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『家、ついて行ってイイですか?』がんで最愛の妻を亡くした夫と、がん治療で全財産を失ったフレンチシェフ

甲状腺がんの治療で、貯金500万円使い果たす

 一方、千駄ヶ谷駅で声をかけたフレンチ料理人の男性・すみさん(46)は、交通費を節約するため、勤務先の広尾から初台の自宅まで8kmの距離を歩いて帰る途中だという。スタッフの質問にたどたどしく答えるすみさんだが、それには理由があった。

 約2年前、甲状腺のがん見つかり、その治療費で500万円あった貯金もゼロになってしまったという。手術の後遺症でしゃべりづらくなり、その影響か人間関係もギクシャク。前の職場を退社したが、そんなすみさんには夢があるという。

「人参のサラダとか、お総菜店やデパ地下みたいな形で売ってみたいなって」

「こたつにみかんがあるように、文化として日本に根付くようなものが作りたい」

「特別な日に食べるもの」「大人になったらやっと食べられるもの」と敷居が高いと思っていたフランス料理だが、新宿のカジュアルなフレンチレストランに感銘を受け、シェフを目指したすみさんらしい決意だった。

 するとすみさん、「ちょっと待っていてください」とスタッフを部屋に残し、ひとり夜の街へ出かけてしまった。10分後、帰ってきたすみさんの手にはレジ袋が。中身は人参とレモン。なんとスタッフのために、人参のサラダをはじめ、前菜3種盛りを即席で作ってもてなしてくれたのだ。エシャロットや、キャラウェイシードといった調味料が冷蔵庫から出てくるのは、さすがフレンチシェフといったところ。スタッフがペロリと平らげると、この日一番の笑顔を見せたすみさんだった。

 自分に余裕がなくなるとなかなか他人に優しくできないものだが、すみさんの振る舞いは、彼にとってシェフが天職であることを感じさせるものだった。

 堀江さんの妻は宣告から14年、「小学校卒業まで……」「中学卒業まで…」と、子どもの成長を励みに闘病を続けた。すみさんも治療の末、職場復帰を果たしている。働きながらがんと闘う人も少なくない昨今、自分や大切な家族が大病を患ったとき、自分はどう向き合い、生きていくのか――。そんなことを考えさせられる放送回だった。

最終更新:2019/10/18 09:34
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