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北朝鮮が国家的に主導する例も… オリンピック開催で東京も確実にサイバーテロの標的に!?

イメージ画像/出典:photoB

 公安調査庁は6月29日、「サイバー攻撃の現状2020」を発表した。同庁は政府の「サイバーセキュリティ戦略」の中でも、「サイバー関連調査の推進に向け、人的情報収集・分析体制の強化及び関係機関への適時適切な情報提供等、サイバーインテリジェンス対策に資する取組」を担っている。

 同庁では、現状のサイバー攻撃について「業務の妨害、機密情報の窃取、金銭の獲得等を狙ったサイバー攻撃が国内外で常態化している」との認識を持っている。その上で、サイバー攻撃の主体を国家主体と非国家主体に分類し、米国がサイバー攻撃に国家が関与しているものとして指摘・非難している以下の例を取り上げた。

<2018年9月>米国司法省が北朝鮮による複数のサイバー攻撃に関与したとして北朝鮮籍の人物を訴追

<2018年10月>米国、オランダ等6カ国がロシア軍参謀本部情報総局(GRU)による国際機関等へのサイバー攻撃について非難する声明などを一斉に発表

<2018年12月>米国司法省が中国国家安全部と関連を有し、セキュリティ業界で「APT10」と呼ばれるサイバー攻撃グループの中国人ハッカー2人を起訴したと発表

<2019年2月>米国司法省がイランによるサイバー攻撃に関与したとして、米国空軍の元情報将校及びイランの革命防衛隊の関係者4人の起訴を発表

<2019年9月>米国財務省が「Lazarus」等として知られる、北朝鮮が国家的に主導する3グループを制裁対象に指定

 特に、東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えている日本にとって、オリンピックがサイバー攻撃の脅威にさらされることを回避しなければならない。過去のオリンピックに対するサイバー攻撃として以下の例を取り上げている。

<ロンドンオリンピック(2012年7~8月、英国)>

・公式サイトに対して2億件以上のサイバー攻撃が発生

・電力供給システムを狙ったサイバー攻撃が発生

<ソチ冬季オリンピック(2014年2月、ロシア)>

・組織委員会に対して約10万回のサイバー攻撃が発生

<リオデジャネイロオリンピック(2016年8月、ブラジル)>

・公式サイトに対して約2000万件のサイバー攻撃が発生

・WADA(世界アンチドーピング機構)のデータベースから選手の医療情報が窃取

<平昌冬季オリンピック(2018年2月、韓国)>

・開会式でサイバー攻撃に起因するネットワークの不具合が発生

・期間中約550万件のサイバー攻撃が発生

 ロンドン大会では大きな支障はなかったものの、ソチ大会ではウェブサイトが一時利用できなくなり、リオデジャネイロ大会では選手の医療情報が盗まれている。さらに、平昌大会では開会式当日、サイバー攻撃に起因するシステムの不具合によってチケットが印刷できなくなるなど、大会の運営に問題が発生した。

 こうしたサイバー攻撃の目的には、①情報窃取・スパイ活動②情報システムの破壊・機能妨害③不正な金銭獲得④心理戦・影響力工作―があるとし、①の情報窃取・スパイ活動では「政府機関や民間企業の情報システム、個人のPCやスマートフォン等に侵入し、重要な内部情報を窃取したり、相手の動向を秘密 裏に監視したりすることを目的」するもので、具体例として2015年5月発覚に発覚した日本年金機構における個人情報125万件流出事案を上げている。

 ②の情報システムの破壊・機能妨害では「情報システムの停止、誤作動等を引き起こすことを目的」とするもので、平昌冬季オリンピックの事案を、③の不正な金銭獲得では「銀行預金、暗号資産等の金銭を不正に獲得することを目的」とするもので、2018年1月に発生した暗号資産交換所における約580億円相当の不正送金事案を上げた。

 ④の心理戦・影響力工作では「人々の認知、意思決定、行動等に影響を及ぼすことを目的」とするもので、欧米諸国等では特に、外国政府がハッキングで窃取した情報や偽情報をインターネット上で流布するなどして、世論形成や選挙に干渉することで、民主主義の基盤が脅かされる事態への懸念が強まっているとしている。

 その例として、米国政府の発表した2016年米国大統領選挙で①ロシア軍当局者が民主党及びクリントン候補陣営のメール等をハッキングにより窃取し、ネット上で公開・拡散する活動②ロシア政府に近い企業が偽情報の流布やソーシャルメディア上での工作を行う活動を展開した――ことを上げている。

 公安調査庁は、破壊的団体の調査を行い規制の必要があると認められる場合には、公安審査委員会に対し、その団体の活動制限や解散指定の請求を行うが、加えて、サイバー空間の状況についても、情報の収集と分析を行った上、関係機関への適時適切な情報提供を行う。

 公安調査庁にとっては、新型コロナウイルスの影響により、2021年夏の東京オリンピックが開催できるかは明らかではないが、テロ活動の防止に加え、サイバーテロ・サイバー攻撃も重要な任務となっている。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2020/07/05 12:00
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