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『精神0』公開記念インタビュー

『精神0』想田和弘監督インタビュー、妻でプロデューサーの柏木規与子氏も登場「想田のこと恨んでました」仰天発言の真意とは?

文=里中高志(さとなか・たかし)

想田和弘監督

『精神』『選挙』など、一切のナレーションやテロップを排したドキュメンタリーである「観察映画」で、世界的な評価を受ける想田和弘監督。その最新作であり、観察映画第9弾の『精神0』がこのたび公開となる。

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けてオンライン配信も行なわれることになった同作は、精神病患者の顔をモザイクなしで映して衝撃を与えた、『精神』と同じく、岡山県の精神科クリニック「こらーる岡山」(その後「大和診療所」に改称)山本昌知医師と、そこに集う患者たちを描いている。

 想田監督は、普段生活しているニューヨークから帰国したばかりということで、念のためスカイプによる取材になったが、インタビューでは途中から妻でありプロデューサーの柏木規与子さんも登場。丁々発止のやり取りが繰り広げられた。(インタビューは3月27日に行なわれた)

◇ ◇ ◇

ーー想田監督がいたニューヨークの状況はどのようなものでしたか?

想田 ロックダウンというのでしょうか。お店が全部営業停止になって、一定の業種以外通勤も外出も原則禁止ということを経験したのはもちろん初めて。散歩とか食料品の買い出しは禁止されていないので、街には人はいるんですけど、皆相当にストレスがたまっていますね。そんななかで流行っているのは、お互いをオンラインでつないで一緒に酒を飲んで話すZOOMパーティーです。

ーー想田監督は2001年の9・11テロのときもニューヨークにいたそうですね。

想田 ある意味であのときよりも深刻です。9・11のときは、ニューヨークが大変な状況だと、世界各国が支援してくれましたが、いまは世界中が大変な状況ですからね。連携しようにもお互いが行き来できないという。家にいなければいけないから経済もストップするし、すでに凄まじい数の人が失業している。営業できなくなったらすぐに人を切れるように、雇用体系を何十年もかけて変化させてきた、そのツケをいま払わされているような気がしますね。

ーーそれと比べると日本の状況はどうですか?

想田 日本のほうがまだ落ち着いていますね。いつも日本に帰って来ると、日本人は疲れてて元気ないなって思うんだけど、今回は日本の社会がまだ活発にしている印象を受けました。(その後緊急事態宣言が発令)

期せずして純愛映画になった

『精神0』より

ーー映画の話に入りますと、『精神0』は、『精神』で撮った山本先生を再び被写体にしているのですが、前作は先生本人よりもそこに集う患者さんたちをメインにすえた映画だったのに対し、本作は、特に映画の後半からは山本先生と、その妻の芳子さんを中心に映しています。

想田 再び山本先生を撮影しようと思ったきっかけは、82歳の山本先生が精神科医を引退すると聞いたことなのですが、それ以前から山本先生をまた撮影したいとはずっと思っていました。実は『精神』のときは、僕が興味があったのは患者さんで、山本先生にはそれほど関心を向けてなかったんです。でも映画を作る過程で、患者さんをモザイクもなしに撮らせてくれたことや、映画を公開するにあたって患者さんが不安になっても、映画をサポートしながら患者さんのケアもしてくれたことで、この方はいったい何者なんだろうと思うようになっていました。

ーー映画の冒頭で山本先生がある患者さんに、「こういう時代に生きているのはすごいことじゃ。みんな優しくないんじゃもん」と言うシーンがあります。映画に出て来る精神病の患者さんのような弱い立場の人たちが生きられない社会にどんどんなっているのかもしれませんね。

想田 僕は人間というのは、基本的には他人とつながって、愛し合い、協力しあうことを求める生き物であり、他者がいないと生きていけない、社会的な動物だと思っています。だけど今の世の中では皆が余裕がなくて、不安で追いつめられて、バラバラに分断されているんですよね。それは日本でもアメリカでも感じるし、限定された地域でのことではないのでは。

ーー途中まではいろいろな患者さんが登場するのですが、想田監督が山本先生の自宅に招かれる場面になると、山本先生がお茶やお寿司を用意しながら、スムーズに準備ができないようすなどを長々と映しています。

想田 山本先生が僕をもてなそうといろいろしてくださる様子を見ていると、先生と妻の芳子さんの関係性だったり、いろいろな発見があるでしょう。たとえば先生は家事は全然されてこなかったんだな、とか(笑)。

ーー監督はこの映画について、「期せずして純愛についての映画になった」と書いていますが、最初は患者さんのことを撮ろうとしていたのが、途中からテーマが変わったのでしょうか?

想田 僕は映画を撮る時に方針というものは基本として立てないので、方針を途中から変えたということもないんです。患者さんと先生の場面も、山本ご夫妻の関係も、僕にはすごく胸に迫るものがあった。僕が期せずして純愛の映画になったと言っているのは、必ずしも山本先生と芳子さんのことだけじゃなくて、もっと普遍的な愛という意味のつもりで僕は言っていて、いずれにも通底するのは、他者を愛するということ、慈しむということです。それでも誰しも、愛する者との別れというのは、絶対に逃れられない宿命として持っている。その宿命と私たちはどうやって向き合っていくのかということを、僕は子どもの頃からずっと考えていて、だから東大でも宗教学を専攻したんだと思うんです。今回の映画も、結果的にですけど、まさにそういうことについての映画になったのではないかと思っています。

ーー山本さん夫妻が友達の家に行く場面で、夫婦にも大変な苦労の歴史があったことが垣間見えるシーンがあります。やはり山本先生が患者さん第一の生活をするなかで、その影で妻の芳子さんは苦労してきたということでしょうか?

想田 まさにそうだと思います。山本先生は素晴らしい仕事をしてきた方ですけど、それはひとりでは絶対にできなかったと思うんです。これは男性が優位の日本の社会構造の反映だと思うんですけど、芳子さんも先生と同じくらい患者さんたちを支えてこられてきたのだということに、僕自身も前作の『精神』のときには気付けなかった。僕も含めてそこに光をあててこなかったということに、夫婦の昔話を聞いて僕もようやく気付いて反省したんです。

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