル作品にこだわってきたわけですが、『TOKYO TRIBE』は『ヒミズ』に続くコミック原作の映画化。オファーを受けた経緯について教えてください。

園子温 『ヒミズ』のときは、僕から「一度コミックものの映画化をやってみたい」と切り出したんです。それで先方が提案してきた原作があんまり面白くなかったんで、それなら『ヒミズ』をやりたいと自分で進めた企画でした。だから、最初から『TOKYO TRIBE』の映画化を持ち掛けられた今回とは事情が異なるんです。それで『ヒミズ』の後、テレビ東京で『みんな!エスパーだよ!』をやったんです。これが僕にとっての最初の原作つきのオファーでした。最初は「えっ、これ?」と思ったけど、やっているうちに「なるほどな」と思えてきて、面白くなってきた。で、その次に来たのが『TOKYO TRIBE』。確かに原作は面白いんですよ。でも、僕はストリートファッションとかヒップホップとか分からない。これは無理だなと思いました。

──『TOKYO TRIBE』は井上三太さんの独自の絵のタッチがあってこその完成された世界ですからね。

 そう。でも、三太さん自身が言ってたんですが、「ヒップホップやストリートカルチャーをリスペクトしている人が映像化するとシラけたものになる」と。確かにそうだなと思ったんです。フランシス・F・コッポラ監督はマフィアが嫌いで、『ゴッドファーザー』(72)を撮るのが嫌だったそうです。『仁義なき戦い』(73)を撮った深作欣二監督もヤクザが好きだったわけじゃない。マフィアやヤクザをリスペクトした人が映像を撮ると、裏社会の美学にこだわり過ぎてかっこ悪くなる。以前から僕には、“距離感があって醒めた目で撮るからこそ面白いものが作れる”という理論があるんです。その理論に従えば、ラッパー自体にそれほど興味を持たなくてもいいんだということになる。それでヒップホップについて勉強するのは今回はやめました。

──完成披露の際に「この話は断ろうと思っていた」と園監督は話していましたが、企画当初はさほど乗り気じゃなかったわけですね。

 うん、本当にどうしようかなと思った。そんなとき、今回出演してくれたラッパーたち全員に会う機会があったんです。練マザファッカーとか実在するんですよ。新宿とか渋谷にもそれぞれのエリアに族がいる。リアルに凶暴な人たちで、会ってみたら「面白い!」と思ったんです。役者を使うよりもリアルな不良たちをそのまま映画に出したほうがストリート感が出るだろうなと。それだったら、実際のラッパーたちがやるラップミュージカルにしちゃおうと。そいつはいいなと思えてきたんです。『爆裂都市』(82)や『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)みたいに、街はオールセットにしちゃおうと。そこまで考えたら、めちゃめちゃ楽しくなって、面白いものができそうな気がしてきた。

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