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政治学者・中島岳志が分析する2020都知事選【後編】

都知事選・小池当選の裏で“勝った”のは結局自民党、解散総選挙は秋? 立民凋落で維新が野党第一党に!?

イデオロギー闘争は政治ではない!

『保守と立憲』(スタンド・ブックス)

ーーこれまでのように、反アベを掲げるだけでは不十分なんですね。

中島 「アベ政治はNO」と言うだけでは、維新と票が割れてしまい「吉村のほうがいい」となってしまいます。それを回避するためにも、安倍政権に対する対抗軸をはっきりと打ち出さなければならない。

 行き過ぎた自己責任を求める社会から、配分を重視してみんなが暮らしていけるようにする。そして、個人の内面は自由である……といった方向性を共有し、対抗軸として打ち立てれば、有権者に対して「自民を選ぶか、こちらを選ぶか」という選択を迫ることができます。

ーー共闘しながら、政権に対するアンチではなくて、政権とは異なった軸を打ち立てていく、と。しかし、これまで4年にわたって野党共闘が模索されてきましたが、いまだ実現していません。いったいどこに原因があるのでしょうか?

中島 それは、政治がわかっていないからだと思います。

ーー「政治がわかっていない」とは?

中島 そもそも、世の中は、簡単にはわかり合えない他者と一緒に社会を作っていかなければならないものです。この社会には、信じる宗教が異なった人もいるし、アニメ好きな人もいればスポーツ好きな人もいる。そのような多様性によって成り立っています。しかし、これを一枚岩にしようとすると、戦前の「一君万民」やファシズムのような状況が生まれてしまう。

 価値観を一枚岩にしようとするのではなく、わかり合えない人々が社会をやっていくためにルールや制度を調整し、それぞれの人が幸福を追求できる環境を整える。それが政治なんです。しかし、与野党とも、まるで子供のように自分の意見を押し付けるだけ。それは政治ではありません。

ーー全員が「ほどほどに幸せである状態」ではなく、理想を押し付けるだけになっている、と。

中島 かつての自民党には、小渕内閣で官房長官を務めた野中広務をはじめ、リベラルな考えを持った人々も存在していました。彼らは、世の中には弱者も存在しながら複雑に成り立っているということを理解していた。だから、お金を配分をしながらみんなが生きやすい社会をつくろうとしていたんです。

 現在の状況は、政治なきディストピアといえます。国民をひとつの思想にまとめようとする自民党は中国共産党やスターリンが行ってきたことと変わらないし、それぞれのわずかな違いを認められない野党がやっているのはただのイデオロギー闘争。いずれも政治ではありません。

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