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志村けん、裏方スタッフが証言する“芸人魂”「コントのダメ出しで作家が再起不能に」

 新型コロナウイルスに感染し、肺炎により3月29日に亡くなった志村けんさんの追悼ムードが日増しに高まっている。

 フジテレビが4月1日に放送した「志村けんさん追悼特別番組 46年間笑いをありがとう」は関東地区で21.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の視聴率を叩き出し、民放各局に加えNHKも追悼番組や出演番組の再放送。そのたびに反響を呼んでいる。

 志村さんの多彩な人間関係やミュージシャンとしての音楽への造詣の深さを改めて知る一方で、お笑いへのストイックな姿勢にも再び注目が集まっている。そこで、裏方、つまりスタッフサイドから見た”喜劇王”の姿は一体どんなものだったか。その証言を伝えたい。

「NHKのコント特番にてある大物俳優との共演が決定した際のことです。コントの脚本作家にはNHKのあのコント番組の面々を揃え、渾身の脚本を出したのですが志村さんは『こんな子どもウケはやれない』と激怒して説教を始めたんです。提出された脚本はコント界隈では人気の作家が書いたものだったのですが、その作家はトラウマになり次の脚本が作れなくなるほどでしたからね」(放送作家)

 このコント特番には志村さん自身も脚本家として参加するほどの気合の入れ様。その理由は“時間帯”にあったそうだ。

「放送時間帯が22時以降と深夜、しかもNHKですからね。志村さんとしては『大人がしっかり楽しめるものを作りたい』という気持ちがあったそうです。それが分かった作家たちも『大御所と呼ばれながらも、きちんと場面に合わせて笑いを変えられるんだね』と感心していたそうですよ。ちなみに激怒されたコントの脚本は市場にあるターレみたいなもので志村さんと大物俳優さんがセグウェイごっこをする内容だったらしく、そりゃ怒られても仕方ないなと(苦笑)」(前出の放送作家)

 出演していた『天才! 志村どうぶつ園』(日本テレビ系)などでは人情に厚い好々爺としたキャラクターとして視聴者からは見られていたが、番組への演出、特にコントに関してはこだわりを見せていたそうだ。

「若いころに『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ系)のADとして入った時のことでした。志村さんは、カメラ前の立ち位置やセットの状況を決めるドライと呼ばれるリハーサルから必ず参加して、通常のリハーサルにも参加。小道具も必ず自分で確認していました。ドラマやコントなどで演者がドライから参加することはほとんどありませんし、志村さんほどの大御所ならなおさらですよ。笑いへのこだわりは年齢を重ねても持っていらしたんだなと感じました」(番組制作会社ディレクター)

 志村さんが所属していたドリフターズのコントといえば、スタジオ内に作られた部屋の建て込みが倒れてオチになるなど、大掛かりで危険を伴うものも多かった。そうした経験からコントを繰り広げる中での立ち位置にも人一倍のこだわりを持っていたにも違いない。

 さらに、あの伝説的番組に出演したミュージシャンはその内幕を話してくれた。

「 40年近く前に『8時だョ! 全員集合』(TBS系)に、自分が参加していたバンドが後半のコントコーナーに呼ばれたんです。舞台裏は大道具やスタッフ、それにアイドルやバンドマンが右往左往して大混雑。おまけに終始、演者達からの怒号が飛びかっていて『え?あの楽しそうなお笑い番組の裏はこんなことになってるの?』とショックでしたね(笑)」

 しかし、志村さんの仕事への姿勢に感銘を受けた瞬間もあったそうだ。

「コントのネタ仕込みに志村さんたちが、わざわざ我々のライブハウスまでやってきて、パーカッションを1つ1ついじりながらバンマスと打ち合わせをしていきました。テレビで見るふさけた感じはなく穏やかに紳士的に会話する志村けんさんの姿が意外で印象に残っています」

 2006年からは「理想のお笑い」を求め、多彩なキャストを揃えて『志村魂』なる舞台を14年間に渡り制作してきた志村さん。映画やドラマにはほとんど出演してこなかったが、今年はNHKの朝ドラ「エール」や、山田洋次監督がメガホンをとる『キネマの神様』に参加を予定するなど70歳を超えても新たに挑む姿も見られた。

 志村さんは、それぞれの証言からも分かる様に「お笑い」への真摯な眼差しと挑戦する心をを持ち続けた生粋のプロコメディアンだったのだ。

黒崎さとし(編集者・ライター)

1983年、茨城県生まれ。ライター・編集者。普段は某エンタメ企業に勤務してます。

Twitter:@kurosakisatoshi

くろさきさとし

最終更新:2020/04/05 21:50
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