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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.577

無垢な少女が弱毒ワクチン化する変貌のドラマ! 世界を敵に回しても歌い続ける『ポップスター』

ナタリー・ポートマン主演作『ポップスター』。バッシングされることを恐れない、我が道を突き進む主人公を演じている。

 炎上タレントと呼ばれる人たちがいる。一般モラルとは異なる言動がネット上で賛否を呼び、大いにバズってみせる。バズってなんぼ。炎上すればするだけ、炎上タレントとしてのステータスが上がる。映画『ポップスター』(原題『Vox Lux』)も、そんな炎上騒ぎをたびたび起こしてしまうヒロインの物語だ。どんなに盛大に炎上しても、世界中からバッシングされても、前へ前へと進み続ける。なぜ彼女は世界を敵に回しても、ステージに上がり、そして歌い続けるのか。その謎を本作は探っていくことになる。

 ひとりのポップスターは、衝撃的な悲劇の中から誕生した。セレステ(ラフィー・キャシディ)は、ごく平凡な米国の14歳の女の子だった。ある朝、クラスメイトが銃を持って、校内で乱射事件を起こす。セレステは犯人に呼び掛けて凶行を止めようとしたが、逆に銃弾を浴びてしまう。多くの同級生たちを道連れにして、犯人は自決。病院に搬送されたセレステは生死の境をさまよいながらも、奇跡的に一命を取り止めた。

 銃撃で負った傷を隠すために首に黒いチョーカーを巻いて、リハビリに努めるセレステ。犠牲者たちに捧げる曲を、姉のエレノア(ステイシー・マーティン)と共に作ったところ、この曲は全米の注目を集め、大ヒットを記録。やり手のマネージャー(ジュード・ロウ)のプロモーションもうまくハマり、セレステはスターへの道を歩むことになる。

 イノセントな魅力を放つラフィー・キャシディ演じる主人公・セレステが、ショービジネスの世界で生きていくことを決意し、物語は第二部へと入る。大人になったセレステを演じるのは、ナタリー・ポートマンだ。ナタリー自身も13歳のときに『レオン』(94)に出演し、大ブレイク。以後、ショービジネスの世界でサバイブしてきた。主演作『ブラックスワン』(10)では、聖と邪の両面を演じてこそ一流の女優であることを示してみせた。

 だが、スターが光を浴びれば浴びるほど、その影も濃くなっていく。ナタリー・ポートマンと『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(99)で共演したアナキン・スカイウォーカー役のジェイク・ロイドは、話題作に出演したことによって人生につまずいてしまった。学校外ではカメラに追われ、学校内ではイジメに遭い、つらい思春期を過ごすことになった。大人の都合や不特定多数のファンの声に振り回されながら思春期を送ることは、人格形成に多大な影響を及ぼしてしまう。脚光を浴びることと引き換えに、失ってしまうものは少なくない。

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