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サイゾー恒例ハイロー放談(2)

『クローズZERO』をどう更新するか? ヤンキーマンガ論から観る映画『HiGH&LOW THE WORST』(後編)

“イケメン”であることに屈託がない世代の俳優たちが魅せた!

藤谷 サバカンはすごい。高橋ヒロシのキャラクターとして100点満点。「君、原作にいたでしょ?」っていう見た目じゃないですか? 前髪パッツンとか、眉毛の形とか。

加藤 鼻とおでこがつながってる感じもそうですね。

藤谷 完全に“原作通り”のキャラクターですよ。原作にいませんけど。

加藤 僕は泰志ですね。出番は少ないけど、その全部でキャラが立ってる。「ケンカ買いに来たぜ~」の言い方とか、轟のことを楓士雄が「ドロッキー」って言ったときに後ろでプッて笑ってるところとか。ああいうのがイイですよね。楓士雄のキャラ立てにも貢献していたと思います。あんなふうに笑わされちゃったら、なかなか殴り合いはできないじゃないですか。そういう紙一重のニュアンスを表現ができているのがすごいです。

藤谷 反射神経がいいんでしょうね。佐藤流司さんは2.5次元で活躍していて『ミュージカル刀剣乱舞』では加州清光だったり、中性的でかわいい役も多いんですけど、その彼に戦闘狂みたいな役をやらせるという采配もいいですよね。私が好きなのはまどかちゃんです。不良マンガの文脈において、なかなかいないキャラクターだな、って。ブスブス言われていじられるキャラでも、おかんキャラでもない。まどかちゃんは6人の中で紅一点でも対等なんですよね。それは不良マンガ・映画では相当珍しいし、すごく新しいと感じます。高橋先生もインスタで「冨田さんはすごい」と書いていたり、LINEスタンプでもまどかちゃんはイラストも2個ありますし、先生も気に入ってる気がします。

加藤 演じている富田さんの力によるところも、かなりありますよね。僕もやっぱり、変な容姿いじりは嫌なんですよ。『THE WORST』にも若干それはあるけど、陰険な感じに見せないようにリアクションしてみせているのが効いている。

藤谷 幼馴染キャスト全員で、そういうふうにはならないようにしてますよね。

加藤 そこはかなり意識してつくっている感じがしましたね。

藤谷 そして圧倒的な小田島有剣ブームですよ。『クローズZERO』の漆原凌(綾野剛)もそうでしたけど、鳳仙を実写化するととんでもない化け物が一体生まれるんだな、と。「殺しの軍団」というだけあって、オタクの女を殺す化け物が……。

加藤 原作でも鳳仙はどちらかというと美形のイメージですよね。キングジョーもいますが、美藤兄弟とか、いわゆるボウズでゴツいという感じではなくて、線が細くてかっこよくて強い。

藤谷 ボウズの中に君臨する美男子というギャップ萌えを高橋先生も意識してますよね。

加藤 そしてグレーの学ランという非日常感。

編集部 演じている塩野瑛久さんの絶妙なナルシスト感がうまくハマっていましたね。あの振る舞いが自分に似合うと思ってやりきれることがすごい。

加藤 僕じゃ狂っても真似できないです。

藤谷 『クローズZERO』に出ていた人たちって、そのあと妙に男らしくなっていったじゃないですか。小栗旬もそうだし、桐谷健太も山田孝之も、男らしさを出す役が増えた。世代的に、今の30代半ば以上の人たちって「イケメン」と呼ばれることに抵抗があるけど、その下の世代はそこに屈託がないんですよね。イケメンという概念が当たり前にある世代だから。

加藤 自分のことを客観的に見ることができるのは俳優の大事な能力ですから、「この役は俺に似合う」「これくらいやっても俺はかっこいい」とわかっているのは優れた俳優である証ですよね。僕がなんの立場で言ってるのかわかりませんが……。

編集部 それがわかっている、セルフプロデュース力がある人たちが集まるのがハイローですしね。

藤谷 爪痕を残すことに長けてる人が勝つ場所です。

加藤 出てる人たちみんなが、なんらかの形で爪痕を残そうという意識が感じられましたね。定時の3人+轟という先人たちが同じようにがんばった結果、この映画があるわけですし。

編集部 そう考えると、良い卒業式でしたね。寂しい気持ちはありますが、こうして入れ替わっていくのもハイローらしいのかな、と。

藤谷 「変わっていくことと仲間を失うことは全然違う」って龍也さんも言ってましたから。

編集部 世代交代させながら、同時にひとつの作品としてまとめ上げていて、ザムの頃と比べて洗練を感じます。

藤谷 過去の作品を観てなくても『THE WORST』から観られるので、人に勧めやすいですね。

加藤 ドラマ版を観てなくてもいけるというか、むしろドラマを観ていたほうが混乱する部分があるかもしれません。

藤谷 司くん問題ですね。最初に映画版を観たとき、「司くんをないがしろにしないで!」と、司のモンペになるか思いました。でもその後5回くらい映画を観て、「これはもう仕方ないな」と。ドラマ版で司と楓士雄の2人の物語は完結してるので、映画では楓士雄のスタンドになるのは致し方ない。団地戦でジャム男を助けてるから偉い。

加藤 でも、ドラマの最終話のタイマンはすごくよかったです。司くんの格が上がりましたもん。

編集部 あれで眠れる獅子が目覚めたのに、映画ではまた眠ってしまった感じが……。

加藤 2人は今後に期待ですよね。単純に、2人とも長編映画への出演がまだ2本目ですし、ハイローじゃなくてもいいのでこれからの活躍を応援したいです。続編があるとしたら、鳳仙側にLDHの人がいるのもアリだと思うんですよ。ハイローを通して毎回LDHさんは学んでいっている感じがあるので、次に期待できるのは大きいです。

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