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『ダースレイダー自伝 NO拘束』発売記念インタビュー【後編】

「海外アーティストはOKで、電気グルーヴはアウト⁉」ここがヘンだよレコード会社

撮影=尾藤能暢

 今年3月、麻薬取締法違反容疑で逮捕され、懲役1年6月、執行猶予3年の実刑判決が言い渡された電気グルーヴのピエール瀧。逮捕翌日、電気グルーヴの音源の発売元であるレコード会社、ソニー・ミュージックレーベルズは、彼らのCD・映像商品の出荷停止、店頭在庫回収、デジタル配信停止を発表したが、日本のレコード会社特有の自粛措置とマスコミの薬物報道をめぐる違和感について、ラッパーのダースレイダー氏に話を聞いた。

※前編はこちらから

――不祥事を起こしたアーティストの作品を即回収するのは、日本のレコード会社特有の文化でもありますね。

ダースレイダー ソニーミュージックって、Wスタンダードなんです。先日、洋楽部が「クリス・ブラウンの新曲がリリースされます」とツイートしていましたが、彼は有名な薬物中毒者で、「あんなに薬物やってて本当にパフォーマンスできるのか?」という特集記事を組まれたりしている。そんな人がかっこいいシングルを作ったから、海外では評価されているわけです。ほかにも「バックストリートボーイズのライブにエアロスミスのスティーヴン・タイラーが参加しました」とかツイートしている。でも、スティーヴン・タイラーは以前、アメリカのFOXチャンネルで自分の薬物中毒を告白したドキュメンタリーが話題になった。

 この「海外アーティストの薬物はOKで、日本人はNG」って、会社として矛盾していませんか? 普通ならば社内で、「クリス・ブラウン、スティーヴン・タイラーの作品は扱っているけど、ピエール瀧はどうする?」って選択肢を考えないといけないのに、その議論すらされた形跡がない。社内で思考停止しているから、回収一択になっている。

 レコード会社は、人を売っているわけではなくて、その人が作った作品を販売している。人の気持ちや人生を変えたりする可能性があるものを簡単に回収し、なかったことにしてしまうというのは、レコード会社の使命感を軽く考えすぎだと思う。もちろん、選択肢があっての回収であれば、その会社の作品は今後もそういったスタンダードの下に販売されていくということがわかる。それを踏まえ、我々はそういった会社を支持するのか、という問題ですから。

――テレビのコメンテーターもほぼ回収の是非については論じていませんでしたが、そんな中、松本人志さんは『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、瀧さんと卓球さんの関係性を称賛し、かつ瀧さんの復活も見てみたいとしながらも、「素晴らしいものを作ってもドーピング(薬物)に頼るのは良くないから、僕は(作品を)回収してほしい」といった趣旨の発言をして賛否を呼びました。

ダースレイダー 僕は、番組自体は観ていませんが、松本さんの発言はひとつの選択肢を提示したと思います。テレビは多くのチャンネルがあって、その中にも多くの番組があるのに、コメンテーターは「ドラッグ絶対ダメ‼」の一辺倒じゃないですか? 「ドラッグ作品の何が悪いの?」って言う人がいたっていいと思う。もちろん、僕は薬物を肯定しているわけではないし、薬物をやったアーティストは、この日本では大変な目に遭う思います。でも、どこにチャンネルを合わせても同じことを言っているというのは、同じモノでないと不安になってしまう、見る側の問題でもある。本来は「こっちとこっちで言っていること違うぞ」「この人はこう言っているけど、本当にそうなのかな?」って考える入り口になるのに、そうしないから「マスコミは全部ウソをついている」みたいな陰謀論が出てきてしまう。

 でも、薬物事案は治療が必要なので、原則として薬物報道に関しては「薬物報道ガイドライン」(註:芸能人やスポーツ選手などの薬物依存に対して過激な取材・報道の自粛を求めるもの)にのっとって、社会復帰を念頭に置いた報道を心がけてほしいと思います。

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