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ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

コスプレだけじゃない! “少女おばさん” 安達祐実が名バイプレイヤーとして再浮上

『家なき子』でブレークした安達は、その後も『ガラスの仮面』(同)等のドラマに出演し、女優として高い評価を獲得する一方、20代に入ると仕事が減っていく。

 人気子役は成長すると“子役の壁”に直面する。

 子役の壁には2種類ある。ひとつは肉体が成長することで、子役の頃のイメージとズレてしまうこと。もうひとつは逆で、年齢を重ねても子役時代の面影が残ってしまい、過去のイメージが強すぎて、大人の役が演じられなくなるということ。

 安達の場合は後者だった。当時の事務所が4番手5番手の役では出さないという方針だったこともあり、女優としての仕事が減っていく。

 20代の安達は、子役時代のイメージから脱却を図ろうとするものの、その糸口がつかめずにいた。転機となったのは30歳の時に出演した、東村アキコの漫画をドラマ化した『主に泣いてます』(フジテレビ系)だ。

 本作で彼女が演じたのは、大学教授の妻・青山由紀子ことゆっこ。夫の愛人をなじる姿は壮絶で、漫画的でありながら狂気を感じさせる怪演だった。

 本作以降、安達の演じる役柄は“少女おばさん”とでもいうような、彼女にしか演じられない独自の存在へと変わっていき、脇で印象的な存在感を見せる女優として再浮上していく。

 最近、『しゃべくり007』(日本テレビ系)に出演した際には、セーラー服姿を披露してかわいいとSNSで話題になった。昨年放送された『女囚セブン』(テレビ朝日系)では無銭飲食で捕まった女囚を演じ、回想シーンでセーラー服を披露している。これも30代には見えないと評判になった。

 20歳を過ぎても童顔で中学生にしか見えないグラビアアイドルが、合法ロリと呼ばれることがあるが、すでに二児の母である36歳の安達を言い表すのに、これ以上適切な言葉はないだろう。

『家なき子』の頃から、子役離れした大人っぽさが安達にはあり、それがすごみのある演技につながっていた。現在は逆に、30代でありながら、繊細な少女性が演技の中からにじみ出ている。

 再ブレークを果たした安達は、子役時代を否定するのではなく、積極的に引き受けることで、“子役の壁”を見事、乗り越えたのだ。

 最後に、そんな安達の魅力が一番あふれているコンテンツを紹介したい。オフィシャルフォトギャラリー(http://yumiadachi.com/)で発表している、夫の桑島智輝が撮影している写真だ。日常生活の何げない瞬間を切り取ったスナップ写真には生々しさと透明感があり、少女おばさんとしての安達の魅力が炸裂している。

(文=成馬零一)

 

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2018/06/14 10:10
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