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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.581

小さなエゴと大きな欺瞞が融合し、惨劇は起きた原発事故の真相を究明した『チェルノブイリ』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

原発事故の調査委員を務めたヴァレリー・レガソフ博士(ジャレッド・ハリス)。命と引き換えに、事故の真相を告発する。

 2019年に有料放送「スターチャンネル」でオンエアされた海外ドラマ『チェルノブイリ CHERNOBYL』が、3月にDVD化された。1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の内情を全5話、DVD3巻(視聴時間321分)で描いた大作ドラマだ。歴史的大惨事はなぜ起きたのか? その真相をきっちりと掘り下げ、社会派ドラマとしても、実録パニック映画としても見応えがある。

 1986年4月26日深夜、プリピャチ市で暮らす人たちは鉄橋の上から、今まで見たことのない夜景を眺めていた。すぐ近くにあるチェルノブイリ原子力発電所で火災事故が起き、火災現場からは眩しい光が放たれていた。恋人たちは美しい光景に見惚れ、こどもたちは夜空から舞い降りてくる白い粉に歓喜の声を挙げた。そのときはまだ誰も、放射能の恐ろしさを知らなかった。

 爆発が起きた原発内の作業員たちでさえ、事態の深刻さを理解できていなかった。事故が起きた4号炉の周辺には黒鉛が散らばっているが、現場責任者はその事実を認めようとはしない。黒鉛は炉心の減速材として使われているものであり、黒鉛が飛び散っていることは炉心がむきだし状態になっていることを意味する。厳重に覆われている炉心がむきだしになるなんて、絶対にありえないと。放射能が漏れていることは知らされず、プリピャチ市から駆け付けた消防士たちが消火活動を始める。だが、消防士も4号炉の様子を確認に向かった作業員も、強烈な放射能によって手や顔が赤く焼きただれてしまう。

 朝方近くになって、プリピャチ市の行政委員会が招集される。彼らもまた原発事故がどんな事態を引き起こすのか知るよしもなかった。パニックが起きるのを防ぐため、市民に対し原発事故の実態を公表することは見送られる。プリピャチ市民に避難勧告が出されたのは、事故発生から36時間が経過してからだった。そしてプリピャチ市民は、二度と自宅に戻ることはできなかった。

 ソビエト連邦の最高責任者であるゴルバチョフ書記長(デヴィッド・デンシック)は、これ以上ないほど不機嫌だった。国家の威信を掛けて完成させたチェルノブイリ原発で未曾有の事故が起き、国際社会における自分の立場が揺らぎかねない。関係者たちからは「大した事故ではない」「火災はもうすぐ鎮火できる」と事故を過小表現した報告ばかりが入ってくる。ソ連内で起きた醜態を明かすことはできないと、世界に向けて発表することは控えられる。小さな町・プリピャチ市の行政委員会とまったく同じことが、ソ連の最高機関であるクレムリンでも繰り返される。そこへ異議を唱えたのが、原子力研究所に勤めるヴァレリー・レガソフ博士(ジャレッド・ハリス)だった。

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