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訪問ライター・清水2000の「韓国珍スポ探訪記」VOL.37

『パラサイト』の”あの石”が8,000個! 孤高の自宅展示館「千の顔 水石博物館」

石ころも見方によってはお宝に?

「水石(すいせき)」をご存じだろうか。アカデミー賞4冠に輝いた韓国映画『パラサイト』に登場する”あの石”といえば、ピンとくる人もいるだろう。ゴージャスな台座とともに社長室にデーンと置かれていそうな、でも価値があるのかないのかさっぱりわからない自然石(およびその石を鑑賞する趣味)のことだ。韓国では「水石」あるいは「寿石」という漢字が当てられ、どちらも「スソク」と発音するが、この原稿では水石と表記したい。

 こちら韓国では、日常生活で頻繁に水石に出会う。不動産屋から理髪店、タバン(喫茶店)まで、中高年が運営する個人店には高確率で飾られており、また骨董屋やガラクラ市に行けばごろごろしている(ちなみに『パラサイト』ポン・ジュノ監督のお父さんも、水石を集めていたことがあるそうだ)。さかのぼれば原価はゼロであろう石ころの、何が彼らをかきたてるのかは謎だが、韓国を理解するうえで必要不可欠なアイテムであることは間違いない。

 韓国には水石の博物館もいくつかあるが、中でもとんがったセレクトを見せる博物館がソウル郊外の楊平(ヤンピョン)郡にあるというので出かけてみた。ソウルから電車で1時間30分かけて、最寄りの我新(アシン)駅へ。畑と駐車場ばかりが広がる殺伐とした駅前でコールタクシーを呼び、めざす「千の顔 水石博物館」へと向かった。10分ほどで降ろされた場所は、博物館を示す手書きの看板が掲げられた砂利道。私有地のような細い坂道をとぼとぼ進んでいく。両脇の枯れ木には郵便箱がいくつか釣り下がり、妖怪ポストを思わせる。

 坂を上がりきると、2階建ての洋風住宅が現れた。外壁にはレンガではなく自然石が敷き詰められており、邸宅の周りには、美術品とも建材ともつかない無数の石がごろごろしていた。ここが目指す博物館であることは間違いない。

エントランス、というより玄関

 エントランスの方に回ると、そこは明らかに一般住宅の玄関だった。ベルを押すが反応は何もなく、恐る恐るドアに手をかけると鍵はかかっていない。普通の博物館ならそのまま入るところだが、そこから見えるキッチンの生活感に思わず躊躇してしまう。

 出たり入ったりベルを押したり「すみません」と声をかけたりを繰り返すと、奥から白髪の紳士がのそりと現れた。この博物館の館長であるチャン・ソンニョン牧師その人だ。

 人の好さそうな館長に案内されて、キッチンの隣にある展示室へ。そこには台座に乗った水石が所狭しと並んでおり、思わず低い声が出る。

石だ!

 通るのもやっとの狭さの棚と棚との間を注意しながら行き来し、膨大な数の石をひとつひとつ鑑賞。それぞれの石には、目と口を連想させる3つの点がついていたり、穴があいていたりして、言われれば確かに顔のようだ。水石といえば、盆栽のように自然の景色に見立て鑑賞することが多いが、ここでは「千の顔」の名が示すとおり、顔のような水石が集まっており、なんと8,000個もの水石を所蔵している。

 しかし顔、顔、顔を見ているうちに、それが顔なのか穴なのか石なのか判断できなくなっている私がいた。気を引き締めてよく見ると、明らかに顔ではないだろうという石ころもあり、観光地で売っているチープな置物など、既に石ですらない物体もあった。その光景は、「水石=お高い骨董品」というイメージをくつがえす、ユルさと親しみやすさにあふれていた。

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