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『麒麟がくる』長谷川博己と“鉄砲大河”の因縁! 戦国時代を彩る武器の意外なお値段とその価値

「鉄砲」は高価な割に使い勝手が悪い!

『麒麟がくる』長谷川博己と鉄砲大河の因縁! 戦国時代を彩る武器の意外なお値段とその価値の画像3
鉄砲シーンが多かった『八重の桜』(「大河ドラマ 八重の桜 総集編」NHKエンタープライズ)

 やはり鉄砲と思うでしょうか。しかし鉄砲をお勧めすることはできません。価格が高いのと、大量生産はできていないので手に入れるのに時間がかかりそう。そして練習なしには扱えませんから、使いこなすためのトレーニングをしなくてはいけません。火薬の扱いも要注意です。もし暴発でもされたら、鉄砲はおろか、腕ごと吹っ飛んでしまいますから、実地訓練も命がけだったと思われます。

 先ほどもお話しましたが、戦国時代の実戦で鉄砲を使ったのは上流武士というより、足軽たちだったようです。それも誰かを狙って撃たせるというより、タイミングを合わせて一気に射撃させ、その轟音と煙で相手をひるませるような使われ方をしていたのではないか……といわれています。

 この方法がうまくいけば戦意喪失した相手が退散してくれるので、戦わなくても済むかもしれません。……が、結局は相手が死んでくれなければ、相手の所有物を奪うこともできません。しかも1分に1発しか撃てません。所有物を奪えなければ、命をかけて戦に出た意味がなくなりますし、鉄砲の乱用はやはり厳しいですねぇ。

 ならば弓は?……というと、確かにお値段は控えめかも。しかし戦国時代当時の弓は、現代の(弓道などで使われる)弓よりもさらに原始的な機構の竹弓にすぎません。それこそ明智らのように「戦のプロ」である武士ならともかく、戦いの素人にはお勧めできないわけです。

 というわけで、一番よさそうな武器といえば、槍です。 美濃を脱出した明智たちが頼ったといわれる越前の武将・ 朝倉義景(よしかげ)。ユースケ・ サンタマリアさんがイケズに熱演中ですが、彼の父にあたる孝景(たかかげ)ゆかりの史料『朝倉孝景十七ヵ条』などによると1本だいたい100文くらい。現在の価格で8000円ほどに相当です。『朝倉孝景十七ヵ条』には「高い名刀1本より、安い槍100本のほうが武器としては素晴らしい」ともあります。

 ただし、突進してくる相手の心臓めがけてグサッと刺し込まないといけない武器ですし、攻撃の精度を上げるには相手をなるべく至近距離までひきつけねばなりません。扱うには度胸が必要です。

 ちなみに北条家指定の武器が「鉄砲、弓、槍」で、そこに刀が含まれていないのは、なぜでしょう。それは素人が使いこなすには、刀がもっとも難しい武器だからと思われます。

 安い刀は当時、1万数千円程度(=20文)で手に入りましたが、安ければ安いほど粗悪品で折れ曲がりやすいのですね。とはいえ高級品であったところで、刀はドラマや映画のように、鎧を着ている敵に切りかかっても、致命傷を与えられるような武器ではなく……。

 当時の刀の使い方は、相手の鎧など防具の隙間を突いて傷を与え、相手に戦意喪失させること。それだけです。そのためには相当なトレーニングと、優秀な動体視力が必要ですから、持っていても使いこなせなければ敵に殺されてしまいます。

 みなさんが戦国時代にタイムスリップするようなことがあった時は、鉄砲や刀や弓ではなく、やはり槍を迷わず手に入れておくことをお勧めいたします。鉄砲推しの作品が多い「大河ドラマ」には申し訳ありませんが、次点で役に立つのが鉄砲くらい、でしょうか……。

堀江宏樹(作家/歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。原案監修をつとめるマンガ『La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~』が無料公開中(KADOKAWA)。ほかの著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)など。最新刊は『隠されていた不都合な世界史』(三笠書房)。

Twitter:@horiehiroki

ほりえひろき

最終更新:2023/02/21 12:11
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