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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.514

“男はつらいよ”がボリウッド映画になった!? 感涙作『バジュランギおじさんと、小さな迷子』

 インドの人気俳優サルマン・カーンは、アクション映画『タイガー 伝説のスパイ』(12)でも本作を撮ったカビール・カーン監督とタッグを組んだ。『タイガー 伝説のスパイ』はサルマン・カーン扮する凄腕のスパイ・タイガー(寅さん)が、パキスタンの女スパイと禁断の恋に陥るというラブロマンスものだった。印パ戦争やカシミール紛争など争いが絶えない隣国パキスタンとの政治問題を、一般市民レベルでより掘り下げて考えてみたのが『バジュランギおじさんと、小さな迷子』だと言えそうだ。

 もともと宗教は慈悲の心で他者と接することを説いていたはずなのに、いつの間にか神さまの呼び名の違いや形式の違いを咎め、争いが起きるようになった。ヒンドゥー教の熱心な信者だったバジュランギが、イスラム教徒のシャヒーダーと仲良くなったように、もっと大らかでズボラでもいいんじゃないだろうか。インド版『男はつらいよ』を見ながら、そんなことを考える。

 マッチョなアクションスターとして人気だったサルマン・カーン。本作でもインド相撲クシュティーを披露する場面があるが、これまでとは違った父性を感じさせる抱擁力のあるキャラクターに挑戦した。困っている人、泣いている子どもを見つけたら、自分のことは後回しにしてしまうイノセントな存在だ。サンマン・カーンやカビール監督が、『男はつらいよ』を観たことがあるかどうかは分からない。でも、寅さんが旅先でバジュランギおじさんと出逢ったら、きっと言葉の壁を軽~く乗り越えて意気投合し、朝まで呑み明かすことだろう。騒ぎすぎて、とんでもないことになるはずだ。『男はつらいよ』の公開50周年となる2019年正月に、インドから粋な客人が現われたことを歓迎したい。
(文=長野辰次)

『バジュランギおじさんと、小さな迷子』
製作・監督・脚本/カビール・カーン
出演/サルマン・カーン、ハルシャーリー・マルホートラ、カリーナ・カプール、ナワーズッディーン・シッディーキー
配給/SPACEBOX 1月18日(金)より全国順次ロードショー
C)Eros international all rights reserved.C)SKF all rights reserved.
http://bajrangi.jp

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最終更新:2019/01/15 12:11
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