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週刊誌スクープ大賞

島田紳助騒動を思い出す……吉本興業の”闇営業”スキャンダルは「カラテカ入江切り」で収束するのか!?

 6月2日(日)に放送されたNHKスペシャル『彼女は安楽死を選んだ』にはショックを受けた。

 まだ51歳の小島ミナは「多系統萎縮症」という難病に罹っていた。これは小脳などの変性によって徐々に身体機能が奪われていく難病。

 四肢が動かせなくなり、言葉も話せなくなり、思考以外のすべての機能が奪われ寝たきりとなってしまう。

 現状では根治治療の方法はないそうである。

 このNスぺに協力したジャーナリストの宮下洋一がポストに手記を寄せている。彼には『安楽死を遂げるまで』(小学館)という著書があり、これで講談社ノンフィクション賞を受賞している。

「安楽死、それはスイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、アメリカの一部の州、カナダで認められる医療行為である。超高齢社会を迎えた日本でも、昨今、容認論が高まりつつある。しかし、実態が伝えられることは少ない。

安らかに死ぬ――。本当に字義通りの逝き方なのか。患者たちはどのような痛みや苦しみを抱え、自ら死を選ぶのか。遺された家族はどう思うか。

 79歳の認知症男性や難病を背負う12歳少女、49歳の躁鬱病男性。彼らが死に至った『過程』を辿りつつ、スイスの自殺幇助団体に登録する日本人や、『安楽死事件』で罪に問われた日本人医師を訪ねた。当初、安楽死に懐疑的だった筆者は、どのような『理想の死』を見つけ出すか」(Amazonの内容紹介から)

 宮下はメールアドレスを公開している。彼のところへ小島からメールが届いたのは去年の8月だったという。安楽死をするためにスイスへ行くと書かれていたそうだ。

「機能をほとんど失くし、人工呼吸器で息をし、話す事も出来ず、胃瘻で栄養を身体に送り込み、決まった時間にオムツを取り換えて貰い、そうやって毎日を過ごしたくはないのです。(中略)

 寝たきりになる前に自分の人生を閉じることを願います。私が私であるうちに安楽死を望みます」

 約1か月後、宮下は彼女が入院している病院を訪ねた。小島はこういった。

「私は死ぬことを自分の運命として操作したい。私の死生観は西洋的だと思う。欧米人は、自分の死に方を自分で決めるのは人権の一つだと考えるが、その考え方に惹かれる」

 新潟出身の小島は、韓国の大学に留学した後、韓国語の翻訳と通訳をしながら東京で約30年間暮らしてきたという。

 知的で、失礼ないい方になるかもしれないが、かなりの美人である。

 独身だが、彼女には姉が2人いる。3人のやりとりを見ていると羨ましいほどの仲のよさである。

 医師から告知を受けた後、長姉の家に移り住んでいる。だが、小島は何度か自殺未遂を繰り返していた。

 そして泣きじゃくりながら、「今しかないんだよ。今しかできないんだよ。もう私には力がないんだよ」といった。

 だいぶ前になるが、親しかった記者が末期がんになり、ホスピスに見舞いに行ったことがあった。

 彼は、骨と皮になりながらも、タバコが吸いたいから屋上へ連れていってくれといった。屋上に上がると四方には金網が張り巡らされていた。

 彼はこういった。

「もう自殺することも出来ないんだ。立ちあがることさえできないんだからな」

 それから1週間ぐらい後に亡くなった。

 小島と姉たちの間で、「安楽死」という話題が持ち上がった。

 姉たちは、自殺を思いとどまらせようという方便だったというが、それからも自殺未遂を繰り返す小島の気持ちを理解していったという。小島はこういったそうだ。

「たぶん私は、末期癌だったら安楽死は選んでないと思うよ。だって期限が決まっているし、最近なら緩和ケアで痛みも取り除けると言われているでしょ? でも、この病気は違うの。先が見えないのよ」

 小島はスイスにある自殺幇助団体「ライフサークル」の紹介を求めたが、宮下は、聞かれれば知っている事実を教えるが、判断もスイスへ行くことも自分でやってくれと断った。

 彼女は「私のような患者がいることを伝えて、安楽死の議論に一石を投じてほしい」と訴えた。

 NHKに仲介したのだろう。

「ライフサークル」は女性医師が11年に設立した団体で、年間約80人の自殺幇助が行われているという。

 自殺幇助を法的に認めている国はいくつかあるが、外国人にも適用しているのはスイスだけだそうだ。

 会員は1660人いて、日本人は19年4月現在17人だという。だがこれまで同団体で幇助を受けたのは一人もいない。

 団体から患者として認定されるためには、医師の診断書と自殺幇助を希望する動機を送り、審査を受ける必要がある。

 団体からは認定を受けたが、19年3月まで空がないといわれた。だが急遽、11月28日ではどうかという連絡が来たのだ。

 姉たちは言葉を失った。だが彼女は、

「時すでに遅しが一番怖い」

 といった。

 あわただしく小島と姉たちはスイスへ旅立った。小島はホテルでこう語った。

「現世を離れることができることに、どこかホッとしているところがあるんです。昨日は怖かったんですけれど、今日は怖くないんです」

 当日の朝、最後の審査を終え、ベッドに寝かされた。点滴の中に致死薬を入れて、そのストッパーを患者自らが外す。

 医師が、最後に「ストッパーを開ければどうなるかわかりますか」と聞き、小島が「はい、私は死ぬのです」と答える。

「死にたいのならストッパーを開けてください」といわれると、小島はためらいもなくストッパーをこじ開けた。

 小島は2人の姉に、

「本当にありがとう、こんな私の世話をしてくれて。本当にありがとう」

 といってほほ笑んだ。

 遺体は日本へ持ち帰ることが出来ない。遺灰はスイスの澄んだ川に流されたそうである。

 番組では、同じ病気になった母親が人工呼吸器をつける選択をしたことに、娘が、

「母親の姿があるかないかは、私の中ですごくでっかい」「家族としてはありがとうだよね」というシーンもある。

 ポストの中で川崎市で緩和ケアをしている西智弘医師はこういう。

「末期がんの患者であれば、がんによる痛みを緩和し、尊厳死の一環として最期を迎える時には鎮静剤を投与して意識水準を下げ、終末期の苦痛を和らげる『セデーション』を施すこともあります。

 安楽死でなければならないケースは稀で、安易に認めれば、緩和ケアの技術の発展が止まってしまうことを危惧します」

 長々と引用してきたが、現代のように長生きすることが正しい、人生100年時代などという生命至上主義がもてはやされる時代にこそ、安楽死を認めるのか認めないのかを国民的議論にすべきだと思うからだ。

 小島ミナが身をもってわれわれに問いかけた、自分の命の期限は自分で決めるという問題を、一人一人が自分の身に引き比べて考えるべきだろう。答えはすぐには出ないが。

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